新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

ピーリングジェルの秘密②

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

前回はピーリングについてお話しさせていただきました。

ピーリングとは「角質ケア」のことで、皮膚表面の古い角質を取り除き、新たな皮膚の再生を促す美容法でしたね。

美容皮膚科・エステサロン・自宅などでケアができるとして、取り入れている方もいらっしゃるのではないかと思います。

前回は知識編でしたので、今回は本題となるピーリングジェルの秘密についてまとめていきたいと思います。

 

〇ピーリングジェルの基本構造〇

ピーリングジェルの全成分を見ますと、大体が水、グリセリンときて、

その後にカルボマーや○○ポリマーなどの水溶性高分子、そしてステアルトリモニウムクロリドなどのカチオン界面活性剤が並んでいます。

特にこの水溶性高分子とカチオン性成分がピーリングジェルに必要不可欠となる成分なのです。

…これだけの説明では、どういうこと?とまだイメージがわかない方もいらっしゃると思いますので、キー成分についてまずは簡単にご説明いたします。

<水溶性高分子とは?>

アルカリ剤との中和反応によってゲル化する増粘剤のことを指します。

化粧品のとろみを出したい時やジェルなどを作りたい時によく使用される成分です。

中でも特に、カルボキシビニルポリマー(略:カルボマー)が有名ですね。

<カチオン界面活性剤>

水に溶けた時に親水基が+の陽イオンになる界面活性剤のことを指します。

マイナスに帯電している毛髪に吸着するということから、よくシャンプーやコンディショナーなどのヘアケア商品に配合されており、毛髪の柔軟効果や帯電防止に役立つ成分として有名です。

また、中には抗菌作用を示すものもあり、殺菌・消毒剤のキー成分としても活躍しています。

 

ではなぜ、これらの成分がピーリングジェルに必要不可欠なのでしょうか?

ここにピーリングジェルの秘密が隠されています。

①ジェルにするため

ピーリング「ジェル」ですからね。

まさにこのジェルの部分を形作っているのが、この2成分なのです。

あれ?でもカルボマーってアルカリ剤で中和して増粘する成分だったよね?

アルカリ剤はいらないの…?と思いますよね。

そうです、本来はもちろんアルカリ剤が必要です。

しかし、ピーリングジェルはアルカリ剤がなくてもジェル状になっているんですね~。

一体なぜなのでしょう!

さて、ここからは化学的なお話になっていきます。

まず、カルボマーをアルカリ剤で中和したところでなぜ増粘するのか?というところが非常に重要です。

原料メーカーさんのイラストをお借りしてお話していきましょう。

参考HP:薬添グレード【カルボマー】|日光ケミカルズ|ケミナビ (chemical-navi.com)

カルボマーは、構造中にカルボキシル基(-COOH)という官能基を持った高重合な成分なのですが、最初は図のようにクシャクシャッと固まった状態で存在しています。

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カルボマー(最初の状態)

これを水に溶かします。

そうすると、クシャクシャになっていたカルボマーが水と接触することで少し緩みます。

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カルボマー(水に溶解後)

次にアルカリ剤(例えば水酸化ナトリウムなど)で中和をすると、カルボキシル基(-COOH)のHが取れ、-COO⁻になります。

マイナスのイオンが末端になることで、それらが磁石と同じように電気的に反発し合い、クシャクシャだった構造が外へと広がっていきます

そうすることで増粘するのですね。

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カルボマー(中和後)

これが、アルカリ剤で中和した場合のカルボマーの増粘メカニズムです。

これを知ると、マイナスイオンの反発、つまり電気的な反応で増粘していたんだなということが分かります。

そして、ついにここで登場するのがカチオン界面活性剤です。

ピーリングジェルを作る時、手順としてカルボマー水溶液の中にカチオン界面活性剤を添加するのですが、アルカリ剤で中和した時と同じようにジェルになるのです。

私も始めて見た時は驚きました。

「アルカリ剤で中和していないのにジェルになったぞ…!?」

そうなんです。

実はカチオン界面活性剤もカルボマーの中和剤として機能するのです!

カチオン界面活性剤は水に溶けると+の陽イオンになるんでしたよね。

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カチオン界面活性剤

参考HP:界面活性剤の主な性質と種類 (jp-surfactant.jp)
このカチオン界面活性剤をもう少し詳しく見ていきますと、イラストのように水に溶けることでマイナスのイオンを切り離し、自身はプラスに帯電するようになります。

この切り離されたマイナスのイオンと、カルボマーのカルボキシル基(-COOH)のH⁺がくっつくことで、カルボマーの末端は-COO⁻となります。

そうすることで、同じように-COO⁻のマイナスイオン部分同士が反発し合い、増粘するということなのですね。

む、難しい…!

ピーリングジェルってこんなにも化学的な反応で作られていたのですね。

 

②ポロポロを出すため

えっ…あれは角質が出てきているんじゃないの?

いえいえ。あのポロポロには実は、カルボマーとカチオン界面活性剤が大きく絡んでいるのです。

今回はピーリングジェルのジェルのメカニズムについて長くなってしまいましたので、ポロポロに関する詳しい内容はまた次回にいたします。

 

最後までお読みいただきありがとうございます! 

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