クレンジング開発の裏側②
皆さんこんにちは!いろはねです!
前回はクレンジングバーム開発の裏側に迫りました。
今回もその続きになります。
まずは前回のおさらいから参りましょう!
高品質なクレンジングを開発する為に重要なのはなんだったでしょうか?
<其の一>
オイルと相性の良い界面活性剤を選択するべし!
⇒クレンジングバームの品質を大きく左右する2大成分「オイル」と「界面活性剤」。
これらの相性が良くなければクレンジング力を上手く発揮することはできません。
そこで、同じ構造で重合度が異なる界面活性剤を2,3種類用意し、
オイル(エステル油or植物オイル)にそれらがしっかりと相溶するかどうかを確認する実験が必要でした。
私がその時使用したのは、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルと、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの2種類でした。
<其の二>
クレンジング力を比較するべし!
⇒ オイルと界面活性剤の相性が良かったとしても、クレンジング力がなければ意味がありません。
そこで、エステル油+各界面活性剤でそれぞれクレンジング力テストを行い、良い結果が出た界面活性剤を選択します。
ここで重要となったのが界面活性剤のHLBでした。
私が実験で使用した、
トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルは、HLB 3
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルは、HLB 8
クレンジング力が高かったのはトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルでした。
HLBは、高い方が親水性であるため、水と馴染みやすく、容易にメイクと乳化し、洗浄後のメイク落ちが良かったのではないかという結論に。
このように、同じ構造で重合度の異なる界面活性剤を選択したことによって、なぜクレンジング力に差が出たのかも比較しやすくなりました。
前回のブログに詳しい内容をまとめておりますので、合わせてお読みください(^^)↓
さて、エステル油+界面活性剤の高いクレンジング力とベストな組み合わせを見つけられたところで、次のステップへと参ります!
~其の三~
界面活性剤の配合量を探るべし!
其の二で界面活性剤の選定をしましたので、今度は配合量を決めていく番です。
ここでのポイントは、
①クレンジング力の高さ
②洗浄後のしっとり感
これらのバランスが最も良い配合量を定めることです。
クレンジングで最も重要なのはクレンジング力ですが、そこに焦点を当てすぎて配合量を定めてしまうと、洗浄力が強すぎて後肌がパサパサに…それを避けるためにも、この基本ベースをしっかりと見極める必要があります。
〇実験方法〇
私の時は、すでにお手本となる処方がありましたので、それを基準に界面活性剤の配合量を決めました。
(お手本の処方は、界面活性剤の配合量が15%でした)
界面活性剤の配合量を5%・10%・15%と3段階に振り分け、エステル油+界面活性剤+ポリエチレン、と非常にシンプルなクレンジングバームを作成し、使用感の比較を行いました。
結果は…?
・界面活性剤5%
⇒洗浄時の乳化力が物足りない
メイクが少し残っているような印象だったが、しっとり感はある
・界面活性剤10%
⇒洗浄時の乳化力も程よく、後肌のしっとり感も残っていて非常にバランスが良い
・界面活性剤15%
⇒洗浄力が高く、後肌のさっぱり感が非常に爽快であり、個人的には好みであったがポイントとしているしっとり感があまり感じられなかった
この結果から、クレンジング力・しっとり感ともにバランスが良かったのは界面活性剤10%配合のクレンジングバームでした。
このように、非常にシンプルな設計であったこともあり、界面活性剤の能力をダイレクトに観察することができました。
いきなり色々な成分を組み合わせて設計をするのではなく、まずは肝となる成分のみでシンプルに使用感チェックを行ってから、そこに様々な味付けをしていくという手順が化粧品開発において最も重要であると学ぶことができました。
ただ闇雲に配合量を決めてしまうと、クレンジングバームならまだわかりやすいですが、もっと複雑な乳液やクリームなどの乳化アイテムは、後々改良をするときに困ってしまうのです。
もう少し粘度を上げたいな。もう少ししっとりさせたいな。
でも何を変えれば一番影響が出るのか?
何が影響してこの使用感が出ているのか?
原因を見極めるのが非常に難しくなります。
そうすると軸がブレて色々なところに手を付けてしまい、余計にめちゃくちゃな処方になってしまうという悪循環に…
シンプルでかつ高品質な化粧品開発に必要なのは、軸をブレさせない為の基礎実験も非常に重要であるということなのですね!
一つ一つ順を追って実験をしていくことで、着々と完成に近づいていく…この感覚に非常にワクワクしたいろはね研究員なのでした。
いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓
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クレンジング開発の裏側①
皆さんこんにちは!いろはねです!
今回はクレンジング開発の裏側と題しまして、
クレンジングバームの開発時に学んだ重要なポイントについてまとめていきたいと思います。
クレンジングバームといえば、これまでも何度かブログに書かせていただいておりますが、液状のオイルをポリエチレンで固めた固形タイプのクレンジングというのが一般的になってきましたよね。
そしてオイルだけではなく、そこに界面活性剤が入ることによって、
水で洗い流されるときに乳化され、メイクが落ちるというメカニズムでした。
さて、このクレンジング開発に重要なポイントとは一体なんなのでしょうか…?
~其の一~
オイルと相性の良い界面活性剤を選択するべし!
化粧品の開発をする上で重要なポイント一つ目は、処方の肝となる成分同士の相性を見ることが非常に大切です。
クレンジングの場合であれば「オイル」と「界面活性剤」。
最低限この二つがなければクレンジングは成り立ちません。
つまり、これらの相性が良くなければ、メイクと馴染ませる時や
水で洗い流すときに上手く乳化せず、クレンジング力の低下につながります。
これでは品質に大きく影響してしまいますね。
〇どのように相性を見るのか?〇
①エステル油を用意する。(植物オイルがベースならそれを用意)
⇒私の時は、パルミチン酸エチルヘキシルというエステル油を使いました。
クレンジングオイルなどによく用いられるエステル油です。
②界面活性剤を2,3種類用意する。
⇒私の時は、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルとトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの二種類を用意しました。
ここでポイントとなるのが、同じ構造で重合度が異なる界面活性剤を選択することです。
そうすることによって、実験結果の比較がしやすくなります。(後にわかります!)
③オイルとそれぞれの界面活性剤を混合し、80℃まで加熱し、撹拌する。
この時必ず界面活性剤の配合量は統一して実験を行います。
④30℃まで冷却し、撹拌する。
⑤オイルに均一に界面活性剤が相溶しているかどうかを観察する。
⇒相溶は、濁りがなく、透き通った状態になるということです。
この状態になれば相性が良いということが分かります。
オイルと界面活性剤の相性が悪い場合は、上手く相溶せず、濁ってしまったり、分離してしまったりするため、ここの見極めが非常に重要となります。
私の時は、どちらの界面活性剤も綺麗に相溶し、相性が良いという結果が出た為、
次のステップへと進みました。
~其の二~
クレンジング力を比較するべし!
最初の実験で相性の良いオイルと界面活性剤の選別ができたところで、今度はクレンジング力テストを行います。
たとえ相性が良くてもクレンジング力がなければ話になりませんね。
特に私の時は、選択した界面活性剤2種類ともオイルとの相性が良かった為、尚更比較する必要がありました。
〇実験方法〇
①人工皮膚にメイク(ファンデーション・口紅・マスカラ)を均等に塗布する。
②まずはエステル油のみでクレンジング力を見る。
⇒まず、界面活性剤が入っているのと入っていないのとでは、どのように状態が違うのか?これを確かめる必要があります。
ちなみにこの時の結果は、エステル油のみだとメイクを溶かすことはできても
洗浄時ににじむだけで流れ落ちてはいきませんでした。
やはり界面活性剤の力がクレンジングには必要不可欠なのだということが改めてわかりました。
③相性の良いオイル+界面活性剤でクレンジング力を見る。
⇒エステル油のみでのクレンジング力を学んだところで、本題の実験ですね。
私の時は、ここで結果が分かれました。
クレンジング力を比較したところ、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの方が高かったのです!
特に洗浄後の落ちが良いという結果が出ました。
ここでついに、同じ構造の重合度が異なる界面活性剤を選択したことが活きてきます。
それではなぜ、クレンジング力に差が出たのでしょうか?
それはHLBの違いが関係しています。
HLBとは、Hydrophilic-Lipophilic Balance=親水性親油性バランスの頭文字を取ったもので、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示している数値です。
界面活性剤は、このHLBが低ければ疎水性、高ければ親水性、という基準を持っています。
そして今回使用した界面活性剤は…?
トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルが、HLB 3
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルが、HLB 8
つまり、クレンジング力の高かったトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルはHLBが親水性寄りであるため、洗浄後のメイク落ちが良かったのではないかという考察ができるのですね。
HLBの違いも知れたところで、実際に界面活性剤のみでも触ってみることにしました。
そうしますと、HLB通りの使用感を体験することができたのです。
・トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル
⇒洗い流すときにヌルヌル感がしばらく残る。
・トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
⇒洗い流した後はヌルヌルせずさっぱりしている。
やはり、親水性の高いトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの方が水と馴染みやすく、すっきりメイクを落とすことができるということなのですね。
これらの結果から、
クレンジング力の高さを重視⇒トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
クレンジング後の保湿力を重視⇒トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル
という位置づけで使用すれば良いのではないかということが分かりました。
私の時は、クレンジング力重視の案件でしたので、界面活性剤はトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルを選ぶことになりました。
まずはここまででやっと界面活性剤の選定が終わりましたので、さらに次のステップへと進んでいきます。
それはまた次回にいたしましょう!
今回もお読みくださりありがとうございました!
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CITE JAPAN 2021!
皆さんこんにちは!いろはねです!
先週は、化粧品業界にいる方にとっては2年に一度の大イベント…
CITE JAPAN 2021が5月19日(水)~5月21日(金)の3日間、横浜パシフィコで開催されましたね!
緊急事態宣言も5月末まで伸びてしまい、天候も雨模様と中々厳しい条件での開催だったと思いますが…出展された皆様、3日間お疲れ様でした!
今回私は人生で二度目の参加をさせていただきました。
始めてCITE JAPANに参加したときは、まだ化粧品技術者ではなく、
美容部員として働いていた為、非常に多くの化粧品原料や製造機器を初めて見て興奮していたのを覚えています。
あれから2年経ち、私は今ありがたいことに化粧品開発の現場にいます。
今の立場になってのCITE JAPANは初参加でしたので、また新たな気持ちで展示場を回ることができました。
果たしていろはね研究員は、技術者的な目線で展示会をめぐることができたのでしょうか!?(もちろんまだまだだと思っております)
今回のブログは、CITE JAPAN 2021において気づいたことや感じたことをまとめていきたいと思います。
レポートのような内容になってしまうかもしれませんが、皆様どうか温かい心で読んでいただければ幸いです。
それでは、本題へ参りましょう!
〇CITE JAPAN とは?〇
化粧品業界の方は知っていて当たり前なのですが、念のため…
CITE JAPAN(化粧品産業展)は、今年でちょうど10回目の開催でした!
主に化粧品、化粧品原料・香料、化粧品容器・パッケージ、製造装置・測定装置、受託試験・分析などなど…
化粧品産業において必要とされる分野の展示や技術発表がされ、様々な情報交換をすることのできる場です。
化粧品業界の人間は必ず行くと言って良いほどの大きな展示会です。
〇気づいたこと・感じたこと〇
今年の展示会はいくつかの共通点があるように感じました。
①コロナ禍に合わせた原料
もう1年以上もコロナウイルスに悩まされていますが、それによる生活環境の変化や肌ストレスは、大きく変わったように思います。
特にマスク生活やアルコール消毒が当たり前となり、私たちの肌は常に刺激を受けている状態ですよね。
そんな今のトレンドに合わせるように、展示でよく見かけたのは
・マスクダメージ軽減
・メイク崩れ防止
・ニキビ予防
・抗菌&除菌
・肌フローラ改善
などなど…
全てがコロナ禍によって今の私達が抱える問題にピッタリな商材で溢れていました。
マスク生活によるニキビトラブル、深刻ですよね。また、ニキビが発生する原因として、肌の常在菌のバランスが崩れることもありますので、それを整える成分であったり、そういうものに特化して展示がされていたように思います。
後は化粧品にも抗菌効果や除菌効果が求められているのか、植物の力で抗菌&除菌することのできる天然志向な化粧品原料などもありました。
②サスティナブルを意識
やっと日本でも浸透してきたサスティナブル。
私的に興味深かったのは、天然由来の1,3-ブチレングリコールや1,3-プロパンジオールです。
これらは保湿剤や防腐剤の補助剤として、よく化粧品に配合されている成分ですが、一般的に石油から作られているんですよね。
化粧品のベースとなる基剤達も次第に、石油由来から天然由来へと変わっていくのかなと同時に、それによってCO2削減を目指しているのだなと感じました。
世間のニーズも合成より天然、そういう認識になりつつあるので、今後需要はさらに高まっていくのではないかなと感じました。
③原料メーカー独自の高度な技術力
ナノ化技術や、簡単に乳化物ができてしまう原料などなど…
私達の技術力は必要なく、簡単に化粧品ができてしまう便利な原料も多くあるように感じました。
業界で差別化を図るために、各原料メーカーも高い技術力で勝負しているように見えました。
これらを使用すればもちろん低コストで安定性の高い商品の開発ができるのかもしれませんが、そればかりに頼ってしまっては、化粧品技術者としての力が衰えてしまいます。
非常に興味深い原料達でしたが、私はあまりそれらは使わない化粧品開発がしたいなと思いました。
展示会を回っていて、やはり展示会はその時代のトレンドがぎゅっと集結している。
各メーカーはいち早くそのトレンドに対してアクションを起こし、
展示会へ向けて新たなものを開発する。
コロナ禍によるダメージは各業界で深刻だとは思いますが、
それにどう立ち向かっていくのか、各メーカーから醸し出される「負けないぞ!」という情熱をひしひしと感じました。
ちなみにこれは余談ですが…
とある展示ブースに立ち寄ったところ、中学時代の同級生にばったりと会いまして、
非常に分かりやすいプレゼンをしてくださいました。
同世代もこうして活躍している!
私も負けてられないな!と刺激になったいろはね研究員なのでした。
他にも日本化粧品技術者会のセミナーにもお邪魔し、非常に学びに溢れた有意義な一日となりました。
また2年後のトレンドはどうなっているのでしょうか?開催が今から楽しみです。
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美容部員から化粧品開発者になって気づいたこと
皆さんこんにちは!
最近毎晩フェイスマスクでスペシャルケアをしているいろはねです!
毎日続けてもう2週間くらいが経過したのですが、
インナードライが解消されてきたのか皮脂の分泌量が減り、肌のもっちり感もアップ、
そのおかげで毛穴も少しずつ目立たなくなってきました。
やはりフェイスマスクは、うるおいチャージをするうえで効果的なんだなと改めて自分の肌で体感中です。
早くも梅雨入りが予想され、これから湿度の高い毎日が増えていきそうですが、
この毎晩フェイスマスクケアは欠かさず続けていこうと決心しました!
さて、今回は私にしか書けないかも?という内容でお送りしたいと思います。
題名の通り、美容部員だった頃の私と今の私、化粧品は何が一番重要なのか?
この認識が変わったなとふと思いまして…
しかも私と同じような経歴をお持ちの方ってほとんどいないんじゃないかな?
じゃあこの内容でブログを書いたら面白いかも!
ということで今回このような題名になりました。
一個人の意見・イメージですので、温かい心でさらっと読んでいただければ幸いです。
それでは早速参りましょう。
〇美容部員時代〇
美容部員はその化粧品メーカーの顔となる非常に重要な存在ですよね。
化粧品メーカーとお客様(ユーザー)の懸け橋になるような存在です。
今やネットで簡単に化粧品の購入ができる時代ですが、それでも美容部員の存在が必要不可欠なのは、人にしかできない、お客様の心に寄り添う接客ができるからなんですよね。
ネット上ではできない直接対面でお客様とお話をすることで、
その裏にある悩みや迷い、求めているものに気づき、ピッタリの化粧品を販売する。
とても素晴らしいお仕事だと思います。
恐縮ながら私もその一員として一時期お仕事をさせていただいておりましたが、
その時私が化粧品で最も重要だと思っていたのは「美容成分」でした。
非常に数多くの植物エキスやオイル…それらの底知れぬパワー。
それらを化粧品販売のキーポイントとして、お客様にも力説していた記憶があります。
「希少価値の高い〇〇エキスを配合し、これには高い抗酸化作用があるため美白効果やアンチエイジング効果につながります!肌のトーンアップをされたいとおっしゃられていたお客様にはぴったりだと思います!」
といったように、効果の高い美容成分を前面に出すような形でセールストークを繰り広げていました。
お客様も美容成分にはご興味がある方ばかりで、お悩み解消にピッタリだというお話をすると納得いただけることも多々ありました。
実際、市販の化粧品でもパッケージを見れば○○エキスが○○効果発揮!といった記載の仕方がよくされていますよね。
それだけ化粧品にとって美容成分は大切で、化粧品の肌効果を特徴付ける非常に重要な存在であると当時の私は思っていました。
もちろん他にも、使用感や香りなどなどお客様によって重視されるところは様々でしたけどね。
〇化粧品開発者になって〇
美容部員時代に私が化粧品で最も重要としていたのは、美容成分でしたが、
化粧品開発者になり、それだけじゃないな!ということに気づくことができました。
それは、「化学と肌の構造に基づいた美容理論」ですね。
もちろん美容成分は今でも非常に重要だと思っています。
しかし、それらがまだ配合されていないベース部分が非常に重要であるのではないかということに気づくことができたのです。
具体的にどのような部分が重要であることに気づいたのでしょうか?
今まで何度も書いてきていることなのですが…
肌の構造は非常に複雑であり、肌のうるおいを保持するために細胞間脂質が存在し、
それは脂質層と水分層がミルフィーユ状に交互に重なり合った構造をしています。
さらにそれを拡大すると、リン脂質と呼ばれる油と水両方の性質を持つ成分が規則正しく並び、構成されています。
つまり肌内部は油と水が両方存在している為、これらをバランスよくケアすることのできる化粧品が最も重要であるという認識に変化したのです。
これがいわゆる「化学と肌構造に基づいた美容理論」なのではないかと思っています。
このような美容理論に基づいた技術といえば、乳化やリポソーム技術ですね。
リポソーム技術については過去に記事を書いておりますので、ぜひご覧ください!↓
乳化は油と水の相反する成分を界面活性剤でつなぎ合わせて微細なエマルジョンにすることで、肌内部にうるおいと肌表面を油分で保護することのできるスキンケアですし、リポソームは細胞間脂質と同じような構造を持つカプセル型のナノ粒子で、
肌との相性が良く、肌内部に非常に浸透しやすい為、高い保湿効果が得られますよね。
それに美容成分を付属させることで、より高い効果が実現する、という認識に今は変わりました。
しかし、ずっと変わらないのはお客様の肌を美しくしたいという気持ちです。
このような経歴を持てて自分は幸せ者だと思い、これからも精進していきたいと思ったいろはね研究員なのでした。
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美容オイルの必要性
皆さんこんにちは!いろはねです!
最近紫外線がギラギラしてきましたね…
さすがに私も日傘を出しました。もう遅いぐらいかもしれません!
5月は1年の中でも紫外線が強い方なので、より一層警戒しなければなりませんね。
美白ケアも念入りに…ですね。
さて、今回は美容オイルについてお話していきたいなと思います。
私は普段美容オイルを使うことは少なく、真冬に肌がとっても乾燥した時にスペシャルケアとして使用しているのですが…皆さんはいかがでしょうか?
毎日欠かさず使用していますか?
それとも私と同じくスペシャルケアとして時々使用していますか?
美容オイルは、よくオーガニック系のコスメショップに行くと何種類も販売されているイメージです。
植物オイルがいくつかブレンドされているものや、
アルガンオイルやホホバオイルなど効果効能の高い有名な植物オイル単品で勝負!
といったアイテムをよく見かけます。
私は過去にサボテンオイルを見つけたことがありまして、
これは珍しい…と思い、気づいたら購入していたことがありました(笑)
個人的に美容オイルは、植物のパワーをダイレクトに肌で感じられるところが好きなので、もっとスキンケアの中心として位置づけられていてもおかしくはないと思うのですが、意外と影の存在のような気がします。
どうしても主役級スキンケアは化粧水、美容液、乳液、クリームになってしまいますよね。
となると美容オイルを普段使いしない方からしてみれば、本当にこれってスキンケアに必要なの?本当に効果があるの?といった疑問も生まれてきます。
ということで、今回は肌の構造とリンクさせて、美容オイルの必要性についてまとめていきたいと思います。
〇肌の構造と美容オイル〇
私達の肌は、細胞間脂質や皮脂膜などの油性成分があることで水分蒸散を防ぎ、肌内部のうるおいを保っています。そのため、油分を補うことは非常に重要なのです。
しかし、ここで勘違いしてはいけないのが、美容オイルは肌の中には浸透しないということです。
先程もお伝えした通り、肌のうるおい保持は細胞間脂質と皮脂膜が担っているため、
油分である美容オイルは肌との相性が良く、容易に浸透するのでは?
という考え、実は間違いなのです。
よくお料理をする際に、サラダ油が手についてずっとヌルヌルしていることはありませんか?あれは油分が浸透しないからなんですよね。
確かに時間をかけてなじませていくとヌルヌル感が消え、
あたかも浸透したかのように感じることもありますが、
あれはただ単に塗り広げたことによってオイルの厚みが減少し、
摩擦抵抗が高まっただけであり、実際は皮膚表面に浸透せず残っている状態です。
さらに、皮膚細胞はタンパク質で構成されており、それがびっしり規則正しく並び、
非常に複雑な構造をしています。
その為、しっかり油分と水分を両方バランス良く浸透させるためにはそれ相応の技術が必要となるのですね。
その技術が…乳液やクリームに必要不可欠である「乳化」です。
乳化は水と油の相反する物質同士をつなぎ、微細なエマルジョンにすることによって肌内部にうるおいを与え、肌表面をオイルで保護することができます。
つまり、乳液やクリームを使用すれば水分と油分をどちらも一度に補給することができるため、美容オイルはこれらのアイテムに比べて、影の存在となっているのではないかという見解です。
しかし、ここまでの話を踏まえますと…
肌質によって皮脂の分泌が元々されにくかったり、
アトピーや乾燥がひどく皮むけしてしまっている場合は、
肌内部のうるおい保持機能が低下してしまっているということになりますよね。
つまり、浸透はしないけれど、皮膚表面を覆って保護してくれる美容オイルを塗布すれば、元々少ない皮脂膜の役割を担ってくれる為、うるおい保持機能も向上しますね!
こうして肌の構造を改めて考えますと、シーンによっては美容オイルも非常に有効であると私は考えます。
じゃあ、肌が乾燥したらオイルを塗ればばっちりだね!
…ではありません。
オイルはあのヌルヌルベタベタ感もあって、保湿力があたかも高いように思いがちですが、水を呼ばない成分ですので、時間が経てばカピカピになり乾燥します。
グリセリンや糖類の方が周囲の水を呼び、時間が経ってもしっとりしているのですね。
モイスチュアライザーやヒューメクタントがこの部類です。
ですので、あくまで美容オイルを使用する際は、化粧水や美容液、乳液、クリームなどと併用して肌を保護してあげると最も効果を発揮してくれるのではないかと思います!
後は植物オイル自体の効果効能ですよね。
抗炎症・抗酸化効果や美白効果、シワ改善効果などなど、
植物の秘めたるパワーを得ることのできる美容オイル…
肌の構造を改めて整理するとその必要性がよりわかりますよね。
この記事を読んでくださった方が、その時の肌状態と相談しながら、
少しでも安心してスキンケアができますように…
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鉱物油は悪者なの?
皆さんこんにちは!いろはねです!
ゴールデンウイークはいかがお過ごしでしたでしょうか?
残念ながら緊急事態宣言とバッチリ重なってしまい、不自由な連休を過ごされた方、
予定を諦めざるを得なかった方、たくさんいらっしゃったかと思います。
早く心苦しい毎日から脱して自由な生活に戻りたいですね…!
休み明けで少し頭が寝ぼけているいろはねですが、ここでビシッと気を引き締めていきたいと思います。
さて、今回はまたガラッと話題を変えまして、鉱物油についてお話したいと思います。
皆さんは「鉱物油」と聞くとどんなイメージを持たれますか?
やはり、なんとなく肌に悪そう…と思われる方がほとんどかもしれませんね。
最近は鉱物油を使用せず、植物油をメインとした自然派な化粧品も多く、
それらには「鉱物油フリー」などの言葉が当たり前のように記載されていますよね。
では、なぜ鉱物油はあまり良いイメージを持たれていないのでしょうか?
鉱物油って肌に悪いんだ…で終わってしまっては化粧品技術者としてありえません。
なぜそのように言われているの?
実際のところ本当に肌に悪いの?
ここの辺りをしっかりと追求しなければなりませんよね。
ということで、今回はこれらについてまとめていきたいと思います。
〇鉱物油とは?〇
毎回おなじみ、基礎知識の復習から参ります!
鉱物油とは、石油から精製して得られる成分のことを指します。
化粧品の全成分表示においては、
ミネラルオイルやワセリン、パラフィン、流動パラフィンなどがこれに該当します。
鉱物油は嫌われていると言えど、どれも様々な化粧品に広く使用されています。
ちなみに、「石油から精製」というのは一体どういうことなのかと言いますと…
石油はそもそも、土壌から採掘された「原油」から不純物が取り除かれたもののことを指します。
つまり、地下で長い年月をかけて変化したもので、自然が生み出した産物なのです。
いわば、生物の化石燃料というところでしょうか。
これを沸点の低い成分から順に分離することを「分留」と呼び、
分留された成分達は、それぞれ様々な分野で活躍しています。
例えば沸点の低い成分は、主に燃料として使われており、
気体⇒メタンガス、プロパンガスなど
といった感じに分かれます。全部聞いたことのあるものですよね!
このように沸点の低い成分からどんどん分離されていき、沸点の高い成分が残されていきます。⇒精製
この沸点の高い成分が、化粧品にも使用されているミネラルオイルやワセリンなどなど…ということになるのですね。
〇鉱物油があまり良いイメージを持たれていない理由とは?〇
ここからが本題です。
ミネラルオイルやワセリンは、石油を分留して精製されていると書きました。
実は…
昔はまだこの精製技術が低く、本来は取り除かれているはずの沸点の低い成分達が不純物として残っていることがありました。
この沸点の低い成分というのは、炭素数(C)の少ない成分のことを指します。
この内、気体であるメタンガスやプロパンガスなどは、
前々回のブログにも書きましたが、
炭化水素の炭素数1からメタン<エタン<プロパン<ブタン<・・・
という風に化学名が決められていましたよね。
つまり、「メタン」ガス、「プロパン」ガスと、いずれも炭素数が1~3と少ないため、気化しやすく一番最初の方に分留されるのです。
この炭素数が少ない=分子が小さい=皮膚に浸透してしまう恐れがある
という関係性から不純物としてみなされ、
石油由来の鉱物油が危険視されてしまったのです。
〇今は安全なの?〇
安全と言われています!
現代では精製技術も格段に進歩し、化粧品に使用される鉱物油は、ほぼ100%に近い精製度で生み出されているのだそうです。
その技術もあってか、特にワセリンは「白色ワセリン」と呼ばれる医薬品の軟膏に使用されている成分もあります。
それほど、不純物のないピュアな成分であり、肌への刺激も少ないということですよね。
鉱物油は非常に安定性が高いというところがメリットなのです。
ただし、一つ懸念点が。
高沸点であり、炭素数の大きいミネラルオイルやワセリンだからこそ、
皮膚表面に留まって保護し、皮膚内の水分蒸散を防いでくれる為、
非常に重宝されているのですが…
皮膚表面に留まることで、毛穴を塞いでしまう場合もあるため、それによって肌トラブルを招いてしまう肌質の方は気を付けなければなりません。
ですが、鉱物油が入っているからと言って全て悪ということではなく、
良い所もあるんだな、ということは知っておいて損はないと思います!
それにしても石油って土壌から採掘しているわけですから、いつか枯渇してしまうのではないか?というのは気になるところです。
持続可能な開発目標として今流行りのSDGsに当てはめることはできませんね。
なるべく石油を使用しない技術が、これからどんどん増えていくのだろうなと思った
いろはね研究員なのでした。
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防腐剤フリーの秘密②
皆さんこんにちは!いろはねです!
今年のGWは昨年と同じお家時間を過ごすことになってしまいましたね…
私も楽しみにしていたフェスや東京へのお出かけは残念ですが諦めました。
後は、この世の中が普通の生活に戻るよう祈るしかありません。
しかし、お家でできる楽しいこともたくさんありますので、時間を無駄にせず過ごしたいと思います!
皆さんも楽しいお休みをお過ごしください!
さて、前回は化粧品に一般的に使用される防腐剤として、
まずはパラベンについてまとめさせていただきました。
今回はその続きになります。
②フェノキシエタノール
グリコールエーテルの一種で、主にグラム陰性菌(緑膿菌や大腸菌など)に対して強い活性を示す為、パラベン同様よく配合されています。
フェノキシエタノールを単体で配合するというよりかは、これらの菌に効かない防腐剤があるため、それらと組み合わさることで、より高い防腐力を叶えることができます。
フェノキシエタノールも薬事法に基づいた化粧品基準によって、配合上限が定められています。
1.粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの
2.粘膜に使用されることがない化粧品の内洗い流さないもの
3.粘膜に使用されることがある化粧品
上記のようなアイテムに対して、1%(100g中1.0g)と定められています。
③その他
これらはあまり配合されているのを見かけませんが列記しておきます。
・デヒドロ酢酸
水溶性のデヒドロ酢酸ナトリウムが挙げられます。
これはpHが低くなるほど(酸性度が高くなるほど)抗菌力が高くなる防腐剤です。
・安息香酸
水溶性の安息香酸ナトリウムが挙げられます。
食品や飲料の保存料・防腐剤としても使用されています。
こちらも酸性域で抗菌作用を示す特徴があります。
水溶性のソルビン酸カリウムが挙げられます。
食品や飲料の保存料・防腐剤としても使用されています。
こちらもpHが低くなるほど抗菌力が高くなる特徴があります。
食品や飲料の保存料・防腐剤としても使用されています。
さらに、殺菌効果や抗炎症効果、古い角質除去効果を持つため、
ニキビに効果的とされ、様々なニキビケアアイテムに配合されています。
などなど…以上が化粧品に配合されている防腐剤です。
私はパラベンとフェノキシエタノールにしか触れたことがありませんでしたので、
これだけの種類を上手く組み合わせることで化粧品の防腐効果が成り立っているのだなと感心いたしました。
さて、化粧品に使用される一般的な防腐剤について知識を深めたところで、
本題である防腐剤フリーの秘密へと迫りましょう!
〇防腐剤フリーの秘密〇
防腐剤フリーの化粧品は、どのようにして防腐効果を付与しているのでしょうか?
実は…
化粧品の保湿剤としてよく配合されている「多価アルコール」
これらは、微生物の活動を抑制する働きがあると言われ、防腐力を持っているのです!
そんな防腐剤としても活用される多価アルコールは、
・1,3-ブチレングリコール
・ペンチレングリコール
・1,2-ヘキサンジオール
・プロパンジオール
・カプリリルグリコール
・エチルヘキシルグリセリン
などが挙げられます。
〇防腐のメカニズム〇
<グリコール類>
上記で挙げた、ブチレングリコールやペンチレングリコール、
カプリリルグリコールなどのグリコール類は、自分自身を溶解させることで微生物から水分を奪い取る機能を持ちます。
これにより、体内の水分を奪われた微生物は生きる機能を失い、死滅します。
<アルコールの特性>
微生物の細胞膜は、細胞内の水分を守るため、油性であり、タンパク質で構成されているのですが、アルコールはこれを溶かす機能を持っています。
そして、前回パラベンのお話をした際に、炭素数が多いほど油性の性質が高くなるとお話しました。
上記で挙げた多価アルコール達は、炭素数が比較的多い成分になります。
(ペンチレングリコールは炭素数5、ヘキサンジオールは炭素数6…)
つまり、炭素数の多い多価アルコールは油性である微生物の細胞膜をより溶かしやすいのです。
これにより細胞膜を破壊された微生物は死滅し、防腐効果を得ることができるというわけです。
例えば、ペンチレングリコールと1,2-ヘキサンジオールまたはカプリリルグリコールを併用することによって相乗的に防腐効果を得ることができると言われています。
このように、保湿剤として多価アルコールをいくつか組み合わせて配合することによって、防腐効果も付与することができ、それにより防腐剤フリーを謳うことができるのです。
防腐剤フリーの化粧品を見つけたら全成分をぜひ見てみてください!
必ず上記で挙げたような多価アルコールがいくつか配合されているはずです。
ということで、防腐剤フリーの秘密が明かされたところですが、
これについては少し考えさせられるところがあります。
防腐剤と聞くとなんだか肌に悪そう…というイメージがどうしてもありますが、
防腐剤フリーが必ずしも肌にとって安全なのかというと、
実はそうとも言えないのが現実です。
上記で述べたように、多価アルコールはタンパク質でできた微生物の細胞膜を溶かすことによって防腐効果を持ちますが、
私達の皮膚細胞もタンパク質でできていますよね。
つまり、炭素数の大きい多価アルコールであればある程、皮膚刺激性が高いのです。
お肌が敏感な方はこの手の化粧品だと逆にピリピリと刺激を感じて使うことができないかもしれません。
さらに、パラベンやフェノキシエタノールは配合上限が1%でしたよね。
それに、実際配合するとしてもスキンケアであれば0.2~0.3%ほどの微量添加で十分効果を発揮してくれます。
対して、多価アルコールで防腐効果を付与するとなると、5~10%以上は配合する必要があるのです。
保湿効果の高い多価アルコールですが、あまりにも高配合であれば、使用感にも響きますし、先程述べたように皮膚刺激が心配です。
保湿効果と防腐力の両方も兼ね備えた万能な成分ですが、防腐剤フリーには様々なリスクがあったのですね。
肌に合う化粧品は本当に人それぞれなので、防腐剤フリーが決して「悪」というわけではありません。
個人個人の好みや肌状態を見て、慎重に化粧品を選んでいただきたいと思った、
いろはね研究員なのでした。
いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓
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