新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

トリートメントを作りたい!

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

最近私は、初めてトリートメントの試作をやらせていただきました。

今も試作は継続中なのですが、トリートメントはケアの対象が毛髪であるため、

また新たな知識として色々とお勉強をさせていただいております。

今回はそんなトリートメントについて、お勉強のために基本的な知識や、

試作をしてみて感じたことなどをまとめていきたいと思います。

 

〇トリートメントとは?〇

改めて、トリートメントとはどのようなアイテムなのでしょうか?

トリートメントは英語で「処置・治療・手当て」という意味なのだそうです。

毛髪は硬ケラチンであり、いわば死んだタンパク質ですので、

一度損傷してしまえば自身で修復をすることはできません。

つまり、早くケアをしなければどんどん損傷がひどくなっていってしまうのですね。

トリートメントはそんな損傷してしまった毛髪を補修してくれたり、

損傷の進行を抑制・防止する効果があります。

 

〇トリートメントに欠かせない成分〇

カチオン界面活性剤

カチオン界面活性剤は水に溶けるとプラスに帯電する性質を持つ界面活性剤です。

そしてケアをしたい毛髪表面は、マイナスの電気を帯びているためプラスのカチオン界面活性剤が吸着しやすいのですね。

それにより以下のような効果が期待できます。

帯電防止

カチオン界面活性剤がマイナスに帯電した毛髪に吸着することによって、

静電気で広がるのを防ぎ、しっとりとしたまとまりのある状態へと導いてくれます。

毛髪がマイナスに帯電して反発し合うのを、プラスのカチオン界面活性剤が打ち消すようなイメージですね。

指通りの改善

カチオン界面活性剤が、トリートメントに配合されている油分と共に毛髪に吸着してくれる為、お湯ですすいでもギシギシせずに滑らかな指通りを実現することができます。

他にも、

毛髪の柔軟性向上

殺菌効果

などが挙げられます。

つまり、トリートメントは乳化しているとはいえ、スキンケアの乳液やクリームとは少しテイストが異なるのです。

乳液やクリームも、実際毛髪に付けたらしっとりしそうなイメージですよね。

しかし、このカチオン界面活性剤が配合されていなければ、

毛髪には何も吸着せず、全てがお湯と共に流れていってしまい、

指通りの悪いギシギシの状態にしかなりません。

この電気的な力が、毛髪に様々な良い影響を与えてくれていたのですね!

高級アルコール

高級アルコールとは、炭素数が6個以上の1価(-OH基が一つついている)のアルコールのことを言います。

私達はよくこれを乳化補助剤として使用することが多いですが、

トリートメントにとってはあのトロッとした粘度を出すために必要不可欠な成分となっています。

高級アルコールは、カチオン界面活性剤と組み合わさることで、ゲルを形成します。

このゲルは層状の構造となっていて、これがどんどん幾重にも重なり特殊なネットワークを形成します。

このネットワークが粘度を上昇させてくれる為、液だれしにくく使用しやすいトロッとしたトリートメントを作ることができるのです。

油分

カチオン界面活性剤と高級アルコールの力でゲルが形成されるため、

スキンケアのクリームとは異なり、少ない油分でも乳化することが可能です。

トリートメントに配合される油分は、ゲルの中に乳化粒子として分散され、それが毛髪に吸着し、ツヤやうるおいを与えてくれます。

主にシリコーンや植物性のオイルを使用していることが多いのではないでしょうか。

参考HP:化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ (sccj-ifscc.com)

 

〇実際に試作をしてみて〇

今まで綺麗に真っ白に乳化する乳液やクリームを見てきていたため、

最初にトリートメントの試作をした時は、その様子を見て少し不安になってしまいました…(汗)

処方の関係上油分が少ないということもあり、

乳化しているはずなのに薄めた牛乳みたいな見た目だし、

水みたいにサラサラで粘度がないし、これはきちんと乳化できているのだろうか…?

ちゃんと粘度出るのかな…?と色々不安になってしまったのですね。

冷却していくことで、最終的に粘度も出て形にはなったのですが、

乳化したものって、もっと濃厚でツヤツヤしてなかったっけ…?

とまだ私の脳内は自信のない様子。

結果、この試作品を打ち合わせで報告した時に、

やっとこれで良いんだということを知ったのと同時に、

あまりにも私が乳化アイテムの常識にとらわれすぎていたのだなということに気がづきました。

スキンケアとヘアケアはケアしたいところが違うからこそ、

視点もガラッと変えて観察していかなければなければいけませんし、

市販品をよくイメージして比較することも大切だなと感じました。

しかし、実際試作したトリートメントを使用した時、しっかり指通りも良くて、

ギシギシとした感触を感じなかった時、私は非常に感動しました。

中身の技術や知識を知ってから試作をして、実際に使用すると感動が一段とアップしますね!

さらに良いものができるよう、試作を引き続き頑張りたいと思います!

 

最後までお読みいただきありがとうございます! 

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マスキングの難しさ

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

さて、今回の話題は「マスキング」についてです。

化粧品において、香りは重要な要素の一つですよね。

敏感肌向けやナチュラル志向な化粧品ブランドは無香料を謳っているものの、

デパコスブランドは、効果やテクスチャーはもちろんのこと、

香りにもかなりこだわって商品開発がされているように感じます。

ユーザーの皆様も肌に塗布した瞬間、ふわっと香る心地よい香りを基準に化粧品を選ぶ、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか?

私たち化粧品OEMの技術者は、

例えばお客様からクリームにバラの香りをつけてほしいというご要望をいただいたら、

バラ精油やバラのような香りの合成香料をクリームへ添加し、

塗布した瞬間ふわっと香るように配合量の調整を行っています。

これがとっても難しく、実際香りの微調整だけで何度も試作をすることが多々あります…!

 

化粧品に香りをつける目的〇

ぶっちゃけたお話をしますと、香りってほんの少ししか配合しないし、

別にスキンケアをする上で、肌に直接効果があるわけではないし…

絶対に必要かと言われると、無くても良い存在なんですよね。

無香料の化粧品が世の中にたくさんあるのはそういうことです。

しかし、それでも香りをつけてほしいというお声をたくさんいただきます。

また、化粧品の口コミや宣伝などでも、「心地よい香りが…」などと

香りについて大きく取り上げられていることって結構ありますよね。

では、なぜそこまで化粧品に香りをつけることが重要視されているのでしょうか?

①使用時の心地よさの演出

香りは、脳や心に働きかける力があると言われています。

食欲をそそる香り、忘れていた遠い記憶を思い出す懐かしい香り、

森林浴で心が浄化されたり、思えば様々な力を私達にもたらしていますよね。

化粧品は主に皮膚や毛髪を健やかに保つために必要とされているため、

使用感や美容効果が最も重要視されるところですが、

そこへ香りがプラスされることにより、外側だけではなく、心に作用し、

内側からのケアが可能になります。

ストレスは肌に悪影響と言うように、化粧品を使って「良い香りで癒されるな…」と

心のケアに繋がることで、より美しい肌を手に入れることができますよね!

②ブランドイメージ

香りが与える印象って強いですよね。

例えば、柑橘系はエネルギッシュで若々しいイメージ、

ハーブ系は自然や癒しの力を彷彿とさせるような香りですし、

フローラル系は女性的なイメージです。

そんな香りのイメージを利用することもあります。

例えばメンズ向けブランドであれば、ウッディな香りやスパイシーな香りを中心に演出したり、オーガニックメインのブランドであれば、ハーブ系の香りでナチュラルさを演出したり…

コンセプトがはっきりしているブランドは香りにも特徴があるように感じます。

配合されている化粧品原料特有の「基剤臭」をカバーすること

これが最も重要なポイントだと思います。

原料によっては、元から独特の臭いであったり、継時変化で発生してしまったり、

香りをつけなければ不快に感じてしまう臭いがあります。

スキンケアは特に顔に付けるものなので、香りには敏感になりますよね。

あまりにも基剤臭が強ければ、使いたくない…と思ってしまうのも無理はありません。

それを上手くカバーする方法が、「マスキング」なのです。

 

〇マスキングとは?〇

覆う、かぶせる、隠すという意味になります。

手法としては、

基剤臭のするベースに香料を賦香することでその臭いをカバーするパターン

不快な臭いに似た香料で不快な臭いをカバーするパターン

などがあります。

上記でもお話した通り、私達がよく取る手法は①ですね。

②は、香りを知り尽くしたプロでなければ非常に難しいと思います。

香りは、非常に多くの「香気成分」と呼ばれるにおい分子が複雑に組み合わさることによって構成されています。

それらは、量やバランスがほんの少しでも異なると全く別の香りになってしまうほど非常に繊細です。

つまり②は、不快な臭いの香気成分がどのように構成されているのかをまず分析し、

さらにそれとほとんど同じもので構成されたマスキング用の香料を作り、

それが本当に効果があるのかを繰り返し試して初めて実現することができるのですね。

そう考えるとマスキング一つとっても非常に難しいことがわかります。

 

私もよく香料を賦香しますが、どこか香りとベースが別物でまとまりがない…

と感じることが多々あります。

また、人によって感じる、感じないが異なりますので、自分では上手くできたぞ!

と思ってもお客様にとってはもっと強く&弱くしてほしい…もっとこうしてほしい…

となることもしばしば。

ですので、その分達成感が非常にあります!

そして時々デパコスの高価な化粧品に触れると、非常にバランスが良く、

まとまりのある香りだなぁと感動します。

デパコスは基剤臭のするベースに合わせて上手くマスキングできる香料を綿密に開発しているはずですので、そこにもコストをかけているから高価。

ということなのでしょう。

今回まとめてみて改めて香りの分野は非常に奥深いなと痛感したいろはね研究員なのでした。

 

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泡立ち=洗浄力?

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

今回は花王さんのHPで面白い記事を見つけましたので、それについてお話していきたいと思います。

洗顔やボディソープにシャンプー…

皆さんは、これらにどのような機能を求めますか?

泡立ち?洗浄力?それとも泡切れの良さ?保湿力?

色々あると思いますが、中でも泡立ちの良さを求める意見はやはり多いのではないでしょうか?

泡立ちが良ければそれだけで汚れもスッキリ落ちたように感じますし、

もこもこの泡であればあるほど、使用時に充実感があります。

つまり、泡立ち=洗浄力と感じている方が多いと思うのです。

しかし、この関係って実際のところどうなのでしょうか?

それについてまとめてくださっていたのが、花王さんです。

花王さんの泡研究は、とても素晴らしいものでした…。

www.kao.com

 〇泡立ち=洗浄力ではない〇

実は、泡立ちの良さは直接洗浄力に関係しているわけではないらしいのです。

花王さんの記事にも書いてありますが、

「衣類用洗剤は非常に洗浄力は高いけれど、洗濯機の中が泡まみれになることはないですよね。」

確かにそうだな…

では何が洗浄力に寄与しているのでしょうか?

それが、界面活性剤なのですね。

皆さんもご存じの通り、界面活性剤は親水基と親油基を構造中に持っているんでしたよね。

この水にも油にも馴染みやすい機能が、水と汚れという相反するもの同士を繋げる役目を担ってくれています。

f:id:sawayaka0302:20211120102117p:plain

界面活性剤による洗浄のイメージ図

参考HP:日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識 洗濯

つまり、洗浄力は界面活性剤の力によって機能している為、泡とは直接関係がないということなのですね。

いくら泡立ちが良くても、界面活性剤のような汚れを浮かせて取りこむ力がなければ、結局汚れは落ちていかず残されたままになってしまいますよね。

 

〇なぜ泡立ちの良さが求められるのか?〇

洗浄力に関係していないのであれば、そこまで泡立ちの良さにこだわらなくても良いのではないか?と思いますよね。

しかし、ほとんどの洗顔やボディソープなどの洗浄系アイテムは泡立つように設計されています。

それは泡立ちの良さによって様々なメリットがあるからなのですね。

①肌への負担を減らしてくれる

洗顔をするときはしっかり泡立てた方が肌に負担が少ないと聞きます。

衣類用洗剤や食器用洗剤は、肌を洗浄するものではないため、もこもこの泡が立たなくても界面活性剤が汚れを十分に落としてくれます。

しかし、洗顔やボディソープなどは肌を洗浄する為、その負担を減らす優しさや心地よさが非常に重要となるのですね。

泡は肌と手の間にクッションとなって摩擦を低減してくれるからこそ、洗浄力と直接関係はなくても泡立ちの良さが重視されるのですね。

②密着性を高めてくれる

もし、シャンプーなどが衣類用洗剤のようにサラサラであまり泡立たなかった場合、頭につけてもすぐに流れ落ちてきてしまって上手く洗えませんよね。

いくら界面活性剤の力で汚れを落とすことができるとはいえ、落としたい汚れに直接作用できなければ意味がありません。

そういう時に泡立ちの良さが鍵になるのですね。

水で流したりへたったりしなければ、その場に密着してとどまってくれるところが泡が持つメリットの一つというわけです。

③付けたこと、落ちたことが一目でわかる

泡とともに洗浄できるのであれば、それがきちんと洗いたいところに付いて、しっかり落ちたと一目でわかる方が安心ですよね。

肌に付けて良いとはいえ、きちんと落とせていなければそれが肌トラブルに繋がることもあるので、重要な機能と言えます。

つまり、泡立ちはこれらのメリットがあるからこそ、ふわふわな泡やもちもちの泡、ぬるぬる残らない泡などアイテムやニーズに合わせて設計されていたのだなと知ることができました。

 

洗浄系アイテムは、

洗浄力=肌への刺激が強い

肌への刺激が少ない=洗浄力がイマイチ

というのが昔からの課題だったそうですが、

花王さんはそれを解決する新機能を発見しました。

それが「高密度泡なら勝手に油を吸引してくれる」という新機能!

つまり、高密度な泡なら洗浄力も高めることができるということ。

泡立ちは洗浄力と関りがないという常識を見事覆したのですね。

www.kao.com

この記事を読んだときに、洗浄力がマイルドなアミノ酸系界面活性剤でより高密度な泡を実現することができれば、市販の石けん系アイテムよりもさらに肌にマイルドで、

尚且つ洗浄力も高い、高機能なアイテムを生み出すことができるのではないか…?

と思ったいろはね研究員なのでした。

 

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ピーリングジェルの秘密③

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

ピーリングジェルのお話第3弾ですね!

前回はかなり化学的なお話になりました。

水溶性高分子であるカルボマーは、普段アルカリ剤を使用することで増粘させていますが、ピーリングジェルは代わりにカチオン界面活性剤を使用することによってジェルにしているとまとめました。

ではなぜ通常アルカリ剤の所をわざわざカチオン界面活性剤にする必要があったのでしょうか?

それは、これら二つの成分がピーリングジェルに欠かせないある機能を果たしているからなのです。

②ポロポロを出すため

ここが今回の内容で最も重要なポイントですね。

カルボマーとカチオン界面活性剤はピーリングジェルのポロポロを出すために必要不可欠である為、配合されているのです。

えっ?あのポロポロは角質なんじゃないの?

あのポロポロは、実は角質ではなくカルボマー自体がポロポロのカスとして出てきているだけなのです。

驚きですよね。私もこのメカニズムを知った時は衝撃でした。

まさかあのポロポロは角質じゃなかったなんて…

<ポロポロ発生のメカニズム>

ポロポロが角質ではなく、カルボマーだということはわかりました。

しかし、ここで疑問が生まれます。

なぜアルカリ剤で中和したジェルはポロポロが出ないのに、カチオン界面活性剤で中和したジェルは簡単に出てくるのか?

同じく中和して増粘しているはずなのに、この違いは一体何なのでしょうか?

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ポロポロ発生の謎

(ここからは実際私が試作を行って思いついた推測になってしまうのですが…)

これには電離度が関わっているのではないかと思いました。

電離度については以前詳しくブログにまとめさせていただいておりますのでそちらもぜひご覧ください!

sawayaka0302.hatenablog.com

電離度とは、水溶液中で電離する割合のことを言います。

この電離度が濃度によらずほぼ1に近い値になるのが、強酸や強アルカリなのですね。

これらは水溶液中でほぼ完全に電離してイオンに変化するため、一度反応したら、分かれたイオン同士が再びくっつくことはありません。

そして、よくカルボマーの中和に使用するアルカリ剤は水酸化カリウム水酸化ナトリウムなどの強アルカリでした。

つまり、カルボマーにアルカリ剤を使用した場合、ほぼ完全に電離するため一度中和したら元に戻ることはないですよね。

だから肌に馴染ませてもプルプルのジェルをキープできるのではないでしょうか。

ではカルボマーにカチオン界面活性剤を使用した場合はどうでしょうか?

おそらく、カルボマーとカチオン界面活性剤の関係は強アルカリほど強くないのではないかと思います。

つまり、ポロポロが発生するメカニズムはこんなストーリーかと…

まず、ピーリングジェルを肌にくるくるなじませていくと、徐々に水が蒸発していき、残ったカルボマーとカチオン界面活性剤の濃度が濃くなっていきますよね。

この濃度変化となじませる物理的な動作によって、一度電離したイオンがまた元に戻り、カルボマーの末端が-COOHになります。

そうすると、カルボマーが最初のクシャっと固まっていた状態に戻り、それがポロポロとして出てきているのではないのでしょうか?

これはあくまで私の推測になりますので、正しい答えがあれば教えていただきたいです!

ではなぜ私はこのような推測を立てたのでしょうか?

それはピーリングジェルの試作を失敗した話に繋がります。

〇ピーリングジェル試作時の失敗談〇

実はピーリングジェルってpHがかなり低いのです。

大体pH2~3とかでしょうか?かなり酸性ですよね。

カルボマーは水溶液にすると酸性を示す為、強アルカリで中和することによってpHを中性域に調整しているのですが、

ピーリングジェルはカチオン界面活性剤で中和しているため、pHはカルボマーの酸性がそのまま残っている形になります。

やはり顔に使用しますので、pHが低すぎるのはかなりリスキーですよね。

そこで、完成したピーリングジェルを水酸化ナトリウムでpH調整してみたのです。

そうしたら、一気にこのような状態に…!

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ピーリングジェルの失敗

上には白い塊が浮き、ジェルだったのがサラサラの水のような状態になってしまいました。

そして、この上に浮いている白い塊を触ってみたところ、あのポロポロと同じような質感だったのですね。

ということは、カチオン界面活性剤によって増粘していたカルボマーは、

強アルカリである水酸化ナトリウムが入ってきたことでその電気的な力に影響され、

カルボマーがクシャっとした状態に戻ってしまったのではないでしょうか。

そこで、ポロポロ発生のメカニズムには電離度が関わっているのではないか?と思ったのです。

 

カルボマーなどの水溶性高分子が配合された化粧品はたくさんありますが、

それらも条件が重なった場合は「ポリマーカス」と呼ばれるポロポロとしたものが発生することはあります。

それについては美里先生のブログが非常にわかりやすいです!

「ポリマーカス」が出るコスメのそのワケ | コスメあら!?カルト??

ピーリングジェルは普通のジェルよりもポロポロという名のポリマーカスがあえて出やすいような設計になっているということなのですね。

あのポロポロ自体は角質ではないということでしたが、

あれがスクラブのような働きをして、皮膚表面の汚れやざらつきを少し絡め取り、

後肌をツルツルにしてくれているのではないかと思います。

かと言って、皮膚が薄い方や赤みが出やすい方は刺激になる可能性が高いので、

使いすぎ&力の入れすぎは要注意ですね!

 

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ピーリングジェルの秘密②

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

前回はピーリングについてお話しさせていただきました。

ピーリングとは「角質ケア」のことで、皮膚表面の古い角質を取り除き、新たな皮膚の再生を促す美容法でしたね。

美容皮膚科・エステサロン・自宅などでケアができるとして、取り入れている方もいらっしゃるのではないかと思います。

前回は知識編でしたので、今回は本題となるピーリングジェルの秘密についてまとめていきたいと思います。

 

〇ピーリングジェルの基本構造〇

ピーリングジェルの全成分を見ますと、大体が水、グリセリンときて、

その後にカルボマーや○○ポリマーなどの水溶性高分子、そしてステアルトリモニウムクロリドなどのカチオン界面活性剤が並んでいます。

特にこの水溶性高分子とカチオン性成分がピーリングジェルに必要不可欠となる成分なのです。

…これだけの説明では、どういうこと?とまだイメージがわかない方もいらっしゃると思いますので、キー成分についてまずは簡単にご説明いたします。

<水溶性高分子とは?>

アルカリ剤との中和反応によってゲル化する増粘剤のことを指します。

化粧品のとろみを出したい時やジェルなどを作りたい時によく使用される成分です。

中でも特に、カルボキシビニルポリマー(略:カルボマー)が有名ですね。

<カチオン界面活性剤>

水に溶けた時に親水基が+の陽イオンになる界面活性剤のことを指します。

マイナスに帯電している毛髪に吸着するということから、よくシャンプーやコンディショナーなどのヘアケア商品に配合されており、毛髪の柔軟効果や帯電防止に役立つ成分として有名です。

また、中には抗菌作用を示すものもあり、殺菌・消毒剤のキー成分としても活躍しています。

 

ではなぜ、これらの成分がピーリングジェルに必要不可欠なのでしょうか?

ここにピーリングジェルの秘密が隠されています。

①ジェルにするため

ピーリング「ジェル」ですからね。

まさにこのジェルの部分を形作っているのが、この2成分なのです。

あれ?でもカルボマーってアルカリ剤で中和して増粘する成分だったよね?

アルカリ剤はいらないの…?と思いますよね。

そうです、本来はもちろんアルカリ剤が必要です。

しかし、ピーリングジェルはアルカリ剤がなくてもジェル状になっているんですね~。

一体なぜなのでしょう!

さて、ここからは化学的なお話になっていきます。

まず、カルボマーをアルカリ剤で中和したところでなぜ増粘するのか?というところが非常に重要です。

原料メーカーさんのイラストをお借りしてお話していきましょう。

参考HP:薬添グレード【カルボマー】|日光ケミカルズ|ケミナビ (chemical-navi.com)

カルボマーは、構造中にカルボキシル基(-COOH)という官能基を持った高重合な成分なのですが、最初は図のようにクシャクシャッと固まった状態で存在しています。

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カルボマー(最初の状態)

これを水に溶かします。

そうすると、クシャクシャになっていたカルボマーが水と接触することで少し緩みます。

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カルボマー(水に溶解後)

次にアルカリ剤(例えば水酸化ナトリウムなど)で中和をすると、カルボキシル基(-COOH)のHが取れ、-COO⁻になります。

マイナスのイオンが末端になることで、それらが磁石と同じように電気的に反発し合い、クシャクシャだった構造が外へと広がっていきます

そうすることで増粘するのですね。

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カルボマー(中和後)

これが、アルカリ剤で中和した場合のカルボマーの増粘メカニズムです。

これを知ると、マイナスイオンの反発、つまり電気的な反応で増粘していたんだなということが分かります。

そして、ついにここで登場するのがカチオン界面活性剤です。

ピーリングジェルを作る時、手順としてカルボマー水溶液の中にカチオン界面活性剤を添加するのですが、アルカリ剤で中和した時と同じようにジェルになるのです。

私も始めて見た時は驚きました。

「アルカリ剤で中和していないのにジェルになったぞ…!?」

そうなんです。

実はカチオン界面活性剤もカルボマーの中和剤として機能するのです!

カチオン界面活性剤は水に溶けると+の陽イオンになるんでしたよね。

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カチオン界面活性剤

参考HP:界面活性剤の主な性質と種類 (jp-surfactant.jp)
このカチオン界面活性剤をもう少し詳しく見ていきますと、イラストのように水に溶けることでマイナスのイオンを切り離し、自身はプラスに帯電するようになります。

この切り離されたマイナスのイオンと、カルボマーのカルボキシル基(-COOH)のH⁺がくっつくことで、カルボマーの末端は-COO⁻となります。

そうすることで、同じように-COO⁻のマイナスイオン部分同士が反発し合い、増粘するということなのですね。

む、難しい…!

ピーリングジェルってこんなにも化学的な反応で作られていたのですね。

 

②ポロポロを出すため

えっ…あれは角質が出てきているんじゃないの?

いえいえ。あのポロポロには実は、カルボマーとカチオン界面活性剤が大きく絡んでいるのです。

今回はピーリングジェルのジェルのメカニズムについて長くなってしまいましたので、ポロポロに関する詳しい内容はまた次回にいたします。

 

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ピーリングジェルの秘密①

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

そろそろ温泉に行きたいな…お鍋食べたいな…なんて思う季節になりました!

冬は寒くて辛いですが、美味しものや楽しいこともあるので今年も負けずに乗り切っていきたいですね!

 

さて、今回は題名の通り、ピーリングジェルの秘密についてお話ししていきたいと思います。

これに関しては、既にコスメに詳しい方々が記事にされているため、すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

私も少し前にピーリングジェルの案件をいただき、実際に試作することができたため、今回記事にさせていただきました。

それでは早速まいりましょう!

 

◯ピーリングとは?◯

まずはピーリングについて少し調べてみました。

皆さんはスキンケアにピーリングを取り入れたことはありますか?

私は高校生くらいの時に何度かピーリングジェルを使用しておりました。

あのポロポロが出た後に肌がツルツルになる感覚が病みつきになっていた記憶があります。

まずピーリングとは一般的に「角質ケア」の事を指します。

皮膚表面の古い角質を取り除き、新たな皮膚の再生を促す美容法とされています。

これには皮膚の代謝、ターンオーバーが関わってきます。

<ターンオーバーの仕組み>

おさらいも兼ねて、もう少し詳しく見ていきましょう。

ターンオーバーとは、肌の細胞が一定の周期で生まれ変わる仕組みの事でした。

肌の一番外側にある表皮で起こるんでしたよね。

表皮の構造は内側から、基底層・有棘層・顆粒層・角層と4層で構成されていましたね。

表皮細胞は、まず基底層で生まれ、少しずつ形や機能を変えながら有棘層、顆粒層、角層へと押し上げられていきます。

そして角層へたどり着いた細胞は、最終的に垢となって剥がれ落ちていく…この一連の流れが約1か月かけて肌の中で起きています。

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ターンオーバーのイメージ図

この周期が生活習慣の乱れや加齢などの原因で乱れてしまうと、様々な肌トラブルに繋がります。

つまりピーリングは、ターンオーバーの乱れによって排出されず残ってしまった古い皮膚(角質)を取り除き、つるつるの肌に生まれ変わらせてくれるということなのですね。

これにより、くすんでいた肌がクリアになったり、化粧ノリが良くなったりなどのメリットがあるようです。

そしてピーリングには、

①化学成分でやわらげて取り除く

②ゴマージュやスクラブ剤などの細かいツブツブを使用して物理的に取り除く

③ハーブピーリング

などの方法があります。

①はケミカルピーリングとも呼ばれるそうで、主に美容皮膚科さんなどで施術してもらうような本格的なピーリングです。

ちなみにどのようなピーリング剤があるのかと言いますと…

日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)というものに、グリコール酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸、乳酸などが挙げられておりました。

参考HP:ケミカルピーリング Q2 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会) (dermatol.or.jp)

②はエステサロンなどに導入されていたり、自宅でも手軽に使用できるゴマージュ洗顔や今回話題に取り上げているピーリングジェルなどがありますね。

③は植物由来のハーブや海藻由来の成分を使用して肌の再生を促す美容法だそうです。

棘状のものを肌に浸透させて細胞を刺激することで、皮膚の再生を促し、肌のキメを整えたり、ニキビ跡を目立たなくしてくれるそうです。

①や②が表面のケアであれば、③は肌の内側からのケアということになりますね。

こちらはだいたいエステサロンで施術されますが、自宅でできるキットなどもあるみたいですね。

 

さて、ピーリングについて知識が増えたところで、早速ピーリングジェルの秘密についてまとめていきたいところなのですが、長くなりそうなので次回にさせていただきます!

ピーリングジェルの秘密と共に、実際にピーリングジェルを作ってみて、触ってみて、失敗して…ドタバタないろはね研究員のお話も盛り込ませていただきます。

 

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身体の生理機能

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

最近気温がぐっと下がりましたね。

今年の季節は私の体感的に春、夏、冬って気分です。

あれっ…秋は一体何処へ…?

気温の変動が激しいので、皆さんどうかご自愛くださいませ。

 

さて、今回は身体の不思議!に迫ろうと思います。 

早速ですが皆さん、私達の肌はどのようにしてうるおいを保持していたでしょうか?

また、肌のうるおいといえばどのような成分をイメージしますか?

例えば…セラミドやNMF(天然保湿成分)などが有名ですよね。

特にセラミドはスキンケア成分としても非常に優秀です。

これらが存在しているのは、角層の細胞間脂質でしたよね。

細胞間脂質は脂質層と水分子の層がミルフィーユ状になっていて、

脂質層にセラミド、水分子の層にNMFが存在していました。

これらが肌のバリア機能や保湿機能を保っているんですよね。

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引用元:花王 | スキンケアナビ | 角層の細胞間脂質 (kao.com)

これだけでも本当に人間の身体はよくできているなと思います。

さて、ここまでは角層のお話。

今回はそのさらに奥深くにある、

「皮下組織」の面白い機能についてまとめていきたいと思います。

 

〇皮下組織について〇

先程もお伝えしましたが、うるおい保持といえばよく角層が取り上げられますよね。

しかし!

実は皮下組織も肌のうるおい保持に関わる機能を持つのです。

まずはその前に、皮下組織の特徴を簡単にまとめたいと思います。

皮下組織は、肌の表面から表皮⇒真皮ときて、最も内側に存在している組織です。

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引用元:花王 | スキンケアナビ | 皮下組織の構造と働き (kao.com)

機能としては主に、表皮と真皮を支えたり、動脈や静脈が通っているため、皮膚全体に栄養を届けたり、老廃物を運んだりしてくれています。

皮下組織は大部分が皮下脂肪で構成されています。

そして…

実はこの「皮下脂肪」がどうやら肌のうるおい保持に関与しているらしいのです。

その真相はいかに…?

 

〇皮下脂肪とうるおい保持の関係性とは?〇

これには皮膚細胞が持つ、排泄機能分泌機能に答えがあります。

日々皮膚細胞では、この排泄と分泌が同時に行われているそうで…

例えば体温調節のために汗腺から汗をかいたり保湿のために皮脂腺から皮脂を分泌したりすることなどが挙げられます。

特にこの皮脂分泌が、うるおい保持と関わっているのです。

皮脂の構成成分として、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレンなどが挙げられます。

この中の「トリグリセリド」という成分、あの有名な保湿成分に少し名前が似ていませんか?

そう…!「グリセリン」です!(ちょっと強引ですみません)

トリグリセリドは皮脂の主成分で、皮脂の約40%程度を占めているのだそうです。

そして、グリセリンに3つの脂肪酸が付いた構造であるため、トリグリセリドという名前になっています。

※1=モノ、2=ジ、3=トリ ←化学物質名でよく使われる言葉です。

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トリグリセリドの構造

このトリグリセリドは、皮脂として皮脂腺から分泌される過程でリパーゼと呼ばれる分解酵素によって順次分解されていきます。

<分解の流れ>

脂肪酸が1つ取れてジグリセリドとなる

②さらにもう1つ取れてモノグリセリドとなる

③それを経てグリセリンとなる

つまり、私たちは皮脂分泌の過程でグリセリンを生み出すことができるのです。

乾燥したら皮脂を分泌して肌表面をバリアし、内側は残ったグリセリンがうるおい保持するということですよね。

人間の身体は本当によくできているなとつくづく思います。

参考HP:化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ (sccj-ifscc.com)

 

ちなみに天然由来のオイル(植物オイルなど)の大半がこのトリグリセリドの状態で存在しています。

化粧品や食品などで多様に使われている原料としてのグリセリンは、植物オイルなどのトリグリセリドからグリセリン脂肪酸に分けられて精製されているのです。

化学的に精製しているのと同じことが、身体の中でナチュラルに起きているんですよね。

人間の身体ってまだまだ知らないところがたくさんあるなと感動した、いろはね研究員なのでした。

 

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