温泉水からの挑戦状②
皆さんこんにちは!いろはねです!
2月も後半に入り、少しずつ春の陽気がやってきていますね!
桜の開花が待ち遠しいです。
さて、前回は温泉水が肌に与えてくれる効果を簡単にまとめました。
ミネラルが豊富に含まれていることと、pHの違いによって肌効果は異なりましたね。
温泉水はとても素晴らしい効果を私たちにもたらしてくれます。
この力を化粧品にも取り入れたい…!
しかし、温泉水はとある試練を私達に与えてきました。
果たしてそれはどのような試練だったのでしょうか?
それについて今回はまとめていきたいと思います。
〇温泉水からの試練①〇
それはズバリ、温泉水のpH値ですね。
前回のブログで温泉水は酸性・中性・アルカリ性に分けられると書きました。
私達が今回の化粧品開発に使用したのはpH値が9以上のアルカリ性温泉水で、これをベースとしたスキンケアシリーズを作りたいというお話でした。
温泉水の力をふんだんに使ったスキンケア…しかもシリーズ。
これは私達も気合いが入ります!
そして、試作を色々と進めていく中で最も苦戦をしたのがフェイスマスクでした。
なぜかと言いますと…
一般的なフェイスマスクは、とろみを付与し、不織布に均一に美容液を浸しておく必要があります。
それには「カルボキシビニルポリマー」略して「カルボマー」と呼ばれる水溶性高分子が必要不可欠です。
この成分は、アルカリ剤との中和反応によって粘度が高くなり、ジェル状に変化する性質を持ちます。
(変化のメカニズムは以前まとめておりますのでご参考までに!↓)
普段カルボマーを使用する時は、まず精製水で溶解し、そこへアルカリ剤として水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)などを添加し、ジェル状にしているのですが…
もうお気づきでしょうか?
今回使用している温泉水ってアルカリ性でしたよね…?
つまり、ベースが精製水ではなくアルカリ性の温泉水であるため、NaOHやKOHを添加する前に温泉水と中和してしまうのです。
私はこの現象を実際に経験することができました。
いつも精製水でカルボマーを溶解する時は、まだサラサラな状態なのですが、
温泉水でカルボマーを溶解すると、そこですでに中和され、アルカリ剤を入れなくても本当にジェル状になってしまい、驚きました。
しかし、温泉水は不純物のないアルカリ剤とは異なり、他にもミネラルや非常に様々な成分を含んでいます。
その為、一見カルボマーがジェル状に変化したとしても、純粋な化学反応(中和反応)が起きているわけではないので、後に一部分のpHが乱れ、ゲル化して塊が生じてしまったりと、安定的ではなくなってしまうみたいなのです。(これも実際の経験)
これでは品質に影響が出てしまいますね。
ということで、温泉水のpHにより、カルボマーでとろみを付与するという道は閉ざされてしまったのです。
最初に一般的なフェイスマスクにはとろみの付与にカルボマーが必須だということをお伝えしました。
カルボマーを使用せず、どのようにしてとろみの付与をすればよいか?
これが温泉水から与えられた一つ目の試練でした。
〇温泉水からの試練②〇
次に、温泉水に含まれる塩ですね。
こちらも前回のブログで温泉水には、泉質という種類があると書きました。
中でも「塩化物泉」は塩分が豊富に含まれており、それが肌に付着することによって、肌表面に薄い膜を張り、水分の蒸発を防ぎ、肌のうるおいを保ってくれるという効果がありましたね。
この塩分が実はカルボマーの天敵となってしまうのです。
カルボマーのジェルは、塩分によってジェル状になった構造が崩され、とたんにシャバシャバの粘度になってしまうという欠点を持っています。
面白いのは、ただのカルボマージェルを汗をかいた皮膚に塗布すると、汗の塩分に反応し、タラーっと水のように溶けて垂れていってしまいます。
つまり、温泉水にも塩分が含まれているため、一般的なカルボマーの配合量では粘度が出ず、とろみを付与をすることが難しいのです。
それに気づかず、粘度が出ないとカルボマーの量を増やしてしまうと、ポリマー量が多量となり、それが肌に蓄積し、なじませる過程で白くなったり、ポリマーカスがぽろぽろと出てきてしまいます。
それでは品質にかなりの影響が出てしまいますね。
ということで、温泉水の塩分に反応してしまうカルボマーは使えず、逆にそれに影響されない増粘剤はどれなのか?
一から実験を行い、探さなければなりません。
これが温泉水から与えられた二つ目の試練でした。
さて、このように温泉水から数々の試練を与えられた私達ですが、もちろん完全に道が閉ざされてしまったわけではありません!
解決策はもちろんあります。
では果たしてどのような解決策を用いて、温泉水からの試練に立ち向かったのでしょうか?
これについては次回とさせていただきます。
それではまた!
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