新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

水系vs油系 香り立ちが良いのは?

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

化粧品を使用した時、ふわっと良い香りがすると心が癒されますよね。

使用感の良さや機能性にプラスして、香りの良し悪しで化粧品を選ぶ!

という方も結構多いのではないでしょうか?

最近は無香料な化粧品も多い中、バラ系やシトラス系など香り付けはマスト!

というお客様ももちろん多くいらっしゃいます。

そのご要望にお応えするべく、私達化粧品技術者は試作現場において、

化粧水、乳液、クリーム、クレンジングなどなど…

様々な化粧品に香料を賦香しています。

私は大学の授業で香料そのものには触れていたのですが、

実際に現場で扱った際に、化粧品の剤型によって香り立ちがかなり異なることに衝撃を受けました。

ではなぜ、剤型によって香り立ちが異なるのでしょうか?

今回はそれについてまとめていきたいと思います!

 

〇香り立ちのメカニズム〇

皆さんもご存じ、香料には大きく種類がありましたよね。

花や果物などを圧搾、抽出、蒸留することによって得られる天然香料

人工的に香り成分を調合し、フルーティーな香りやフローラルな香りなどを作り出す合成香料

と分けられ、主に食品に付与する目的の香料をフレーバー

化粧品やトイレタリー製品に付与する目的の香料をフレグランス

と定義されていました。

そして、これら香料に含まれる香り物質(香気成分)はほとんどが揮発性であるため、私達はそれを鼻で感じ取り、匂いを察知することができるのですね。

この揮発性が高い順に、トップノート、ミドルノート、ベースノートと大きく分類され、これらのバランスによって香料は香りの印象が決まると言われています。

香水も付けたてと数時間後の香りって全く違いますよね。

それらを全て計算した上で、香りのプロ(調香師)は調合を行っています。

鼻の感度の良さはもちろん、膨大な香りの知識や経験とセンスが必要となる、

ある意味芸術的なお仕事とも言えるのかもしれません。

非常にかっこいいです!

 

〇水系と油系どちらが香り立ちが良い?〇

 

化粧品は水系と油系のタイプにも分けられますよね。

水系であれば、化粧水・美容液・乳液・オールインワンゲルなど。

油系であれば、クリーム・クレンジングバーム・美容オイルなど。

化粧品を塗布した時に香るのは、そこに配合されている香料が揮発することによって香りを感じているということになりますよね。

つまり、香り立ちの良さは揮発温度や速度なども非常に重要となってきます。

そして最終的に水と油、どちらの方が揮発性が高いのか?というお話になってくるのですが…もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんね!

答えはです。

 

〇なぜ水の方が揮発性が高いのか?〇

①沸点の違い

水の沸点が100℃なのに対し、

油の沸点はよく使うサラダ油で約300~500℃とされています。

このように圧倒的に油の方が沸点が高い為、水系化粧品の方が香り立ちが良いのです。

 

②分子運動

「揮発」という言葉を化学的に読み解くと、答えが見えてきます。

まず根本的に考えると、液体から気体になることを「気化と呼び、

①で述べた沸点による気化は「蒸発

常温で気化することを「揮発としています。

確かに、机の上に垂れた水滴っていつの間にか消えていますよね。

水が沸騰することによって蒸発するのは湯気が目に見えてわかるのでイメージしやすいですが、常温でも気化するというのはよく考えると不思議な現象ですよね。

 

私達は普段温度を〇℃と表現しますが、化学的・理論的に定義すると、

物質に含まれる分子運動の激しさを表す値なのだそうです。

つまり、温度の高い沸騰した水は非常に分子運動が激しい状態=水は蒸発する。

沸点ほどではないですが、常温でも一部の分子は運動していて、

それによって水は沸騰しなくても徐々に気化するということなのですね。

この揮発のしやすさは液体によって異なり、それは分子同士の電気的(+や-)な力によって働く分子間力が関係しています。

この分子間力が大きいと液体中に分子が拘束される為、液体表面から飛び出しにくくなり、揮発性が低くなるというメカニズムなのだそうです。

この話から、水の分子は比較的分子間力が弱く分子運動しやすい。

そして、油の分子は比較的分子間力が強いのではないかなと思いました。

なぜかというと、水は電気を通しますが、油は電気を通さないからです。

水の中には分子になっていないイオンがバラバラに存在していて、それと反応し電気が通る。

しかし油は強い分子間力が働いてイオン性を持たないということなのではないでしょうか。

水の揮発性がここまで化学的だとは…初めて知りました。

全ての現象には化学が繋がっているのですね。

つまりこのように、水の方が揮発性が高い為、

例えば化粧水と美容オイルに同じ香料を同じ賦香率で配合すると、

香り立ちが全く異なります。本当にびっくりしますよ!

これらを考慮し、普段私達は油系の化粧品は水系よりも香料の配合量を少し多めに設定して試作を行っています。

香りは数値化できませんので、後は人の感性が頼りです。

お客様によって感じ方も大きく異なるため、香りは非常に面白い分野だなと改めて感じたいろはね研究員なのでした。

 

<参考HP>

香料とは | 日本香料工業会 - Japan Flavor and Fragrance Materials Association -

油は沸騰しない 発見!フードマネジメントな365日┃中村学園大学┃フード・マネジメント学科特設サイト (nakamura-u.ac.jp)

「揮発」って何?身近な例とともに化学系学生ライターがわかりやすく解説 - Study-Z ドラゴン桜と学ぶWebマガジン

 

いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓

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