新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

食べられる原料は本当に肌に優しいのか

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

早速ですが、皆さんは「この化粧品は食べられる成分や原料で作られています」

と言われたらどのように感じますか?

多くの方が、食べられるなら肌に付けても安全だよね!

と思うのではないでしょうか?

私もこの業界に入っていなければ、きっと同じことを考えたと思います。

実際開発現場においても、お客様が原料を支給してくださり、

これを使用した化粧品を作ってほしい、

といったご依頼をいただくことがあるのですが、よく見ると食用…。

この場合、はい!わかりました!と言ってそのまま使用することはできません。

化粧品にも使用可能かどうか調べたり、化粧品成分としてきちんと精製された原料を使用する必要があります。

化粧品は肌につけるものですので、体の中に入る食品とは紙一重な気がしますが、

食べられる原料=肌につけても安全と考えてしまうのは、

ちょっと待ったー!ということなのですね。

でもなぜ安全ではないのでしょうか?

私も疑問に思いましたので、色々調べてみました。

 

〇皮膚と内臓の機能〇

これらの機能の違いを調べれば、なぜ食べられる原料が皮膚にとって安全ではないのかが分かります。

そもそも皮膚は、私達の体を覆い、体内部の重要な器官や臓器を守ったり、

水分が失われないようにする「防御器官」

対して内臓は、強酸である胃酸(消化液)や様々な消化酵素を分泌し、

外から入ってきた食べ物から栄養分のみを吸収しやすい形に分解する「吸収器官」

つまり大まかにまとめると皮膚は守る組織で、内臓は吸収する組織

もちろん皮膚には経皮吸収機能もありますので、防御しかできないというわけではありません。

ということは皮膚にも吸収機能はある…では他に何が異なるのでしょうか?

それは分解機能です。

この機能、内臓にはできて、皮膚にはできないことなのですね。

ここの違いが重要なポイントとなります。

 

〇食品のアレルギー性や毒性〇

少し皮膚とは関係のないお話になりますが、

加工食品の裏を見ると、よく「本製品に含まれるアレルギー情報」といったアレルギー表示がされていますよね。

アレルギー症状が出るのは主にタンパク質と言われておりますが、

通常は胃や小腸で分泌されるプロテアーゼという消化酵素で分解・吸収されます。

その分解・吸収する際に特定のタンパク質を異物だと認識すると、

血中のIgE抗体(免疫グロブリンE)と呼ばれるタンパク質が反応してアレルギー反応が起こるのだそうです。

皮膚も同じようにIgE抗体が外部や内部からの刺激によって反応して接触性皮膚炎などの症状が出ます。

他の人は平気なのに、私はこの化粧水をつけると赤くなってしまうのよね…

という方はそれに配合されている何かの成分を異物だと認識してしまい、

免疫機能が働いて症状が出てしまうということですね。

 

また、不思議な現象として山芋を例に挙げますと、

山芋って擦り下ろす時にかゆみを感じますよね。

あれはアレルギー反応ではなく、山芋の皮付近に多く含まれるシュウ酸カルシウムという成分が原因なのだそうです。

シュウ酸カルシウムは結晶物で針のようにとがった形をしており、

それが皮膚に突き刺さることによってかゆみが出るのだそうです。

そのかゆみを抑える対策としてよくやるのが、酢水やレモンなどで洗い流すこと。

シュウ酸カルシウムは酸に弱いため、このような対策が推奨されています。

つまり、山芋を生で食べてもかゆみを感じないのは、分解の過程で分泌される胃酸によるものではないかと思われます。

肌ではかゆみを感じるのに、食べれば問題ない。

それは内臓の分解機能が働いたから。

面白いですよね~。

このように、野菜や果物にはアレルギー性や毒性を発揮して肌を刺激するものがあり、

それを肌は分解することができない為、食べられる原料をそのまま化粧品に配合することは推奨されていないということなのです。

ですので、食品を化粧品成分として使用する場合は必ず、エキスという形で精製されていなければならないのです。

ちなみに先程話題に出た山芋も化粧品表示名称として「ヤマノイモ根エキス」というものがありました。

ヤマノイモ根エキス(化粧品):Cosmetic-Info.jp

このように化粧品表示名称として、化粧品に使用可能な状態の原料であれば安心して配合することができるというわけです。

そこまでしても反応してしまう方はいらっしゃいますので、

食品由来成分が確実に安全とは言い切れないのはそこにも原因があるのかもしれません。

だからこそ、そういう不純物が全く入っていない白色ワセリンのような化学合成成分が医療の現場でも使用されているのかもしれませんね。

 

それにしても人間の体って本当に繊細で、毎日様々な機能が休まず働いていて…

毎日健康に生活できているのはこのおかげなのだなとしみじみ感じたいろはね研究員なのでした。

 

参考HP:

食物アレルギーの仕組みって?発症したらどうする? | 味の素株式会社 (ajinomoto.co.jp)

胃腸のしくみと働き|胃と腸の事がよくわかる胃腸の健康 (wakamoto-pharm.co.jp)

花王 | スキンケアナビ | 肌とはなにか (kao.com)

 

最後までお読みいただきありがとうございます! 

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