新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

ピーリングジェルの秘密③

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

ピーリングジェルのお話第3弾ですね!

前回はかなり化学的なお話になりました。

水溶性高分子であるカルボマーは、普段アルカリ剤を使用することで増粘させていますが、ピーリングジェルは代わりにカチオン界面活性剤を使用することによってジェルにしているとまとめました。

ではなぜ通常アルカリ剤の所をわざわざカチオン界面活性剤にする必要があったのでしょうか?

それは、これら二つの成分がピーリングジェルに欠かせないある機能を果たしているからなのです。

②ポロポロを出すため

ここが今回の内容で最も重要なポイントですね。

カルボマーとカチオン界面活性剤はピーリングジェルのポロポロを出すために必要不可欠である為、配合されているのです。

えっ?あのポロポロは角質なんじゃないの?

あのポロポロは、実は角質ではなくカルボマー自体がポロポロのカスとして出てきているだけなのです。

驚きですよね。私もこのメカニズムを知った時は衝撃でした。

まさかあのポロポロは角質じゃなかったなんて…

<ポロポロ発生のメカニズム>

ポロポロが角質ではなく、カルボマーだということはわかりました。

しかし、ここで疑問が生まれます。

なぜアルカリ剤で中和したジェルはポロポロが出ないのに、カチオン界面活性剤で中和したジェルは簡単に出てくるのか?

同じく中和して増粘しているはずなのに、この違いは一体何なのでしょうか?

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ポロポロ発生の謎

(ここからは実際私が試作を行って思いついた推測になってしまうのですが…)

これには電離度が関わっているのではないかと思いました。

電離度については以前詳しくブログにまとめさせていただいておりますのでそちらもぜひご覧ください!

sawayaka0302.hatenablog.com

電離度とは、水溶液中で電離する割合のことを言います。

この電離度が濃度によらずほぼ1に近い値になるのが、強酸や強アルカリなのですね。

これらは水溶液中でほぼ完全に電離してイオンに変化するため、一度反応したら、分かれたイオン同士が再びくっつくことはありません。

そして、よくカルボマーの中和に使用するアルカリ剤は水酸化カリウム水酸化ナトリウムなどの強アルカリでした。

つまり、カルボマーにアルカリ剤を使用した場合、ほぼ完全に電離するため一度中和したら元に戻ることはないですよね。

だから肌に馴染ませてもプルプルのジェルをキープできるのではないでしょうか。

ではカルボマーにカチオン界面活性剤を使用した場合はどうでしょうか?

おそらく、カルボマーとカチオン界面活性剤の関係は強アルカリほど強くないのではないかと思います。

つまり、ポロポロが発生するメカニズムはこんなストーリーかと…

まず、ピーリングジェルを肌にくるくるなじませていくと、徐々に水が蒸発していき、残ったカルボマーとカチオン界面活性剤の濃度が濃くなっていきますよね。

この濃度変化となじませる物理的な動作によって、一度電離したイオンがまた元に戻り、カルボマーの末端が-COOHになります。

そうすると、カルボマーが最初のクシャっと固まっていた状態に戻り、それがポロポロとして出てきているのではないのでしょうか?

これはあくまで私の推測になりますので、正しい答えがあれば教えていただきたいです!

ではなぜ私はこのような推測を立てたのでしょうか?

それはピーリングジェルの試作を失敗した話に繋がります。

〇ピーリングジェル試作時の失敗談〇

実はピーリングジェルってpHがかなり低いのです。

大体pH2~3とかでしょうか?かなり酸性ですよね。

カルボマーは水溶液にすると酸性を示す為、強アルカリで中和することによってpHを中性域に調整しているのですが、

ピーリングジェルはカチオン界面活性剤で中和しているため、pHはカルボマーの酸性がそのまま残っている形になります。

やはり顔に使用しますので、pHが低すぎるのはかなりリスキーですよね。

そこで、完成したピーリングジェルを水酸化ナトリウムでpH調整してみたのです。

そうしたら、一気にこのような状態に…!

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ピーリングジェルの失敗

上には白い塊が浮き、ジェルだったのがサラサラの水のような状態になってしまいました。

そして、この上に浮いている白い塊を触ってみたところ、あのポロポロと同じような質感だったのですね。

ということは、カチオン界面活性剤によって増粘していたカルボマーは、

強アルカリである水酸化ナトリウムが入ってきたことでその電気的な力に影響され、

カルボマーがクシャっとした状態に戻ってしまったのではないでしょうか。

そこで、ポロポロ発生のメカニズムには電離度が関わっているのではないか?と思ったのです。

 

カルボマーなどの水溶性高分子が配合された化粧品はたくさんありますが、

それらも条件が重なった場合は「ポリマーカス」と呼ばれるポロポロとしたものが発生することはあります。

それについては美里先生のブログが非常にわかりやすいです!

「ポリマーカス」が出るコスメのそのワケ | コスメあら!?カルト??

ピーリングジェルは普通のジェルよりもポロポロという名のポリマーカスがあえて出やすいような設計になっているということなのですね。

あのポロポロ自体は角質ではないということでしたが、

あれがスクラブのような働きをして、皮膚表面の汚れやざらつきを少し絡め取り、

後肌をツルツルにしてくれているのではないかと思います。

かと言って、皮膚が薄い方や赤みが出やすい方は刺激になる可能性が高いので、

使いすぎ&力の入れすぎは要注意ですね!

 

最後までお読みいただきありがとうございます! 

いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓

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