クレンジング開発の裏側①
皆さんこんにちは!いろはねです!
今回はクレンジング開発の裏側と題しまして、
クレンジングバームの開発時に学んだ重要なポイントについてまとめていきたいと思います。
クレンジングバームといえば、これまでも何度かブログに書かせていただいておりますが、液状のオイルをポリエチレンで固めた固形タイプのクレンジングというのが一般的になってきましたよね。
そしてオイルだけではなく、そこに界面活性剤が入ることによって、
水で洗い流されるときに乳化され、メイクが落ちるというメカニズムでした。
さて、このクレンジング開発に重要なポイントとは一体なんなのでしょうか…?
~其の一~
オイルと相性の良い界面活性剤を選択するべし!
化粧品の開発をする上で重要なポイント一つ目は、処方の肝となる成分同士の相性を見ることが非常に大切です。
クレンジングの場合であれば「オイル」と「界面活性剤」。
最低限この二つがなければクレンジングは成り立ちません。
つまり、これらの相性が良くなければ、メイクと馴染ませる時や
水で洗い流すときに上手く乳化せず、クレンジング力の低下につながります。
これでは品質に大きく影響してしまいますね。
〇どのように相性を見るのか?〇
①エステル油を用意する。(植物オイルがベースならそれを用意)
⇒私の時は、パルミチン酸エチルヘキシルというエステル油を使いました。
クレンジングオイルなどによく用いられるエステル油です。
②界面活性剤を2,3種類用意する。
⇒私の時は、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルとトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの二種類を用意しました。
ここでポイントとなるのが、同じ構造で重合度が異なる界面活性剤を選択することです。
そうすることによって、実験結果の比較がしやすくなります。(後にわかります!)
③オイルとそれぞれの界面活性剤を混合し、80℃まで加熱し、撹拌する。
この時必ず界面活性剤の配合量は統一して実験を行います。
④30℃まで冷却し、撹拌する。
⑤オイルに均一に界面活性剤が相溶しているかどうかを観察する。
⇒相溶は、濁りがなく、透き通った状態になるということです。
この状態になれば相性が良いということが分かります。
オイルと界面活性剤の相性が悪い場合は、上手く相溶せず、濁ってしまったり、分離してしまったりするため、ここの見極めが非常に重要となります。
私の時は、どちらの界面活性剤も綺麗に相溶し、相性が良いという結果が出た為、
次のステップへと進みました。
~其の二~
クレンジング力を比較するべし!
最初の実験で相性の良いオイルと界面活性剤の選別ができたところで、今度はクレンジング力テストを行います。
たとえ相性が良くてもクレンジング力がなければ話になりませんね。
特に私の時は、選択した界面活性剤2種類ともオイルとの相性が良かった為、尚更比較する必要がありました。
〇実験方法〇
①人工皮膚にメイク(ファンデーション・口紅・マスカラ)を均等に塗布する。
②まずはエステル油のみでクレンジング力を見る。
⇒まず、界面活性剤が入っているのと入っていないのとでは、どのように状態が違うのか?これを確かめる必要があります。
ちなみにこの時の結果は、エステル油のみだとメイクを溶かすことはできても
洗浄時ににじむだけで流れ落ちてはいきませんでした。
やはり界面活性剤の力がクレンジングには必要不可欠なのだということが改めてわかりました。
③相性の良いオイル+界面活性剤でクレンジング力を見る。
⇒エステル油のみでのクレンジング力を学んだところで、本題の実験ですね。
私の時は、ここで結果が分かれました。
クレンジング力を比較したところ、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの方が高かったのです!
特に洗浄後の落ちが良いという結果が出ました。
ここでついに、同じ構造の重合度が異なる界面活性剤を選択したことが活きてきます。
それではなぜ、クレンジング力に差が出たのでしょうか?
それはHLBの違いが関係しています。
HLBとは、Hydrophilic-Lipophilic Balance=親水性親油性バランスの頭文字を取ったもので、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示している数値です。
界面活性剤は、このHLBが低ければ疎水性、高ければ親水性、という基準を持っています。
そして今回使用した界面活性剤は…?
トリイソステアリン酸PEG-5グリセリルが、HLB 3
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルが、HLB 8
つまり、クレンジング力の高かったトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルはHLBが親水性寄りであるため、洗浄後のメイク落ちが良かったのではないかという考察ができるのですね。
HLBの違いも知れたところで、実際に界面活性剤のみでも触ってみることにしました。
そうしますと、HLB通りの使用感を体験することができたのです。
・トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル
⇒洗い流すときにヌルヌル感がしばらく残る。
・トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
⇒洗い流した後はヌルヌルせずさっぱりしている。
やはり、親水性の高いトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの方が水と馴染みやすく、すっきりメイクを落とすことができるということなのですね。
これらの結果から、
クレンジング力の高さを重視⇒トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
クレンジング後の保湿力を重視⇒トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル
という位置づけで使用すれば良いのではないかということが分かりました。
私の時は、クレンジング力重視の案件でしたので、界面活性剤はトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルを選ぶことになりました。
まずはここまででやっと界面活性剤の選定が終わりましたので、さらに次のステップへと進んでいきます。
それはまた次回にいたしましょう!
今回もお読みくださりありがとうございました!
いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓
化粧品のOEM依頼等はぜひこちらへ!
最後までお読みいただきありがとうございます!
下のバナーもクリックしてくださると嬉しいです。