防腐剤フリーの秘密②
皆さんこんにちは!いろはねです!
今年のGWは昨年と同じお家時間を過ごすことになってしまいましたね…
私も楽しみにしていたフェスや東京へのお出かけは残念ですが諦めました。
後は、この世の中が普通の生活に戻るよう祈るしかありません。
しかし、お家でできる楽しいこともたくさんありますので、時間を無駄にせず過ごしたいと思います!
皆さんも楽しいお休みをお過ごしください!
さて、前回は化粧品に一般的に使用される防腐剤として、
まずはパラベンについてまとめさせていただきました。
今回はその続きになります。
②フェノキシエタノール
グリコールエーテルの一種で、主にグラム陰性菌(緑膿菌や大腸菌など)に対して強い活性を示す為、パラベン同様よく配合されています。
フェノキシエタノールを単体で配合するというよりかは、これらの菌に効かない防腐剤があるため、それらと組み合わさることで、より高い防腐力を叶えることができます。
フェノキシエタノールも薬事法に基づいた化粧品基準によって、配合上限が定められています。
1.粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの
2.粘膜に使用されることがない化粧品の内洗い流さないもの
3.粘膜に使用されることがある化粧品
上記のようなアイテムに対して、1%(100g中1.0g)と定められています。
③その他
これらはあまり配合されているのを見かけませんが列記しておきます。
・デヒドロ酢酸
水溶性のデヒドロ酢酸ナトリウムが挙げられます。
これはpHが低くなるほど(酸性度が高くなるほど)抗菌力が高くなる防腐剤です。
・安息香酸
水溶性の安息香酸ナトリウムが挙げられます。
食品や飲料の保存料・防腐剤としても使用されています。
こちらも酸性域で抗菌作用を示す特徴があります。
水溶性のソルビン酸カリウムが挙げられます。
食品や飲料の保存料・防腐剤としても使用されています。
こちらもpHが低くなるほど抗菌力が高くなる特徴があります。
食品や飲料の保存料・防腐剤としても使用されています。
さらに、殺菌効果や抗炎症効果、古い角質除去効果を持つため、
ニキビに効果的とされ、様々なニキビケアアイテムに配合されています。
などなど…以上が化粧品に配合されている防腐剤です。
私はパラベンとフェノキシエタノールにしか触れたことがありませんでしたので、
これだけの種類を上手く組み合わせることで化粧品の防腐効果が成り立っているのだなと感心いたしました。
さて、化粧品に使用される一般的な防腐剤について知識を深めたところで、
本題である防腐剤フリーの秘密へと迫りましょう!
〇防腐剤フリーの秘密〇
防腐剤フリーの化粧品は、どのようにして防腐効果を付与しているのでしょうか?
実は…
化粧品の保湿剤としてよく配合されている「多価アルコール」
これらは、微生物の活動を抑制する働きがあると言われ、防腐力を持っているのです!
そんな防腐剤としても活用される多価アルコールは、
・1,3-ブチレングリコール
・ペンチレングリコール
・1,2-ヘキサンジオール
・プロパンジオール
・カプリリルグリコール
・エチルヘキシルグリセリン
などが挙げられます。
〇防腐のメカニズム〇
<グリコール類>
上記で挙げた、ブチレングリコールやペンチレングリコール、
カプリリルグリコールなどのグリコール類は、自分自身を溶解させることで微生物から水分を奪い取る機能を持ちます。
これにより、体内の水分を奪われた微生物は生きる機能を失い、死滅します。
<アルコールの特性>
微生物の細胞膜は、細胞内の水分を守るため、油性であり、タンパク質で構成されているのですが、アルコールはこれを溶かす機能を持っています。
そして、前回パラベンのお話をした際に、炭素数が多いほど油性の性質が高くなるとお話しました。
上記で挙げた多価アルコール達は、炭素数が比較的多い成分になります。
(ペンチレングリコールは炭素数5、ヘキサンジオールは炭素数6…)
つまり、炭素数の多い多価アルコールは油性である微生物の細胞膜をより溶かしやすいのです。
これにより細胞膜を破壊された微生物は死滅し、防腐効果を得ることができるというわけです。
例えば、ペンチレングリコールと1,2-ヘキサンジオールまたはカプリリルグリコールを併用することによって相乗的に防腐効果を得ることができると言われています。
このように、保湿剤として多価アルコールをいくつか組み合わせて配合することによって、防腐効果も付与することができ、それにより防腐剤フリーを謳うことができるのです。
防腐剤フリーの化粧品を見つけたら全成分をぜひ見てみてください!
必ず上記で挙げたような多価アルコールがいくつか配合されているはずです。
ということで、防腐剤フリーの秘密が明かされたところですが、
これについては少し考えさせられるところがあります。
防腐剤と聞くとなんだか肌に悪そう…というイメージがどうしてもありますが、
防腐剤フリーが必ずしも肌にとって安全なのかというと、
実はそうとも言えないのが現実です。
上記で述べたように、多価アルコールはタンパク質でできた微生物の細胞膜を溶かすことによって防腐効果を持ちますが、
私達の皮膚細胞もタンパク質でできていますよね。
つまり、炭素数の大きい多価アルコールであればある程、皮膚刺激性が高いのです。
お肌が敏感な方はこの手の化粧品だと逆にピリピリと刺激を感じて使うことができないかもしれません。
さらに、パラベンやフェノキシエタノールは配合上限が1%でしたよね。
それに、実際配合するとしてもスキンケアであれば0.2~0.3%ほどの微量添加で十分効果を発揮してくれます。
対して、多価アルコールで防腐効果を付与するとなると、5~10%以上は配合する必要があるのです。
保湿効果の高い多価アルコールですが、あまりにも高配合であれば、使用感にも響きますし、先程述べたように皮膚刺激が心配です。
保湿効果と防腐力の両方も兼ね備えた万能な成分ですが、防腐剤フリーには様々なリスクがあったのですね。
肌に合う化粧品は本当に人それぞれなので、防腐剤フリーが決して「悪」というわけではありません。
個人個人の好みや肌状態を見て、慎重に化粧品を選んでいただきたいと思った、
いろはね研究員なのでした。
いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓
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防腐剤フリーの秘密①
皆さんこんにちは!いろはねです!
もうだいぶ暖かくなりましたね!というか暑いくらいでしょうか?
本格的に暖かくなってきて嬉しい限りです。
コロナの影響でまだまだ世間は大変ですが、近所へのお散歩であればじゃんじゃん行っても許されると思いますので、ぽかぽか陽気を大いに満喫したいと思います。
さて、前回は化粧品に必要不可欠な成分だけれど、表には出てこない、
縁の下の力持ち達にスポットライトを当て、まとめさせていただきました。
その時に防腐剤のお話も書かせていただきましたが、
今回はこの部分に関するとある秘密についてまとめていきたいと思います。
防腐剤がもちろん化粧品にとって必要不可欠な存在だというのは前回のお話。
しかし、最近当たり前のように見かける「防腐剤フリー」の化粧品。
化粧品にとって必要不可欠であるはずなのに、防腐剤フリーの化粧品もあるよね…?
疑問に思われた方もいらっしゃると思います。
その秘密に迫ろう!というのが今回のテーマです。
それでは早速参りましょう。
〇一般的な防腐剤〇
まずは化粧品に使用されている一般的な防腐剤について、基本的な知識をまとめていきたいと思います。
①パラベン
これは化粧品に最もよく使用される防腐剤です。
パラヒドロキシ安息香酸エステル(別名:パラオキシ安息香酸エステル)の総称で、
微生物・特にカビや酵母に対して効果的であるため、非常に重宝されています。
歴史も古く、約80年以上前から化粧品に使用されているのだそうです。
パラベンは、薬事法に基づいた化粧品基準によって、配合上限が1%(100gに対して1.0g)と定められています。
この基準に乗っ取り、私達化粧品技術者はパラベンを配合します。
<パラベンの種類>
パラベンにはいくつか種類があり、一般的には
「メチルパラベン」「エチルパラベン」「プロピルパラベン」「ブチルパラベン」
などが使用されています。
実際、一種類でも十分と言われているのですが、
化粧品の剤型によっては複数のパラベンを組み合わせることによって相乗効果が得られ、より高い防腐効果を発揮することができる為、これだけ種類があります。
確かに市販されている化粧品の全成分を観察してみますと、1種類ではなく2種類以上のパラベンが使用されていることが多いように感じます。
しかし、なぜ化粧品の剤型によって複数のパラベンを組み合わせる必要があるのでしょうか?
化粧品を腐らせる菌も、生き物なので人間と同じように水・酸素・栄養素があれば生きることができます。
化粧品にも水が含まれているため、菌が非常に生きやすい環境となっているのです。
そこで重要になってくるのが、パラベンの性質ですね。
パラベンは基本的に水に溶ける性質を持ちます。
先程挙げた一般的なパラベンであれば、
メチルパラベン>エチルパラベン>プロピルパラベン>ブチルパラベン
という順に水に溶けやすいです。
この順は何から来ているのかと言いますと…
有機化合物の基本中の基本、炭化水素は炭素数によって化学名が決められていましたよね。
炭素数1から、メタン<エタン<プロパン<ブタン<・・・
そして、炭素数が多いほど油の性質が強くなり、油溶性が高まります。
例に、植物油からとれる脂肪酸は炭素数が12~18個と非常に多いです。
以上を踏まえ、炭素数の少ないメチルパラベンは水に溶けやすいということになるのですね。
だからこそ、パラベンは化粧品にピッタリの防腐剤なのです。
前置きが長くなってしまいましたが、
ここからやっと「なぜ化粧品の剤型によって複数のパラベンを組み合わせる必要があるのでしょうか?」の答えになります。
例えば防腐剤としてメチルパラベンを使いたい!となった時、
化粧水や美容液など水ベースの剤型は良いのですが、
クリームなど油性成分が多い剤型に関しては、少し工夫をしなければならなりません。
クリームは割合的に水より油の方が多い為、油ベース中に水が所々存在しているというイメージです。
つまり、この油の層をかいくぐり、水の中に入っていけるパラベンが必要になります。
そこで登場するのが、炭素数の多い(油の性質が強い)プロピルパラベンやブチルパラベンなのですね。
化粧品の剤型によってパラベンを複数組み合わせるのにはこのような理由があったのですね!
そういう意味で、改めて市販化粧品の全成分を観察すると面白いなと思います。
パラベンだけで長々とまとめてしまいました。
ということで、本題の防腐剤フリーの秘密については次回にしたいと思います。
今回もお読みくださりありがとうございます!
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縁の下の力持ち?②
皆さんこんにちは!いろはねです!
最近日中の日差しが強くなってきたように感じます。
これからさらに暖かくなり、肌が出るような服装に変わっていきますので、
日焼け止めがたくさん活躍する予感。
学生の頃は大丈夫!と謎の自信で日焼け止めを全く塗らずに外出していたことが恐ろしいと思うほど、今は紫外線対策必須です。
では、本題に入りましょう。
前回の続きになりますね!
化粧品における、縁の下の力持ち達をご紹介!という内容です。
前回の記事↓
どうしても化粧品の第一印象として、
ブランドやパッケージ、容器、使用感、美容効果…この辺りに注目しがちですが、
それ以外になくてはならない非常に重要な成分達がいました。
前回に引き続きそれらをご紹介していきたいと思います。
まずは前回のおさらいから。
〇縁の下の力持ち達とは?〇
①防腐剤
③pH調整剤
④pH緩衝剤
⑤増粘剤(乳化安定剤としても機能)
私はこれらを挙げさせていただきました。
前回は①防腐剤と②酸化防止剤について書かせていただきましたので、今回は③pH調整剤から参りましょう。
③pH調整剤
pH(ペーハーorピーエイチ)とは、水溶液中の水素イオン濃度(H⁺の量)を指します。
0~14までの数値で表し、中間の7が中性とされています。
7より低いと酸性、7より大きいとアルカリ性を示します。
そして、私達人間の肌はpH4.5~6の弱酸性を維持する機能を持っていて、化粧品もこのpH領域に調整するのが好ましいとされています。
そこで登場するのがpH調整剤なのです。
あまりにも化粧品のpHが酸性だったりアルカリ性だったりすると、
肌トラブルの原因となるため、pH調整剤は必要不可欠なのです。
主に化粧品に使用されているpH調整剤は、
酸性に調整する成分・・・クエン酸、リン酸、乳酸など
アルカリ性に調整する成分・・・水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アルギニンなど
が挙げられます。
さらに、pH調整剤の真骨頂といえば、クレンジングジェルやオールインワンジェルなどのジェルアイテム!
このようなアイテムには、一般的に「カルボキシビニルポリマー(通称:カルボマー)」と呼ばれる水溶性高分子が配合されています。
このカルボマーは、アルカリ性に調整するpH調整剤を使用し、中和することによって、プルッとしたジェルに変化する成分です。
つまり、ジェルアイテムにもpH調整剤は必要不可欠なのですね。
そんなアイテムを見つけたら、ぜひ全成分表示を観察してみてください。
必ず水酸化ナトリウム(水酸化Na)、水酸化カリウム(水酸化K)という表記が最後の方にあると思います。
④pH緩衝剤
③に続きまして、pH緩衝剤ですね。
buffer(バッファー)とも呼ばれているのですが、これはpH値を維持するために配合する成分のことです。
なぜこのpH緩衝剤が必要なのかと言いますと、化粧品に配合している純粋な水(精製水)は、空気中の物質(二酸化炭素など)に反応して容易にpHが変動してしまうことがあるのです。
pH調整剤でせっかく肌のpH値に近づけたのに、その数値が下がったり上がったりしてしまうと、それがまた肌トラブルの原因になりかねません。
そのような影響を受けないためにも、化粧品の品質を保つためにも、
ph緩衝剤は必要不可欠ということなのですね。
⑤増粘剤(乳化安定剤としても機能)
これで最後になりますね。
これは、化粧水や美容液のとろみ演出、粘度の補助役、感触改良、ジェル系アイテムによく使用される成分のことを指します。
また、この増粘機能を利用し、乳液の分離を抑制する乳化安定剤として用いられたりもします。
増粘剤だけで、これだけの機能を付与することができるのですね。
かなり心強い縁の下の力持ちです。
つまり、増粘剤がなければ、ジェルも作れませんし、あのトロッとした高級感のあるとろみ演出もできないということなのです。
増粘剤の種類としては、
・合成ポリマー・・・カルボマーなど
・天然ポリマー・・・キサンタンガム、セルロースガム、タマリンドガムなど
が挙げられます。
カルボマーは先程もお伝えしましたが、pH調整剤を用いて増粘する成分ですね。
天然ポリマーは植物由来のものがほとんどです。
ということで、化粧品における縁の下の力持ち達を簡単にご紹介させていただきました。
化粧品の処方を考えるとき、当たり前に配合されている成分だからこそ、
その存在を忘れてはいけませんよね。
今回挙げた縁の下の力持ち達はお料理で言ったら、調味料的な立ち位置でしょうか?
お味噌汁を作るのにお出汁を入れなければ味気ないのと同じように、
必ずなければならない大きな存在に、改めてありがたみを感じました。
私達が心地よく安心して化粧品を使えるのは、これらの成分達が配合されているからだということを私も忘れずに、これからも化粧品開発に携わっていきたいと思います。
今回の話題もまとめていて面白かったなあと思ういろはね研究員なのでした。
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縁の下の力持ち?①
皆さんこんにちは!いろはねです!
新年度が始まりもう一週間が経ちました。早い!
新入生、新社会人の皆さんは、きっと何もかもが新鮮で、めまぐるしい毎日を過ごされていることでしょう。
そういう意味では、春って新しい出会いの季節でもありますよね。
自分の限られた人生で出会えた人って本当に運命を感じます。
なんてったって日本の人口は1億2000万人くらいですからね!
出会いやご縁は大切にしていきたいなと思う今日この頃です。
さて、本題に入りましょう!
皆さんは普段化粧品を購入される時、どんなところに重点を置きますか?
自分の肌に合いそうなもの?機能性の高いもの?高価なもの?
パッケージやデザイン、ブランドに惹かれて?など非常に様々ですよね。
他にも美容成分に惹かれて購入した、なんて経験もあるのではないでしょうか?
「希少な○○エキスを豊富に配合し、高いアンチエイジング効果をもたらします」
など…パンフレットや説明文に記載されていること、よくありますよね。
私も美容部員時代は、使用感と美容成分が全てというイメージでした。
機能性の高さや使用感の良さと共に、希少価値の高い美容成分のお話もセットにし、
お客様にピッタリの化粧品を提案していました。
こうして考えると、化粧品の第一印象って決まっていて、
ブランドイメージやパッケージから始まり、次にテクスチャーや美容効果など…
これらに注目しがちですよね。
もちろん化粧品を形作る上で非常に重要なポイントなのですが。
でも実は、化粧品にとって必要不可欠なのに、あまり表舞台には出てこない…
そんな縁の下の力持ち達がいるのをご存じでしょうか?
今回はこの子達にスポットライトを当てたい…!
ということで、早速まとめていきたいと思います。
〇縁の下の力持ち達とは?〇
一体どのような面々なのでしょうか?ご紹介いたしましょう。
(※現時点での私の経験則から挙げているので、他にもある場合はぜひ教えていただきたいです!)
①防腐剤
③pH調整剤
④pH緩衝剤
⑤増粘剤(乳化安定剤としても機能)
でしょうか。
業界の方ならおなじみのラインナップだとは思いますが、
ユーザーの皆さんはいかがでしょうか?
最近は防腐剤フリー、○○フリーという謳い文句の化粧品をよく見かけますので、
それでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。
では、それぞれの機能について簡単にまとめていきたいと思います。
①防腐剤
これについては、以前こんな記事もアップしておりますので、ぜひ。↓
防腐剤は読んで字のごとく、細菌やカビの発生を防止し、
化粧品の腐敗を防ぐ安定剤ですね。
化粧品の品質を維持するために非常に重要な存在です。
もし、化粧品に防腐剤が入っていなかったら、カビが生えたり、変色してしまったり、
危険な菌が増えてそれが肌に付着し、二次汚染へとつながってしまったり…
様々な問題が生じますので、とにかく菌から化粧品を守らなければなりません。
そして、世の中には非常に多くの菌が存在しますよね。
これだけ多いと防腐剤の種類によっては、この菌には対応できるけれど、
この菌には対応できないといった差が生じてきます。
そのため化粧品の処方開発においては、すべての菌に対応できるよう、複数の防腐剤を組み合わせて配合しています。
このノウハウもかなり重要です。
これは主に油剤が配合されている化粧品には必要不可欠な存在です。
乳液やクリーム、クレンジングオイル、美容オイルなど…
油剤が使われている化粧品も今では多種多様ですよね。
このような化粧品には、植物オイルや界面活性剤、香料など、空気に触れることで酸化しやすい成分が多く配合されています。
まさにこの酸化を防ぐのが酸化防止剤です。
この酸化、酸敗とも言われるそうですが、侮れません。
製品においては、特有の不快なにおいが発生したり、変色の原因となったり、
品質の安定性にかなり影響を及ぼします。
肌においては、この酸化によって生じる過酸化物が刺激物質となるので、
肌を美しくする化粧品が逆に悪影響を与えてしまう代物になってしまうのです。
また、肌の酸化は老化の要因!というのはよく聞く話。
酸化防止剤は化粧品自体の酸化を防ぐだけではなく、肌自体の酸化も防いでくれますので、そういう効果の付与としても使える万能な子なのです。
縁の下の力持ちとして、特にこの2つは化粧品に必ず必要な存在です。
残りの3つも大切なのですが、こちらは次回に持ち越します。
それにしても、化粧品の開発をしていると、今まで見えていなかった部分もクリアになってきて、奥が深いなとつくづく感じます。
今回の話題もそうですよね。
微量しか配合されていないけれど、これらがいないと化粧品の品質を維持することはできない。化粧品を完成させることもできない。
決して表舞台には出ないけれど、だからこそ私達化粧品技術者がこの部分をおろそかにしてはならないのだなと切に思う、いろはね研究員なのでした。
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クレンジングバームの今
皆さんこんにちは!いろはねです!
今、近所の桜が満開です!週末はカメラを片手に近所を徘徊しておりました。
きっととても怪しかったことでしょう…
カメラのフォルダがピンクでいっぱいになると幸せな気持ちになります。
年度が変わり、心も心機一転!
新たな一年間のスタート、張り切っていきましょう!
さて前回は、バームの基礎実験についてまとめさせていただきました。
バームを作る為には、オイルを固形化する必要があり、一般的にはワセリンやミツロウ、シアバターを使います。
しかし、そうではない技術もあると最後の方に書かせていただきました。
今回は、その技術とクレンジングバームを絡めてまとめていきたいと思います。
皆さんはクレンジングバーム、使ったことはありますか?
私は何度かあるのですが、非常に面白い使用感ですよね!
最初はガチっと固まっているのに、手に取って伸ばすとトロッととろけて肌に馴染んでいく…
最初に使ったとき、これは面白い!と感動したのを覚えています。
また、クレンジングオイル並みにメイク落ちもスピーディーで、とても良いんですよね。
でも、後肌はそこまで突っ張らず、しっとり。
特に美容部員時代はメイクが非常に濃かった為、重宝しておりました。
今はデュオさんに始まり、大手コスメブランドさんのクレンジングバームなど、ドラックストアにまで、色々な種類が出ていますよね。
もはやクレンジングバームは一つのカテゴリーとして、化粧品業界にかなり浸透しているなと感じます。
そんな最近よく見かけるクレンジングバームですが、全成分を見ますと、一つの共通点があるのです。
そこにオイルを固形化させているもう一つの技術が隠されていました。
〇今のクレンジングバーム〇
全成分表示の共通点は、ズバリ「ポリエチレン」です。
これがオイルを固形化するために必要不可欠な成分となっています。
皆さんもぜひ、クレンジングバームをお手に取った時は全成分を確認してみてください。
ポリエチレンは、プラスチックの中の一つを指します。
ナフサと呼ばれる原油から作られ、加工しやすい特長を持っている為、日本の全プラスチック生産量のうち約25%を占めているのだそうです。
これが化粧品に…?と驚きますよね。
このポリエチレンはオイルに溶解すると、冷却される過程で架橋構造を形成し、
オイルを固形化します。
自分でイメージ図を作ってみました。拙いイラストですが…
このイラストを踏まえてもう一度整理しますと…
※このイラストはあくまでイメージです。
ポリエチレンが配合されたタイプのクレンジングバームは、
単純に温度の下降によってオイルを固形化させるワセリンやミツロウなどとは異なり、溶解されて一度バラバラになったポリエチレンのポリマー同士が冷却の過程で連結され、架橋構造を形成することによって、オイルを固形化するということだったのですね。
この特殊な構造をしているからこそ、スパチュラで取った時のあのサクサクッとした独特の感触が生まれるのですね。
つまり、一般的なワセリンやミツロウタイプのバームは温度によって溶けて肌に伸びていきますが、ポリエチレンタイプは塗布時の圧力によって架橋構造が崩れて伸びていくというメカニズムなのです。
ちなみにこれ、よーく考えますと、ポリエチレンタイプは温度によって固まっているわけではないので、高温耐性も高いということに気が付いたでしょうか?
ワセリンやミツロウタイプは、バームの温度がこれらの融点に達してしまうとドロッと溶けて柔らかくなってしまう欠点があります。
しかし、ポリエチレンタイプはそうではなく、過酷な温度にも耐えられる設計になっているのですね。
さすがにあまりにもポリエチレンの配合量が少なければ、架橋構造がうまく形成できずにゆるゆるの状態になってしまいますが。
このバーム技術については、歴史も交えて専門的にまとめられている、美里さんのブログが非常に参考になりますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください!
今回話題にしたポリエチレンは、
環境に悪いということも一部界隈では言われていますが、
こうして見ると、バーム界においては革新的な存在となっているのではないでしょうか?
色々な意見や情報が世の中飛び交っていますが、機能性重視なユーザーさんもいれば、
ナチュラル志向なユーザーさんもいます。
それぞれのニーズにどう当てはめて化粧品開発をしていくのかというのも非常に重要ですよね。
ユーザーさんが化粧品に求めるニーズは、今非常に高く、多様化しているように思います。
クレンジングバームはそういう意味でも今のユーザーさんのニーズにグッと刺さる、
画期的なアイテムだったからこそ、一つのカテゴリーとして確立されるほどにまで存在が大きくなったのかなと思いました!
化粧品開発はそういう意味でも奥深いお仕事だなと日々感じている、いろはね研究員なのでした。
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バームの基礎実験
皆さんこんにちは!いろはねです!
最近朝晩はまだ少し肌寒い時もありますが、昼間はぽかぽかとした春の陽気に包まれて、晴れている日は気持ちが良いですね。
春の風物詩の一つと言えば、桜!これから次々と咲き始めるでしょう。
もう咲いているところもあるのでしょうか?
とってもとっても待ち遠しいです。
さて、皆さんは「バーム」と聞くと何が思い浮かびますか?
最近であればもう、ほとんどの方がクレンジングバームを思い浮かべるかもしれません。
ちなみに、バーム系コスメは他にもありますよね。
唇の乾燥を防ぎ、うるおいから守ってくれるリップバーム
髪のパサつきなどを防ぎ、ツヤとまとまりのある髪へと導くヘアバーム
液体が漏れる心配もなく、柔らかな香り立ちを表現してくれる練り香水
最近はマルチバームと呼ばれる、一つで顔&髪&ボディ&唇など様々な箇所の保湿ができてしまう優れものまで、非常に多くのアイテムがありますよね。
バーム系コスメの市場はこれからもっと賑わっていくのでしょうか?
最近は「バーム」という言葉、だいぶ浸透していますもんね。
そして、なんといってもバームの面白いところは、最初はガチッと固まっているのに、
肌へ塗布すると瞬時にトロッととろけてオイルのように軽く伸びていく、あの独特の感触。
そんな最近人気であるバームの基礎実験を少し前に行いましたので、
一体どのような実験を行ったのか、今回はそれについてまとめていきたいと思います!
〇バームとは?〇
毎回おなじみ、まずは基本的な知識から!
バーム、バーム…と口にはしていますが、一体どのようなものなのでしょうか?
バームは、オイルが主成分となり、水分はほとんど含んでいません。
このオイルが固形化され、軟膏のような状態になっている化粧品を「バーム」としているそうです。
主成分がオイルなので、効果としては皮膚の保護&柔軟、バリア機能を高めたりしてくれます。
上記でもお話しましたが、バームは常温では固形ですが、皮膚温によって瞬時にとろけて、瞬時に保湿&ケアできるところが大きな特徴です。
この独特な感触を叶えるのに最も重要となるのが、オイルを固形化する技術なのです。
〇オイルを固形化するには?〇
一般的には、ワセリンやシアバター、ミツロウなどの融点の高い成分を配合し、オイルを固形化しています。
ワセリンは、よく軟膏にも配合されている、石油由来の保湿剤です。
石油由来と言っても、石油から様々な不純物を取り除き、しっかりと精製された保湿剤なので、肌に悪影響を与える心配はありません。
特に、精製度が非常に高い白色ワセリンは薬局などに売っているほど、安全と言われています。
シアバターは、西アフリカから中央アフリカに生息するシアの木の実から採取される植物性油脂です。
ミツロウは、ミツバチが巣を構成する材料として、働きバチの腹部にある分泌腺から分泌させるロウを精製したものを言います。
ワセリンは、融点が36~60℃
シアバターは、融点が36~39℃
ミツロウは、融点が62~65℃
とされているので、どちらも常温では半固形~固形の状態で存在していることになります。
そのため、これらをある程度配合することによって、常温でサラサラな状態のオイルを固形化することができるのですね!
〇バームの基礎実験〇
ということで、本題に入ります。
上記で挙げた、一般的にオイルを固形化させる3種類の成分。
これらを実際どのくらい配合すればオイルが固まるのか、それは実験しなければわかりません。
あまりにも柔らかすぎてはバームとして意味がありませんし、硬すぎても上手くとろけていかず品質としてよろしくありません。
そしてなにより、温度で溶けるタイプのバームは温度耐性が命。
夏場の高温な環境下でも固形を維持できる状態に整えて最終製品にしなければなりません。
これらを見越して私たちは基礎実験を行います。
私が今回の実験に使用したのは「ミツロウ」でした。
実験方法は…
①オイルの中にミツロウを2%添加する。
②オイルを加熱し、ミツロウを溶かす。
③それを室温下に静置し、冷却。様子を見る。
④①~③をオイルがある程度固まる状態になるまで繰り返す。
⑤オイルがある程度固まるようになったら、さらに高温耐性試験も同時に進める。
⑥冷却して固めたものを、40℃の環境下へ数時間静置させる。
⑦取り出して観察する。
この時点で溶けていたり、柔らかくなっているようであれば、高温耐性が不足しているということなので、またミツロウを2%添加していく。
40℃の環境下でも溶けずにしっかりと硬さが維持できるようになれば、そこで試験終了。
この工程を踏むことによって、オイルを固形化させるために必要となるミツロウの配合量を導き出すことができ、これが安定的な処方開発へと繋がります。
今回の基礎実験では、最初サラサラだったオイルが固形化していく過程をしっかり観察することができました。
そして、オイルを固形化させることはそんなに容易ではない。
バームを作るだけでも様々なことを考え、実験を行っていく必要があることを知りました。
実験の裏側では、高温耐性試験の際に、おっ!今回は固まってる!
これなら大丈夫か?とビーカーを傾けるとドロッ…ととたんに固まっていたのが崩れておっとっと…
なんて危ないシーンもありました(笑)
今回は取り上げませんでしたが、最近はオイルを固形化させる技術として、もっと安定的なものが存在します。
ワセリンやシアバター、ミツロウなどを使用したバームは、温度によって溶ける仕組みですが、もう一つの技術はそうではないのです!
一体どんな技術なのでしょうか?
それはまた、他の記事でまとめたいと思っています。
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pHの謎②
皆さんこんにちは!いろはねです!
前回はpHの謎と題しまして、温泉水には酸性やアルカリ性があるけれど、触れても肌が火傷してしまったりしないよね?これはなぜなのだろう?
という話題から、まずはpHについて復習をするため、基本的なことについてまとめさせていただきました。
詳細はこちらをぜひご覧になってください。↓
そしてついに今回は、本題であるpHの謎に迫ります。
前回も最後の方に書かせていただきましたが、温泉水以外にも日常生活でお世話になっている酸性やアルカリ性のアイテムがありましたね。
酸性・・・レモン、お酢など
アルカリ性・・・石けん水、洗剤など
これらのpHも、
レモンは約2.0、お酢は約2.7
石けん水は約9~11、台所用洗剤は約6.0~8.0、衣類用洗剤は約8.0~11.0
というように、数値的に見ればけっこう酸性、アルカリ性ですよね。
普段口にしたり、肌に触れたりしますが、特に影響はありませんよね。
では逆に、肌に触れてしまっては危険だと言われているのは、
酸性・・・塩酸、硫酸など
これらは濃い溶液であれば、
極端に酸性はpH1、アルカリ性はpH12くらいになります。
おや…?
これ、pH1.2の酸性温泉やpH11以上のアルカリ性温泉とそんなに差がないような…
ということはつまり、pHの数値が高い低いだけで肌に影響が出るわけではないということなのでしょうか?
そうなんです!
皆さんは、「強酸」「弱酸」「強アルカリ」「弱アルカリ」という言葉をどこかで耳にされたことはありませんか?
これらが実は、pHの謎を解く大きなキーワードとなっているのです。
一体どういう意味なのでしょうか?
それではここからまた、化学的なお話に入っていきます。
(恥ずかしながら、私はこの辺りもよく混乱してしまうので、この場をお借りして、改めてお勉強です)
〇強酸・弱酸&強アルカリ・弱アルカリの違いとは?〇
これには「電離度」というものが大きく関わっています。
まず、水に溶けるとプラスのイオン(陽イオン)、マイナスのイオン(陰イオン)に分かれ、電気を流す物質のことを「電解質」と呼びます。
そしてこの電解質が、水溶液中で電離する割合のことを「電離度」としています。
※電離・・・電解質がプラスのイオン(陽イオン)とマイナスのイオン(陰イオン)に分かれること
※電離度は、水溶液の濃度や温度によって変わります。
そして、この電離度が濃度によらずほぼ1に近い値になる酸のことを強酸と言います。
例として塩酸(HCL)を挙げましょう。
塩酸の化学反応式は下記のようになります。
塩酸のような強酸は、ほぼ完全に電離しイオンに変化します。
そのため、反応式は→の表記になります。
逆に、水溶液中でごく一部しか電離せず、電離度が1より極めて小さい酸のことを弱酸と言います。
例としてお酢の主成分である酢酸(CH3COOH)を挙げましょう。
酢酸の化学反応式は下記のようになります。
弱酸は、電離度がかなり小さいので、イオンになりにくく、別れたイオンが再びくっつくことがあります。
そのため弱酸の反応式は⇄の表記になります。
ということで、電離度の大きさによって強酸と弱酸に分けられるということだったのですね。
これは強アルカリ・弱アルカリも同様です。
ちなみに、pHは溶液中の水素イオン濃度のことでしたよね。
つまり、上記で示した化学反応が実際に水溶液中で起こり、水素イオン(H⁺)が発生し、その濃度がpH値として出ているということだったのですね。
さらに理解が深まりました!
そして、電離度についてはこんな一覧表を見つけました。
この表を見ますと、上記で説明した電離度の違いが一目でわかります。
やはり、強酸と強アルカリは電離度が1に近く、
弱酸と弱アルカリは電離度がかなり小さい数値となっています。
こうして比較すると、強と弱で10倍、100倍も電離度に差がありますよね。
たとえpH(水素イオン濃度)が同じだったとしても、この電離度が10倍、100倍も異なることで、刺激が出るor出ないが決まってくるということなのですね。
さらに強酸・強アルカリは、水溶液中で完全にイオン化するわけですから、反応性が高いということが言えます。
この反応性の高さが、肌へ影響を与える要因なのではないかと考えられます。
つまり、肌に害のない酸性やアルカリ性のものは、すべて弱酸や弱アルカリの部類に入るということですね!
あれ…?温泉水は?
と思った方!温泉水は少し見方が違います。
温泉水は長い時間をかけて鉱石から溶け出したマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分を豊富に含んでいます。
これらに反応して、pHが極端な数値となるのです。
なので、温泉水もpHがどんなに高くても低くても、肌への刺激は少ないということになりますよね。
〇pHの謎…その答えとは?〇
化学的で難しいことばかりでしたので、最後に結論をまとめたいと思います。
①pHの高い・低いが肌へ刺激を与えるわけではない。
③電離度の違いが、強酸・弱酸、強アルカリ・弱アルカリを分ける。
④強酸・強アルカリは水溶液中で完全にイオン化し、電離度はだいたい1。
⑤弱酸・弱アルカリは水溶液中で完全にイオン化はせず、電離度は極めて低い。(強酸・強アルカリの約1/10~約1/100)
⑤電離度の高い強酸、強アルカリは水溶液中で完全にイオン化するため、反応性が高く、肌へ大きな刺激を与える。
⑥日常生活で害のない酸性やアルカリ性のアイテムは、弱酸や弱アルカリの部類であるため、肌への刺激は少ない。
⑦温泉水のpHは、豊富に含まれるミネラル物質に反応して出ていた為、肌への刺激は少ない。
よって、危険な酸性&アルカリ性物質は含まれているわけではない。
以上です!
pHは化粧品の品質を維持するためにも必要不可欠な項目です。
その根幹に触れ、謎も解決することができ、すっきりしたいろはね研究員なのでした。
参考HP:
強酸と弱酸まとめ・見分け方 | 理系ラボ (rikeilabo.com)
5分でわかる!「強酸」と「 弱酸」の違いを元家庭教師が解説 - Study-Z ドラゴン桜と学ぶWebマガジン (study-z.net)
いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください!↓
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