測りこみって大事!
皆さんこんにちは!いろはねです!
前回はイラストも盛り込んで、乳化技術についてお話させていただきました。
あのイラスト…
作るのとても頑張りましたので、まだお読みになっていない方はぜひ(笑)
私のような素人でも時間をかければなんとか形にすることができたので、パソコンってすごいなと感動した次第です。
そして、プロのイラストレーターの方々をさらに尊敬しました!
さて、今回は私達化粧品技術者のお仕事としてメイン中のメインである、原料の測りこみについてお話していきたいと思います。
化粧品といえば、各商品の全成分表示を見ると非常に多くの成分が配合されていますよね。
水や保湿成分、オイル、界面活性剤、植物エキス、防腐剤…他にも色々と。
私たち化粧品技術者は、これら多くの成分を処方に組み込み、それに従って化粧品原料を測りこみ、試作品を作成していく、ということが日常茶飯事です。
その試作品の出来を社内で評価し、未来の化粧品が決まっていきますので、責任重大です。
だからこそ試作品を作るうえで「正確に化粧品原料を測りこむ」作業は、
気を抜けない非常に大切なお仕事です。
そんな大切な測りこみというお仕事に関して、実際私達がどのようなことに注意しているのかを今回はまとめていきたいと思います。
〇測りこみに大切な事〇
① 実測値を必ずメモ
これはもう初歩的なことなのですが、非常に重要です。
試作品を作成するときは、処方に実際に測りこむ数値を記載しています。
それに従って進めていくのですが、上記でも述べましたように化粧品には非常に多くの成分が配合されているため、一度の試作に測りこむ数は多い時で数十種類にも及びます。
それらを全て間違いなく正確に測る為には、写真のように実測値をメモすることが非常に重要となります。
(写真は左が測りこむ数値、右が実測値のメモになります)
②各原料のロットNo.を必ずメモ
各化粧品原料にももちろんロットNo.が記載されています。
なぜこれもメモをするのかと言いますと、
・測りこみのミスをゼロに
・完成後の状態に何かおかしな点があった場合にその原因を探しやすくなる
といったメリットがあるからですね。
特に二つ目に注目です。
例えば、何度か試作を重ねてきたアイテムで、全く同じ原料を使っているはずなのに今までと使用感が違う…香りが違う…粘度が違う…などのトラブルが生じてしまうことがたまにあるのですね。
この要因としては、
・購入日の古い原料を使用してしまった
・原料自体の保管状態が悪く変質してしまっていた
・同じ原料だけどメーカーによって精製度が異なることによる問題
など様々です。
万が一、試作品の品質がおかしい…となった時、各原料のロットNo.を控えておくことで、どの原料が影響しているのか、後に原因を探る際役立ちます。
試作品を提出する度に品質が異なる、なんてことになっては何が正しい使用感なのか比較することもできませんし、何より試される方々を不安な気持ちにさせてしまいます。
そうならないためにもこの工程を忘れてはいけませんね。
③水の配合量を正確に調整
試作時、粉末状や固形状の原料は加熱して溶かします。
その際、水物系(化粧水、美容液、乳液、クリーム(o/w))の場合は、加熱している間に水が蒸発していってしまうため、最終的に正確な配合量ではなくなってしまいます。
さらに加熱時間や加熱温度などの違いによって、水の蒸発量も毎回変わってきますので、試作する度に粘度や外見に違いが生じたり、最終的には製造現場で製造したものとビーカーワークで作ったものとで状態の差が出てしまったりします。
再現性を取るためにも、蒸発してしまった水を調節してあげる必要があるのですね。
どのようにして調整するかと言いますと…
①空のビーカーの重さを測っておく
②完成した試作品が、
空のビーカーの重さ+本来作ろうとしていたg数(例えば400gなら400g)になればOKです。
しかし、だいたいの場合水が蒸発してしまっているためこれより少ないはずです。
その足りないg数分水を足すことによって、処方通りの配合量に整えることができます。
これらが原料の測りこみをするときに意識しているポイントです。
ここまでしても私は間違えそうになってしまうことがあるため、
試作をするときは、間違いないよな…?とたまに時間を忘れてしまうくらい集中しているときもあります。
今回この内容をまとめたのは、この工程が自分の中で流れ作業にならないようにするためです!
間違いない品質の試作品、化粧品をお客様に提供できるよう、常に全集中ですね!
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クリーム作り~目に見えない世界のお話②~
皆さんこんにちは!いろはねです!
前回に続きまして、クリーム作りにおいて、目に見えない世界ではこんな現象が起こっているんだ!というお話をしていきたいと思います。
前回は、W/O、O/W型の復習と、乳化技術「転相乳化法」についてお話させていただきました。
今回は、ついに乳化技術の目に見えない部分をイメージ図化して、まとめていきます。
それでは参りましょう!
〇クリーム作り(続き)〇
<クリーム作りの手順~転相乳化法~>
①オイル(植物オイルやエステル油)+界面活性剤を加熱する。(油相)
②水相も加熱する。
③①をホモミキサーにかけながら、②を少しずつ添加していく。
④最後は手撹拌でゆっくり冷却。
という手順になります。
転相乳化法においては、特に③が非常に重要となる工程です。
つまり、ここからが本題です。
この先は③の工程をイメージ図と共にまとめていきたいと思います。
①でオイルと界面活性剤を加熱した際、溶けた界面活性剤は下のイラストのようにバラバラに存在しています。
そしてそこへ加熱した水相を少しずつ添加しますが、まだこの時はW/O型の状態です。
油相に水相が入ることによって、バラバラだった界面活性剤の親水基側が水粒子を守るように少しずつ配向していきます。
最初はまばらに配向していきますが、ホモミキサーの撹拌力によって徐々に水粒子の表面積が小さくなっていくため、界面活性剤はびっしり配向できるようになります。
水相を全て添加した時点で、油と水の割合は水の方が多い状態となっています。
また、この状態でホモミキサーをかけ続けていくと、さらに水粒子が小さくなっていきます。
そして、ある大きさまで小さくなると…
界面活性剤が水粒子の周りに配向することができなくなり、くるっと反転して逆に油を包むのです!
これが「転相」です。
そして、この転相が起こる温度が「転相温度」であり、
こうして高温時W/O型だったエマルションが冷却過程でO/W型へと大きく変化するのですね。
イメージ図化したように、エマルションの世界は目に見えませんが、
実際に転相した瞬間は見ることができるのですよ!
最初はW/O型で疎水的ですので、ぶるっとしていてゲルっぽい状態なのですが、
O/W型へと転相するとつるんとしたツヤのある状態へと大きく変化するため、
おっ!今転相したぞ!となるわけです。
つまり、クリーム作りは温度によって状態が変わっていくため、目を離さずじっと観察する必要があります。
目に見えない世界をこうしてイラストにすると、非常に乳化のメカニズムが分かりやすいですよね。
複雑で奥深い技術だからこそ、このようにイメージすることが非常に大切なのだということが学べたいろはね研究員なのでした。
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クリーム作り~目に見えない世界のお話①~
皆さんこんにちは!いろはねです!
もう完全に夏が到来しましたね!
外は気温が高く室内はエアコンガンガン…という生活が始まりました。
外と中での気温差、そして季節の変わり目、さらにはマスク生活を強いられる毎日…
皆様体調は崩されていませんか?
気候の変動に負けず、頑張りましょうね!
さて、今回はガラッと話題を変えまして、乳化のお話をしていきたいと思います。
乳化といえば、皆さんは乳液やクリームが思い浮かぶでしょうか。
肌を美しく保つために必要な水分と、バリア機能を高めるオイル成分をダブルで効率良く補給できることから、スキンケアには欠かせないアイテムとなっています。
乳化反応は肉眼で見ることのできない、ミクロな世界で繰り広げられています。
今回は、乳化アイテムの代表格であるクリームに焦点を当て、どのようにして完成していくのか、目に見えない世界をイメージ図に起こしていきたいと思います。
それでは参りましょう!
〇乳化技術について〇
乳化の世界は非常に複雑で、奥深い分野になります。
乳化自体はもう皆さんもご存じの通り、本来混じり合わない油と水の相反する成分同士を、界面活性剤によって繋ぎとめ、混ぜ合わせる反応のことです。
この乳化にもいくつか技術がありまして、私もまだまだ勉強中の領域です。
今回焦点を当てるのは「転相乳化法」という技術になります。
これは、エマルションが油中水(W/O)型から水中油(O/W)型に逆転する温度「転相温度」を利用して行う乳化技術です。
この技術は、非常に微細なエマルションの形成が可能で、それによる使用感や安定性の高さが特徴です。
<W/O型?O/W型?>
これは過去のブログにもまとめさせていただきました!
乳化にはエマルションタイプがいくつか存在し、それぞれが持つ特徴を活かして化粧品アイテムが作られています。
このように真逆なタイプなのです。
W/O型は、水をはじく油がベースとなっているため、ウォータープルーフの日焼け止めなどに活用されています。
O/W型は、ほとんどの乳液やクリームが該当します。
<転相?転相温度?>
近年よく乳化に使用される界面活性剤として、ノニオン界面活性剤(非イオン界面活性剤)が挙げられます。
これは、水に溶けた時にイオン化しない親水基を持ち、水の硬度や電解質の影響を受けにくい非常に使いやすい界面活性剤です。
中でも代表的なのが、酸化エチレン(エチレンオキサイド:EO)を付加させたタイプになります。
これの持つ特徴が、転相と深く関わっています。
それは何かと言いますと…
酸化エチレン型ノニオン界面活性剤のHLB(親水性・親油性バランス)は、温度によって大きく影響を受けます。
高温では親油性、低温では親水性を示すのです。
つまり、このタイプの界面活性剤を使用した乳化は、
加熱されたばかりの高温時 ⇒ W/O型
だんだん冷却していき、ある温度に達すると ⇒ O/W型
このように、温度の変化によってエマルション状態が逆転する現象を「転相」
その現象が起こる温度のことを「転相温度」と呼んでいます。
〇クリーム作り〇
さて、少し難しいお話が続きましたが、転相乳化法については理解できたでしょうか?
ここからいよいよ本題に入ります。
今度は、この乳化法をイラスト化していきながら話を進めてまいりましょう。
<クリーム作りの手順~転相乳化法~>
①オイル(植物オイルやエステル油)+界面活性剤を加熱する。(油相)
②水相も加熱する。
③①をホモミキサーにかけながら、②を少しずつ添加していく。
④最後は手撹拌でゆっくり冷却。
という手順になります。
ここでは③の工程が最も重要であり、目が離せないポイントになります!
この先の細かいお話は、次回にいたしましょう。
お楽しみに!
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クレンジング開発の裏側②
皆さんこんにちは!いろはねです!
前回はクレンジングバーム開発の裏側に迫りました。
今回もその続きになります。
まずは前回のおさらいから参りましょう!
高品質なクレンジングを開発する為に重要なのはなんだったでしょうか?
<其の一>
オイルと相性の良い界面活性剤を選択するべし!
⇒クレンジングバームの品質を大きく左右する2大成分「オイル」と「界面活性剤」。
これらの相性が良くなければクレンジング力を上手く発揮することはできません。
そこで、同じ構造で重合度が異なる界面活性剤を2,3種類用意し、
オイル(エステル油or植物オイル)にそれらがしっかりと相溶するかどうかを確認する実験が必要でした。
私がその時使用したのは、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルと、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの2種類でした。
<其の二>
クレンジング力を比較するべし!
⇒ オイルと界面活性剤の相性が良かったとしても、クレンジング力がなければ意味がありません。
そこで、エステル油+各界面活性剤でそれぞれクレンジング力テストを行い、良い結果が出た界面活性剤を選択します。
ここで重要となったのが界面活性剤のHLBでした。
私が実験で使用した、
トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルは、HLB 3
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルは、HLB 8
クレンジング力が高かったのはトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルでした。
HLBは、高い方が親水性であるため、水と馴染みやすく、容易にメイクと乳化し、洗浄後のメイク落ちが良かったのではないかという結論に。
このように、同じ構造で重合度の異なる界面活性剤を選択したことによって、なぜクレンジング力に差が出たのかも比較しやすくなりました。
前回のブログに詳しい内容をまとめておりますので、合わせてお読みください(^^)↓
さて、エステル油+界面活性剤の高いクレンジング力とベストな組み合わせを見つけられたところで、次のステップへと参ります!
~其の三~
界面活性剤の配合量を探るべし!
其の二で界面活性剤の選定をしましたので、今度は配合量を決めていく番です。
ここでのポイントは、
①クレンジング力の高さ
②洗浄後のしっとり感
これらのバランスが最も良い配合量を定めることです。
クレンジングで最も重要なのはクレンジング力ですが、そこに焦点を当てすぎて配合量を定めてしまうと、洗浄力が強すぎて後肌がパサパサに…それを避けるためにも、この基本ベースをしっかりと見極める必要があります。
〇実験方法〇
私の時は、すでにお手本となる処方がありましたので、それを基準に界面活性剤の配合量を決めました。
(お手本の処方は、界面活性剤の配合量が15%でした)
界面活性剤の配合量を5%・10%・15%と3段階に振り分け、エステル油+界面活性剤+ポリエチレン、と非常にシンプルなクレンジングバームを作成し、使用感の比較を行いました。
結果は…?
・界面活性剤5%
⇒洗浄時の乳化力が物足りない
メイクが少し残っているような印象だったが、しっとり感はある
・界面活性剤10%
⇒洗浄時の乳化力も程よく、後肌のしっとり感も残っていて非常にバランスが良い
・界面活性剤15%
⇒洗浄力が高く、後肌のさっぱり感が非常に爽快であり、個人的には好みであったがポイントとしているしっとり感があまり感じられなかった
この結果から、クレンジング力・しっとり感ともにバランスが良かったのは界面活性剤10%配合のクレンジングバームでした。
このように、非常にシンプルな設計であったこともあり、界面活性剤の能力をダイレクトに観察することができました。
いきなり色々な成分を組み合わせて設計をするのではなく、まずは肝となる成分のみでシンプルに使用感チェックを行ってから、そこに様々な味付けをしていくという手順が化粧品開発において最も重要であると学ぶことができました。
ただ闇雲に配合量を決めてしまうと、クレンジングバームならまだわかりやすいですが、もっと複雑な乳液やクリームなどの乳化アイテムは、後々改良をするときに困ってしまうのです。
もう少し粘度を上げたいな。もう少ししっとりさせたいな。
でも何を変えれば一番影響が出るのか?
何が影響してこの使用感が出ているのか?
原因を見極めるのが非常に難しくなります。
そうすると軸がブレて色々なところに手を付けてしまい、余計にめちゃくちゃな処方になってしまうという悪循環に…
シンプルでかつ高品質な化粧品開発に必要なのは、軸をブレさせない為の基礎実験も非常に重要であるということなのですね!
一つ一つ順を追って実験をしていくことで、着々と完成に近づいていく…この感覚に非常にワクワクしたいろはね研究員なのでした。
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クレンジング開発の裏側①
皆さんこんにちは!いろはねです!
今回はクレンジング開発の裏側と題しまして、
クレンジングバームの開発時に学んだ重要なポイントについてまとめていきたいと思います。
クレンジングバームといえば、これまでも何度かブログに書かせていただいておりますが、液状のオイルをポリエチレンで固めた固形タイプのクレンジングというのが一般的になってきましたよね。
そしてオイルだけではなく、そこに界面活性剤が入ることによって、
水で洗い流されるときに乳化され、メイクが落ちるというメカニズムでした。
さて、このクレンジング開発に重要なポイントとは一体なんなのでしょうか…?
~其の一~
オイルと相性の良い界面活性剤を選択するべし!
化粧品の開発をする上で重要なポイント一つ目は、処方の肝となる成分同士の相性を見ることが非常に大切です。
クレンジングの場合であれば「オイル」と「界面活性剤」。
最低限この二つがなければクレンジングは成り立ちません。
つまり、これらの相性が良くなければ、メイクと馴染ませる時や
水で洗い流すときに上手く乳化せず、クレンジング力の低下につながります。
これでは品質に大きく影響してしまいますね。
〇どのように相性を見るのか?〇
①エステル油を用意する。(植物オイルがベースならそれを用意)
⇒私の時は、パルミチン酸エチルヘキシルというエステル油を使いました。
クレンジングオイルなどによく用いられるエステル油です。
②界面活性剤を2,3種類用意する。
⇒私の時は、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルとトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの二種類を用意しました。
ここでポイントとなるのが、同じ構造で重合度が異なる界面活性剤を選択することです。
そうすることによって、実験結果の比較がしやすくなります。(後にわかります!)
③オイルとそれぞれの界面活性剤を混合し、80℃まで加熱し、撹拌する。
この時必ず界面活性剤の配合量は統一して実験を行います。
④30℃まで冷却し、撹拌する。
⑤オイルに均一に界面活性剤が相溶しているかどうかを観察する。
⇒相溶は、濁りがなく、透き通った状態になるということです。
この状態になれば相性が良いということが分かります。
オイルと界面活性剤の相性が悪い場合は、上手く相溶せず、濁ってしまったり、分離してしまったりするため、ここの見極めが非常に重要となります。
私の時は、どちらの界面活性剤も綺麗に相溶し、相性が良いという結果が出た為、
次のステップへと進みました。
~其の二~
クレンジング力を比較するべし!
最初の実験で相性の良いオイルと界面活性剤の選別ができたところで、今度はクレンジング力テストを行います。
たとえ相性が良くてもクレンジング力がなければ話になりませんね。
特に私の時は、選択した界面活性剤2種類ともオイルとの相性が良かった為、尚更比較する必要がありました。
〇実験方法〇
①人工皮膚にメイク(ファンデーション・口紅・マスカラ)を均等に塗布する。
②まずはエステル油のみでクレンジング力を見る。
⇒まず、界面活性剤が入っているのと入っていないのとでは、どのように状態が違うのか?これを確かめる必要があります。
ちなみにこの時の結果は、エステル油のみだとメイクを溶かすことはできても
洗浄時ににじむだけで流れ落ちてはいきませんでした。
やはり界面活性剤の力がクレンジングには必要不可欠なのだということが改めてわかりました。
③相性の良いオイル+界面活性剤でクレンジング力を見る。
⇒エステル油のみでのクレンジング力を学んだところで、本題の実験ですね。
私の時は、ここで結果が分かれました。
クレンジング力を比較したところ、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの方が高かったのです!
特に洗浄後の落ちが良いという結果が出ました。
ここでついに、同じ構造の重合度が異なる界面活性剤を選択したことが活きてきます。
それではなぜ、クレンジング力に差が出たのでしょうか?
それはHLBの違いが関係しています。
HLBとは、Hydrophilic-Lipophilic Balance=親水性親油性バランスの頭文字を取ったもので、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示している数値です。
界面活性剤は、このHLBが低ければ疎水性、高ければ親水性、という基準を持っています。
そして今回使用した界面活性剤は…?
トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルが、HLB 3
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルが、HLB 8
つまり、クレンジング力の高かったトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルはHLBが親水性寄りであるため、洗浄後のメイク落ちが良かったのではないかという考察ができるのですね。
HLBの違いも知れたところで、実際に界面活性剤のみでも触ってみることにしました。
そうしますと、HLB通りの使用感を体験することができたのです。
・トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル
⇒洗い流すときにヌルヌル感がしばらく残る。
・トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
⇒洗い流した後はヌルヌルせずさっぱりしている。
やはり、親水性の高いトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの方が水と馴染みやすく、すっきりメイクを落とすことができるということなのですね。
これらの結果から、
クレンジング力の高さを重視⇒トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
クレンジング後の保湿力を重視⇒トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル
という位置づけで使用すれば良いのではないかということが分かりました。
私の時は、クレンジング力重視の案件でしたので、界面活性剤はトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルを選ぶことになりました。
まずはここまででやっと界面活性剤の選定が終わりましたので、さらに次のステップへと進んでいきます。
それはまた次回にいたしましょう!
今回もお読みくださりありがとうございました!
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CITE JAPAN 2021!
皆さんこんにちは!いろはねです!
先週は、化粧品業界にいる方にとっては2年に一度の大イベント…
CITE JAPAN 2021が5月19日(水)~5月21日(金)の3日間、横浜パシフィコで開催されましたね!
緊急事態宣言も5月末まで伸びてしまい、天候も雨模様と中々厳しい条件での開催だったと思いますが…出展された皆様、3日間お疲れ様でした!
今回私は人生で二度目の参加をさせていただきました。
始めてCITE JAPANに参加したときは、まだ化粧品技術者ではなく、
美容部員として働いていた為、非常に多くの化粧品原料や製造機器を初めて見て興奮していたのを覚えています。
あれから2年経ち、私は今ありがたいことに化粧品開発の現場にいます。
今の立場になってのCITE JAPANは初参加でしたので、また新たな気持ちで展示場を回ることができました。
果たしていろはね研究員は、技術者的な目線で展示会をめぐることができたのでしょうか!?(もちろんまだまだだと思っております)
今回のブログは、CITE JAPAN 2021において気づいたことや感じたことをまとめていきたいと思います。
レポートのような内容になってしまうかもしれませんが、皆様どうか温かい心で読んでいただければ幸いです。
それでは、本題へ参りましょう!
〇CITE JAPAN とは?〇
化粧品業界の方は知っていて当たり前なのですが、念のため…
CITE JAPAN(化粧品産業展)は、今年でちょうど10回目の開催でした!
主に化粧品、化粧品原料・香料、化粧品容器・パッケージ、製造装置・測定装置、受託試験・分析などなど…
化粧品産業において必要とされる分野の展示や技術発表がされ、様々な情報交換をすることのできる場です。
化粧品業界の人間は必ず行くと言って良いほどの大きな展示会です。
〇気づいたこと・感じたこと〇
今年の展示会はいくつかの共通点があるように感じました。
①コロナ禍に合わせた原料
もう1年以上もコロナウイルスに悩まされていますが、それによる生活環境の変化や肌ストレスは、大きく変わったように思います。
特にマスク生活やアルコール消毒が当たり前となり、私たちの肌は常に刺激を受けている状態ですよね。
そんな今のトレンドに合わせるように、展示でよく見かけたのは
・マスクダメージ軽減
・メイク崩れ防止
・ニキビ予防
・抗菌&除菌
・肌フローラ改善
などなど…
全てがコロナ禍によって今の私達が抱える問題にピッタリな商材で溢れていました。
マスク生活によるニキビトラブル、深刻ですよね。また、ニキビが発生する原因として、肌の常在菌のバランスが崩れることもありますので、それを整える成分であったり、そういうものに特化して展示がされていたように思います。
後は化粧品にも抗菌効果や除菌効果が求められているのか、植物の力で抗菌&除菌することのできる天然志向な化粧品原料などもありました。
②サスティナブルを意識
やっと日本でも浸透してきたサスティナブル。
私的に興味深かったのは、天然由来の1,3-ブチレングリコールや1,3-プロパンジオールです。
これらは保湿剤や防腐剤の補助剤として、よく化粧品に配合されている成分ですが、一般的に石油から作られているんですよね。
化粧品のベースとなる基剤達も次第に、石油由来から天然由来へと変わっていくのかなと同時に、それによってCO2削減を目指しているのだなと感じました。
世間のニーズも合成より天然、そういう認識になりつつあるので、今後需要はさらに高まっていくのではないかなと感じました。
③原料メーカー独自の高度な技術力
ナノ化技術や、簡単に乳化物ができてしまう原料などなど…
私達の技術力は必要なく、簡単に化粧品ができてしまう便利な原料も多くあるように感じました。
業界で差別化を図るために、各原料メーカーも高い技術力で勝負しているように見えました。
これらを使用すればもちろん低コストで安定性の高い商品の開発ができるのかもしれませんが、そればかりに頼ってしまっては、化粧品技術者としての力が衰えてしまいます。
非常に興味深い原料達でしたが、私はあまりそれらは使わない化粧品開発がしたいなと思いました。
展示会を回っていて、やはり展示会はその時代のトレンドがぎゅっと集結している。
各メーカーはいち早くそのトレンドに対してアクションを起こし、
展示会へ向けて新たなものを開発する。
コロナ禍によるダメージは各業界で深刻だとは思いますが、
それにどう立ち向かっていくのか、各メーカーから醸し出される「負けないぞ!」という情熱をひしひしと感じました。
ちなみにこれは余談ですが…
とある展示ブースに立ち寄ったところ、中学時代の同級生にばったりと会いまして、
非常に分かりやすいプレゼンをしてくださいました。
同世代もこうして活躍している!
私も負けてられないな!と刺激になったいろはね研究員なのでした。
他にも日本化粧品技術者会のセミナーにもお邪魔し、非常に学びに溢れた有意義な一日となりました。
また2年後のトレンドはどうなっているのでしょうか?開催が今から楽しみです。
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美容部員から化粧品開発者になって気づいたこと
皆さんこんにちは!
最近毎晩フェイスマスクでスペシャルケアをしているいろはねです!
毎日続けてもう2週間くらいが経過したのですが、
インナードライが解消されてきたのか皮脂の分泌量が減り、肌のもっちり感もアップ、
そのおかげで毛穴も少しずつ目立たなくなってきました。
やはりフェイスマスクは、うるおいチャージをするうえで効果的なんだなと改めて自分の肌で体感中です。
早くも梅雨入りが予想され、これから湿度の高い毎日が増えていきそうですが、
この毎晩フェイスマスクケアは欠かさず続けていこうと決心しました!
さて、今回は私にしか書けないかも?という内容でお送りしたいと思います。
題名の通り、美容部員だった頃の私と今の私、化粧品は何が一番重要なのか?
この認識が変わったなとふと思いまして…
しかも私と同じような経歴をお持ちの方ってほとんどいないんじゃないかな?
じゃあこの内容でブログを書いたら面白いかも!
ということで今回このような題名になりました。
一個人の意見・イメージですので、温かい心でさらっと読んでいただければ幸いです。
それでは早速参りましょう。
〇美容部員時代〇
美容部員はその化粧品メーカーの顔となる非常に重要な存在ですよね。
化粧品メーカーとお客様(ユーザー)の懸け橋になるような存在です。
今やネットで簡単に化粧品の購入ができる時代ですが、それでも美容部員の存在が必要不可欠なのは、人にしかできない、お客様の心に寄り添う接客ができるからなんですよね。
ネット上ではできない直接対面でお客様とお話をすることで、
その裏にある悩みや迷い、求めているものに気づき、ピッタリの化粧品を販売する。
とても素晴らしいお仕事だと思います。
恐縮ながら私もその一員として一時期お仕事をさせていただいておりましたが、
その時私が化粧品で最も重要だと思っていたのは「美容成分」でした。
非常に数多くの植物エキスやオイル…それらの底知れぬパワー。
それらを化粧品販売のキーポイントとして、お客様にも力説していた記憶があります。
「希少価値の高い〇〇エキスを配合し、これには高い抗酸化作用があるため美白効果やアンチエイジング効果につながります!肌のトーンアップをされたいとおっしゃられていたお客様にはぴったりだと思います!」
といったように、効果の高い美容成分を前面に出すような形でセールストークを繰り広げていました。
お客様も美容成分にはご興味がある方ばかりで、お悩み解消にピッタリだというお話をすると納得いただけることも多々ありました。
実際、市販の化粧品でもパッケージを見れば○○エキスが○○効果発揮!といった記載の仕方がよくされていますよね。
それだけ化粧品にとって美容成分は大切で、化粧品の肌効果を特徴付ける非常に重要な存在であると当時の私は思っていました。
もちろん他にも、使用感や香りなどなどお客様によって重視されるところは様々でしたけどね。
〇化粧品開発者になって〇
美容部員時代に私が化粧品で最も重要としていたのは、美容成分でしたが、
化粧品開発者になり、それだけじゃないな!ということに気づくことができました。
それは、「化学と肌の構造に基づいた美容理論」ですね。
もちろん美容成分は今でも非常に重要だと思っています。
しかし、それらがまだ配合されていないベース部分が非常に重要であるのではないかということに気づくことができたのです。
具体的にどのような部分が重要であることに気づいたのでしょうか?
今まで何度も書いてきていることなのですが…
肌の構造は非常に複雑であり、肌のうるおいを保持するために細胞間脂質が存在し、
それは脂質層と水分層がミルフィーユ状に交互に重なり合った構造をしています。
さらにそれを拡大すると、リン脂質と呼ばれる油と水両方の性質を持つ成分が規則正しく並び、構成されています。
つまり肌内部は油と水が両方存在している為、これらをバランスよくケアすることのできる化粧品が最も重要であるという認識に変化したのです。
これがいわゆる「化学と肌構造に基づいた美容理論」なのではないかと思っています。
このような美容理論に基づいた技術といえば、乳化やリポソーム技術ですね。
リポソーム技術については過去に記事を書いておりますので、ぜひご覧ください!↓
乳化は油と水の相反する成分を界面活性剤でつなぎ合わせて微細なエマルジョンにすることで、肌内部にうるおいと肌表面を油分で保護することのできるスキンケアですし、リポソームは細胞間脂質と同じような構造を持つカプセル型のナノ粒子で、
肌との相性が良く、肌内部に非常に浸透しやすい為、高い保湿効果が得られますよね。
それに美容成分を付属させることで、より高い効果が実現する、という認識に今は変わりました。
しかし、ずっと変わらないのはお客様の肌を美しくしたいという気持ちです。
このような経歴を持てて自分は幸せ者だと思い、これからも精進していきたいと思ったいろはね研究員なのでした。
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