新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

実験はトライアンドエラーの繰り返し

 

皆様あけましておめでとうございます!

いろはねです!

本年もどうぞこのブログ共々よろしくお願いいたします。

さて、今回のブログは新年に相応しく、

2021年を振り返ったり、2022年の目標などを書いていきたいと思います。

 

2021年もコロナウイルスによる影響が大きい1年となりましたね。

各業界それぞれ、以前と同じような生活は困難な状況に追い込まれ、

業績が逆に上がった業界もあれば、非常に厳しい業界もあったのではないでしょうか。

化粧品業界が受けた打撃も中々に厳しいものだったとは思いますが、

そんな中でも、マスク生活に合わせたスキンケアやメイクアイテムがこの1年で次々開発され、日本のアイデア力と適応能力の高さに驚きと感動の連続でした。

そんな新たなアイテムが開発されていくのを見る度、

このアイテムは化粧品技術者達がどれだけ多くの実験を重ねたのだろうか…

ここにどのようなドラマや努力が隠されているのだろうか…

と考えるようになりました。

今まではただ単に、このアイテム使用感が気になるから使ってみようかな…

と自分目線な考えでした。

つまり、私も化粧品の技術者ながらにかなりユーザー目線で見ていたのですね。

弊社もこの1年は順風満帆とまではいきませんでしたが、

厳しい世の中だったのにも関わらず、新規のお客様からのご依頼も多く、

様々なアイテムの開発をさせていただくことができました。

本当に感謝しかありません。

もちろんその全てを形にすることができたわけではありませんが、

その中で新たな挑戦をすることができたり、

新たなデータを得て新たな発見をすることもありました。

そんな2021年はたくさん実験をして失敗をして…そこから学びを得てまた挑戦する。

それの繰り返しを経てやっと化粧品が完成する。

その道のりをより濃く見て実感することができた一年だったなと感じています。

お客様が求める化粧品、ユーザーの方がリピートして使いたいと思っていただけるような化粧品を作るには、失敗を恐れていてはいけないなとも思いました。

また、その失敗を周りのせいにしてしまうことは絶対してはならないということも。

特にコロナの影響が大きかったこの一年、上手くいかない時はそのせいにしてしまいがちでした。

しかし、その失敗から何が原因だったのかと反省をすることが非常に大事で、

それが学びとなり、次のステップへと繋がっていく。

厳しい状況にただ打ちのめされるのではなく、その状況をどのように打破すればよいのか…自分と向き合って考えることが本当のステップアップへの道だよな。

ということに気づかされた1年でもありました。

そういう意味で、化粧品技術者に必要な精神って、

・失敗を恐れないチャレンジ精神

・失敗から反省&学ぶこと

・何度失敗してもあきらめないこと

・同じ失敗を繰り返さないよう冷静に分析すること

なのだと思います。

あっでもこれって化粧品技術者だから、という話ではなく社会人として当たり前に持っていなくてはならない精神な気がしますね(笑)

(お恥ずかしい内容になってしまった…)

それはさておき…

私の欠点はどこか控え目で、あまりグイグイいかないところですので、

2022年はその殻を破り、失敗を恐れずガンガン挑戦していく1年にしていきたいなと思います。

 

新年一発目のブログは熱く語ってしまったような気がしますが…

暗いニューズに沈むばかりではなく、化粧品で明るい未来を作っていきたいものですね!

 

最後までお読みいただきありがとうございます! 

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クレンジングオイルは正直なのです

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

今回が2021年最後の記事になりますね!

(先程カレンダーを見て驚いたことは秘密にしておきましょう…)

またあっという間に一年が終わろうとしています。

毎年言っていますが、本当に毎日があっという間なんです。

このお仕事に就いてからもう丸2年が経ちましたが、まだまだ知らない事だらけです。

新しいことにチャレンジしたり、学んだり、毎日が新鮮です。

だからこそ、一年があっという間に感じるのでしょうね。

それだけ毎日が充実していたということでしょうか!素晴らしいことです!

そんな環境に置いていただけていることに日々感謝して、

来年も充実感のある一年にできたらいいなと思います。

 

「新しいことにチャレンジ」と言えば、

今クレンジングオイルを開発チームで手掛けているのですが、

これが中々に難しく、苦戦しておりまして…

実際、何に苦戦しているのかと言いますと…

①オイルの選定

②界面活性剤の選定

③相性の良いオイルと界面活性剤の組み合わせ

これが今私達が抱える大きな課題です。

なぜこれらがそんなにも難しいのでしょうか?

 

〇クレンジングオイルをイメージしてみよう〇

まず新しいものを開発する時は、

そのアイテムがどのように構成されているのかをイメージすることから始めます。

一般的なクレンジングオイルはだいたいこんなイメージ↓

f:id:sawayaka0302:20211218103129p:plain

クレンジングオイルのイメージ

こうして見ますと非常にシンプルですよね。

要はオイルと界面活性剤でクレンジングオイルは完成してしまうということです。

実はこのシンプルさが逆に仇となり、開発は苦戦を強いられることになります。

クレンジングオイルはメイクを落とす目的で界面活性剤を配合している為、

乳化目的の乳液やクリームと異なりその配合量は多いです。

その為、これらの特徴がダイレクトにメイク落ちや使用感にも出ます。

また、クレンジングオイルって見た目が透き通っていますよね。

あれはただ単にオイルが透き通っているからとかの話ではなく、

オイルと界面活性剤の相性の良さが確立されているからこその状態なのです。

実はこれらの相性が悪いと濁ってしまったり、混ざり合わず分離してしまったりと

相性の悪さが正直に出てしまうのが、クレンジングオイルなのです。

だから「クレンジングオイルは正直」ということなのですね。

非常にシンプルなアイテムであればある程、開発は難しい…!

 

〇オイルと界面活性剤の相性試験〇

先程から何度も話に出てくる「相性」ですが、

これには界面活性剤のHLBが大きく関わってきます。

HLBとはHydrophilic-Lipophilic Balance=親水性親油性バランスの頭文字を取ったものです

その範囲は0から20まで。

HLBが低い界面活性剤は、油に馴染みやすい親油性

HLBが高い界面活性剤は、水に馴染みやすい親水性

という位置づけでした。

オイルと界面活性剤で構成されているクレンジングオイルですから、

これらの相性試験が開発をする上で非常に重要となります。

基剤となるオイルを選定し、そこからそれに合う界面活性剤を選定していくのです。

これが個人的には非常に難しい所なのではないかなと感じています。

<あまりにもHLBが低い界面活性剤を選定してしまうと…>

HLBが低い界面活性剤は構造的に脂肪酸のボリュームが大きい為、

原料自体固形のものがほとんどです。

オイルと共に加熱すれば一旦は溶けますが、

相性が悪ければ室温へ戻したとき白く濁ってしまったり、

白い塊が発生してしまったりすることがあります。

<あまりにもHLBが高い界面活性剤を選定してしまうと…>

逆にこちらは液状のものがほとんどですが、

あまりにもHLBの高い界面活性剤ですと、性質がオイルとかけ離れていますので、

完全に混ざり合わずうっすらと層ができて分離してしまうのですね。

どちらもクレンジングオイルとしては好ましくない状態ですよね。

 

〇市販品から読み解く〇

上記でHLBのお話をしましたが、実験を行っていて中々良い結果が出ないと、

結局何が最も正しいのかわからなくなってきてしまうのですね。

そうなった時は、世に出ているクレンジングオイルの傾向を見るに限ります。

化粧品開発者は普段から当たり前にされていることかもしれませんが、

意外と実験に没頭していると周りが見えなくなってしまうことがあるのです。

実際に市販品を見てみますと、使用されている界面活性剤のHLBは7~12辺りが多かったです。

つまり、極端なHLBの界面活性剤はクレンジングオイルに不向きなのだなということが読み取れるのですね。

ここからまた相性試験のスタートとなるのです。

早く良い結果が出せるように引き続き頑張るのみです!

 

クレンジングオイルの開発に携わっていて、

化粧品はトライ&エラーを幾度も繰り返して完成されている。

だからこその達成感なのだということ再確認しています。

市販のクレンジングオイルも技術者達の度重なる苦労が裏にあるのだろうな…!

と商品自体の見る目が変わったいろはね研究員なのでした。

 

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スキンケアとリップケア

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

今年ももうすぐ終わりに近づいていますが、

この時期は何といっても「乾燥」が気になりますよね。

肌はもちろんのこと、体もボディクリームを塗らなければピリピリして痒くなったりしますので、保湿が命な今日この頃です。。。

保湿が命、といえば唇もですよね!

私の場合は季節問わず、1日に何度もリップを塗らないとカピカピに乾いてひび割れしてしまう程の超乾燥タイプですので、保湿ケアは必須です。

このように「保湿」というワードを出すだけで、どこをケアしたいのかがいくつも浮かんできますよね。

特にネットショッピングなんかはわかりやすいですが、

何か新しい化粧品買おうかな…と色々探す際、

スキンケア、ヘアケア、ボディケア、メイク関係など大きくカテゴリー分けされ、

欲しいアイテムが探しやすいようになっていますよね。

それだけ特定の部位をケアすることに特化したアイテムが、

世の中にたくさん生み出されているのだなということが分かります。

私はケアしたい所によって、それに合わせたアイテムを使用したい派なのですが、

ユーザーの方によっては、オールインワンゲルやリンスインシャンプーなど、

一つのアイテムで何役もこなしてくれるようなアイテムの方が手早くケアできて好き。

という方もいらっしゃいますよね。

これらのアイテムは非常に便利ですので、ニーズがあるのもうなずけます。

しかし、最も効果があるのはそれぞれの部位に合わせたケアアイテムを使用すること。

これに限ります。

なぜかと言いますと、部位によって皮膚の機能や構造が異なるからなんですよね。

つまり、私達化粧品技術者はそのこともしっかり知った上で化粧品開発を行っていく必要があります。

その中で個人的に知識不足だなと思ったのが、唇についてです。

よく観察してみれば、皮膚と唇って見た目が全然違いますよね。

皮膚は肌色で毛穴があるけど、唇は赤い色をしていて毛穴もない…。

同じ顔にあるパーツなのに、ここまで違うのも面白いですよね。

 

〇唇について〇

では、そんな唇について色々調べましたので、早速まとめていきたいと思います。

①唇の色が赤いのは人間だけ!?

唇は非常に角層が薄い為、肌の皮膚に比べて透明度が高いのだそうです。

そこに多くの毛細血管があるため、血液が透けて唇の色に反映されているのだとか。

唇の赤は血液の色だったのですね。

つまり、寒いときや具合が悪いときに唇が真っ青になるのは、血の巡りが悪くなり、

それがダイレクトに唇に現れていたからということなのですね。

②感覚が研ぎ澄まされている

温度や質感を感じる感覚神経が、手のひらの次に発達している為、

非常に敏感なパーツとも言われています。

③非常に乾燥しやすい

唇は非常に角層が薄いことから、皮脂腺が少なく汗腺もありません。

つまり、皮膚に比べてうるおいを守るバリア機能が低い為、水分がどんどん蒸発してしまいやすい構造をしています。

乾燥のスピードは、なんと頬の5倍とも言われています。

④ターンオーバーが短い

皮膚のターンオーバーは約28日と言われているのは有名ですが、

なんと唇のターンオーバーは約3.5日と非常に短いです。

そのため、様々な刺激に反応するとすぐに荒れ、あっという間に皮むけを引き起こしてしまいます。

それに伴って回復も皮膚より断然早いというところが非常に面白いです。

また、ターンオーバー(代謝)が活発な若い人ほど、皮むけや乾燥に悩む人が多いそうです。

ターンオーバーについては美里先生のブログが非常に面白いので是非!

フケも出なくなる”お年頃” | コスメあら!?カルト?? (cosmetic-web.jp)

⑤紫外線に弱い

角層が非常に薄いということは、メラニン色素も少ないということになります。

皮膚は紫外線ダメージから肌を守るために、メラニンを生成しますが、

メラニン色素の少ない唇はその防御機能が小さい為、紫外線に当たりすぎてしまうと荒れる原因になります。

<参考HP>

Kao PLAZA | 特集 | 不思議な器官、くちびる

化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ (sccj-ifscc.com)

 

〇唇の機能&構造を踏まえて〇

唇について色々と知ることができましたので、今度は実際リップケアアイテムを開発するとなった時、どこを重要視するべきなのでしょうか?

それについて個人的な見解をまとめていきます。

①テクスチャー

感覚神経が発達している唇は、非常に繊細だと思いますので、

心地よいテクスチャーを目指した開発が重要なのではないかなと思いました。

②保湿力

唇は皮脂腺や汗腺が発達していない分、水分が蒸発していかないように隠ぺい力の高い濃厚なしっとり感を追求する必要がありますね。

③紫外線対策

紫外線からの影響を受けやすいということでしたので、やはりUV対策がされているとより安心なのだなと感じました。

UV対策がされたリップが多く販売されている理由も納得です。

 

唇の機能と構造を知ると、スキンケアとリップケアのアイテムはそれぞれ異なるコンセプトで処方設計を行う必要があるなということを学びました。

今回のケースのように、使用する部位のことを知り尽くしていないと本当の化粧品開発はできないなと思ったいろはね研究員なのでした。

 

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トリートメントを作りたい!

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

最近私は、初めてトリートメントの試作をやらせていただきました。

今も試作は継続中なのですが、トリートメントはケアの対象が毛髪であるため、

また新たな知識として色々とお勉強をさせていただいております。

今回はそんなトリートメントについて、お勉強のために基本的な知識や、

試作をしてみて感じたことなどをまとめていきたいと思います。

 

〇トリートメントとは?〇

改めて、トリートメントとはどのようなアイテムなのでしょうか?

トリートメントは英語で「処置・治療・手当て」という意味なのだそうです。

毛髪は硬ケラチンであり、いわば死んだタンパク質ですので、

一度損傷してしまえば自身で修復をすることはできません。

つまり、早くケアをしなければどんどん損傷がひどくなっていってしまうのですね。

トリートメントはそんな損傷してしまった毛髪を補修してくれたり、

損傷の進行を抑制・防止する効果があります。

 

〇トリートメントに欠かせない成分〇

カチオン界面活性剤

カチオン界面活性剤は水に溶けるとプラスに帯電する性質を持つ界面活性剤です。

そしてケアをしたい毛髪表面は、マイナスの電気を帯びているためプラスのカチオン界面活性剤が吸着しやすいのですね。

それにより以下のような効果が期待できます。

帯電防止

カチオン界面活性剤がマイナスに帯電した毛髪に吸着することによって、

静電気で広がるのを防ぎ、しっとりとしたまとまりのある状態へと導いてくれます。

毛髪がマイナスに帯電して反発し合うのを、プラスのカチオン界面活性剤が打ち消すようなイメージですね。

指通りの改善

カチオン界面活性剤が、トリートメントに配合されている油分と共に毛髪に吸着してくれる為、お湯ですすいでもギシギシせずに滑らかな指通りを実現することができます。

他にも、

毛髪の柔軟性向上

殺菌効果

などが挙げられます。

つまり、トリートメントは乳化しているとはいえ、スキンケアの乳液やクリームとは少しテイストが異なるのです。

乳液やクリームも、実際毛髪に付けたらしっとりしそうなイメージですよね。

しかし、このカチオン界面活性剤が配合されていなければ、

毛髪には何も吸着せず、全てがお湯と共に流れていってしまい、

指通りの悪いギシギシの状態にしかなりません。

この電気的な力が、毛髪に様々な良い影響を与えてくれていたのですね!

高級アルコール

高級アルコールとは、炭素数が6個以上の1価(-OH基が一つついている)のアルコールのことを言います。

私達はよくこれを乳化補助剤として使用することが多いですが、

トリートメントにとってはあのトロッとした粘度を出すために必要不可欠な成分となっています。

高級アルコールは、カチオン界面活性剤と組み合わさることで、ゲルを形成します。

このゲルは層状の構造となっていて、これがどんどん幾重にも重なり特殊なネットワークを形成します。

このネットワークが粘度を上昇させてくれる為、液だれしにくく使用しやすいトロッとしたトリートメントを作ることができるのです。

油分

カチオン界面活性剤と高級アルコールの力でゲルが形成されるため、

スキンケアのクリームとは異なり、少ない油分でも乳化することが可能です。

トリートメントに配合される油分は、ゲルの中に乳化粒子として分散され、それが毛髪に吸着し、ツヤやうるおいを与えてくれます。

主にシリコーンや植物性のオイルを使用していることが多いのではないでしょうか。

参考HP:化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ (sccj-ifscc.com)

 

〇実際に試作をしてみて〇

今まで綺麗に真っ白に乳化する乳液やクリームを見てきていたため、

最初にトリートメントの試作をした時は、その様子を見て少し不安になってしまいました…(汗)

処方の関係上油分が少ないということもあり、

乳化しているはずなのに薄めた牛乳みたいな見た目だし、

水みたいにサラサラで粘度がないし、これはきちんと乳化できているのだろうか…?

ちゃんと粘度出るのかな…?と色々不安になってしまったのですね。

冷却していくことで、最終的に粘度も出て形にはなったのですが、

乳化したものって、もっと濃厚でツヤツヤしてなかったっけ…?

とまだ私の脳内は自信のない様子。

結果、この試作品を打ち合わせで報告した時に、

やっとこれで良いんだということを知ったのと同時に、

あまりにも私が乳化アイテムの常識にとらわれすぎていたのだなということに気がづきました。

スキンケアとヘアケアはケアしたいところが違うからこそ、

視点もガラッと変えて観察していかなければなければいけませんし、

市販品をよくイメージして比較することも大切だなと感じました。

しかし、実際試作したトリートメントを使用した時、しっかり指通りも良くて、

ギシギシとした感触を感じなかった時、私は非常に感動しました。

中身の技術や知識を知ってから試作をして、実際に使用すると感動が一段とアップしますね!

さらに良いものができるよう、試作を引き続き頑張りたいと思います!

 

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マスキングの難しさ

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

さて、今回の話題は「マスキング」についてです。

化粧品において、香りは重要な要素の一つですよね。

敏感肌向けやナチュラル志向な化粧品ブランドは無香料を謳っているものの、

デパコスブランドは、効果やテクスチャーはもちろんのこと、

香りにもかなりこだわって商品開発がされているように感じます。

ユーザーの皆様も肌に塗布した瞬間、ふわっと香る心地よい香りを基準に化粧品を選ぶ、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか?

私たち化粧品OEMの技術者は、

例えばお客様からクリームにバラの香りをつけてほしいというご要望をいただいたら、

バラ精油やバラのような香りの合成香料をクリームへ添加し、

塗布した瞬間ふわっと香るように配合量の調整を行っています。

これがとっても難しく、実際香りの微調整だけで何度も試作をすることが多々あります…!

 

化粧品に香りをつける目的〇

ぶっちゃけたお話をしますと、香りってほんの少ししか配合しないし、

別にスキンケアをする上で、肌に直接効果があるわけではないし…

絶対に必要かと言われると、無くても良い存在なんですよね。

無香料の化粧品が世の中にたくさんあるのはそういうことです。

しかし、それでも香りをつけてほしいというお声をたくさんいただきます。

また、化粧品の口コミや宣伝などでも、「心地よい香りが…」などと

香りについて大きく取り上げられていることって結構ありますよね。

では、なぜそこまで化粧品に香りをつけることが重要視されているのでしょうか?

①使用時の心地よさの演出

香りは、脳や心に働きかける力があると言われています。

食欲をそそる香り、忘れていた遠い記憶を思い出す懐かしい香り、

森林浴で心が浄化されたり、思えば様々な力を私達にもたらしていますよね。

化粧品は主に皮膚や毛髪を健やかに保つために必要とされているため、

使用感や美容効果が最も重要視されるところですが、

そこへ香りがプラスされることにより、外側だけではなく、心に作用し、

内側からのケアが可能になります。

ストレスは肌に悪影響と言うように、化粧品を使って「良い香りで癒されるな…」と

心のケアに繋がることで、より美しい肌を手に入れることができますよね!

②ブランドイメージ

香りが与える印象って強いですよね。

例えば、柑橘系はエネルギッシュで若々しいイメージ、

ハーブ系は自然や癒しの力を彷彿とさせるような香りですし、

フローラル系は女性的なイメージです。

そんな香りのイメージを利用することもあります。

例えばメンズ向けブランドであれば、ウッディな香りやスパイシーな香りを中心に演出したり、オーガニックメインのブランドであれば、ハーブ系の香りでナチュラルさを演出したり…

コンセプトがはっきりしているブランドは香りにも特徴があるように感じます。

配合されている化粧品原料特有の「基剤臭」をカバーすること

これが最も重要なポイントだと思います。

原料によっては、元から独特の臭いであったり、継時変化で発生してしまったり、

香りをつけなければ不快に感じてしまう臭いがあります。

スキンケアは特に顔に付けるものなので、香りには敏感になりますよね。

あまりにも基剤臭が強ければ、使いたくない…と思ってしまうのも無理はありません。

それを上手くカバーする方法が、「マスキング」なのです。

 

〇マスキングとは?〇

覆う、かぶせる、隠すという意味になります。

手法としては、

基剤臭のするベースに香料を賦香することでその臭いをカバーするパターン

不快な臭いに似た香料で不快な臭いをカバーするパターン

などがあります。

上記でもお話した通り、私達がよく取る手法は①ですね。

②は、香りを知り尽くしたプロでなければ非常に難しいと思います。

香りは、非常に多くの「香気成分」と呼ばれるにおい分子が複雑に組み合わさることによって構成されています。

それらは、量やバランスがほんの少しでも異なると全く別の香りになってしまうほど非常に繊細です。

つまり②は、不快な臭いの香気成分がどのように構成されているのかをまず分析し、

さらにそれとほとんど同じもので構成されたマスキング用の香料を作り、

それが本当に効果があるのかを繰り返し試して初めて実現することができるのですね。

そう考えるとマスキング一つとっても非常に難しいことがわかります。

 

私もよく香料を賦香しますが、どこか香りとベースが別物でまとまりがない…

と感じることが多々あります。

また、人によって感じる、感じないが異なりますので、自分では上手くできたぞ!

と思ってもお客様にとってはもっと強く&弱くしてほしい…もっとこうしてほしい…

となることもしばしば。

ですので、その分達成感が非常にあります!

そして時々デパコスの高価な化粧品に触れると、非常にバランスが良く、

まとまりのある香りだなぁと感動します。

デパコスは基剤臭のするベースに合わせて上手くマスキングできる香料を綿密に開発しているはずですので、そこにもコストをかけているから高価。

ということなのでしょう。

今回まとめてみて改めて香りの分野は非常に奥深いなと痛感したいろはね研究員なのでした。

 

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泡立ち=洗浄力?

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

今回は花王さんのHPで面白い記事を見つけましたので、それについてお話していきたいと思います。

洗顔やボディソープにシャンプー…

皆さんは、これらにどのような機能を求めますか?

泡立ち?洗浄力?それとも泡切れの良さ?保湿力?

色々あると思いますが、中でも泡立ちの良さを求める意見はやはり多いのではないでしょうか?

泡立ちが良ければそれだけで汚れもスッキリ落ちたように感じますし、

もこもこの泡であればあるほど、使用時に充実感があります。

つまり、泡立ち=洗浄力と感じている方が多いと思うのです。

しかし、この関係って実際のところどうなのでしょうか?

それについてまとめてくださっていたのが、花王さんです。

花王さんの泡研究は、とても素晴らしいものでした…。

www.kao.com

 〇泡立ち=洗浄力ではない〇

実は、泡立ちの良さは直接洗浄力に関係しているわけではないらしいのです。

花王さんの記事にも書いてありますが、

「衣類用洗剤は非常に洗浄力は高いけれど、洗濯機の中が泡まみれになることはないですよね。」

確かにそうだな…

では何が洗浄力に寄与しているのでしょうか?

それが、界面活性剤なのですね。

皆さんもご存じの通り、界面活性剤は親水基と親油基を構造中に持っているんでしたよね。

この水にも油にも馴染みやすい機能が、水と汚れという相反するもの同士を繋げる役目を担ってくれています。

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界面活性剤による洗浄のイメージ図

参考HP:日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識 洗濯

つまり、洗浄力は界面活性剤の力によって機能している為、泡とは直接関係がないということなのですね。

いくら泡立ちが良くても、界面活性剤のような汚れを浮かせて取りこむ力がなければ、結局汚れは落ちていかず残されたままになってしまいますよね。

 

〇なぜ泡立ちの良さが求められるのか?〇

洗浄力に関係していないのであれば、そこまで泡立ちの良さにこだわらなくても良いのではないか?と思いますよね。

しかし、ほとんどの洗顔やボディソープなどの洗浄系アイテムは泡立つように設計されています。

それは泡立ちの良さによって様々なメリットがあるからなのですね。

①肌への負担を減らしてくれる

洗顔をするときはしっかり泡立てた方が肌に負担が少ないと聞きます。

衣類用洗剤や食器用洗剤は、肌を洗浄するものではないため、もこもこの泡が立たなくても界面活性剤が汚れを十分に落としてくれます。

しかし、洗顔やボディソープなどは肌を洗浄する為、その負担を減らす優しさや心地よさが非常に重要となるのですね。

泡は肌と手の間にクッションとなって摩擦を低減してくれるからこそ、洗浄力と直接関係はなくても泡立ちの良さが重視されるのですね。

②密着性を高めてくれる

もし、シャンプーなどが衣類用洗剤のようにサラサラであまり泡立たなかった場合、頭につけてもすぐに流れ落ちてきてしまって上手く洗えませんよね。

いくら界面活性剤の力で汚れを落とすことができるとはいえ、落としたい汚れに直接作用できなければ意味がありません。

そういう時に泡立ちの良さが鍵になるのですね。

水で流したりへたったりしなければ、その場に密着してとどまってくれるところが泡が持つメリットの一つというわけです。

③付けたこと、落ちたことが一目でわかる

泡とともに洗浄できるのであれば、それがきちんと洗いたいところに付いて、しっかり落ちたと一目でわかる方が安心ですよね。

肌に付けて良いとはいえ、きちんと落とせていなければそれが肌トラブルに繋がることもあるので、重要な機能と言えます。

つまり、泡立ちはこれらのメリットがあるからこそ、ふわふわな泡やもちもちの泡、ぬるぬる残らない泡などアイテムやニーズに合わせて設計されていたのだなと知ることができました。

 

洗浄系アイテムは、

洗浄力=肌への刺激が強い

肌への刺激が少ない=洗浄力がイマイチ

というのが昔からの課題だったそうですが、

花王さんはそれを解決する新機能を発見しました。

それが「高密度泡なら勝手に油を吸引してくれる」という新機能!

つまり、高密度な泡なら洗浄力も高めることができるということ。

泡立ちは洗浄力と関りがないという常識を見事覆したのですね。

www.kao.com

この記事を読んだときに、洗浄力がマイルドなアミノ酸系界面活性剤でより高密度な泡を実現することができれば、市販の石けん系アイテムよりもさらに肌にマイルドで、

尚且つ洗浄力も高い、高機能なアイテムを生み出すことができるのではないか…?

と思ったいろはね研究員なのでした。

 

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ピーリングジェルの秘密③

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

ピーリングジェルのお話第3弾ですね!

前回はかなり化学的なお話になりました。

水溶性高分子であるカルボマーは、普段アルカリ剤を使用することで増粘させていますが、ピーリングジェルは代わりにカチオン界面活性剤を使用することによってジェルにしているとまとめました。

ではなぜ通常アルカリ剤の所をわざわざカチオン界面活性剤にする必要があったのでしょうか?

それは、これら二つの成分がピーリングジェルに欠かせないある機能を果たしているからなのです。

②ポロポロを出すため

ここが今回の内容で最も重要なポイントですね。

カルボマーとカチオン界面活性剤はピーリングジェルのポロポロを出すために必要不可欠である為、配合されているのです。

えっ?あのポロポロは角質なんじゃないの?

あのポロポロは、実は角質ではなくカルボマー自体がポロポロのカスとして出てきているだけなのです。

驚きですよね。私もこのメカニズムを知った時は衝撃でした。

まさかあのポロポロは角質じゃなかったなんて…

<ポロポロ発生のメカニズム>

ポロポロが角質ではなく、カルボマーだということはわかりました。

しかし、ここで疑問が生まれます。

なぜアルカリ剤で中和したジェルはポロポロが出ないのに、カチオン界面活性剤で中和したジェルは簡単に出てくるのか?

同じく中和して増粘しているはずなのに、この違いは一体何なのでしょうか?

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ポロポロ発生の謎

(ここからは実際私が試作を行って思いついた推測になってしまうのですが…)

これには電離度が関わっているのではないかと思いました。

電離度については以前詳しくブログにまとめさせていただいておりますのでそちらもぜひご覧ください!

sawayaka0302.hatenablog.com

電離度とは、水溶液中で電離する割合のことを言います。

この電離度が濃度によらずほぼ1に近い値になるのが、強酸や強アルカリなのですね。

これらは水溶液中でほぼ完全に電離してイオンに変化するため、一度反応したら、分かれたイオン同士が再びくっつくことはありません。

そして、よくカルボマーの中和に使用するアルカリ剤は水酸化カリウム水酸化ナトリウムなどの強アルカリでした。

つまり、カルボマーにアルカリ剤を使用した場合、ほぼ完全に電離するため一度中和したら元に戻ることはないですよね。

だから肌に馴染ませてもプルプルのジェルをキープできるのではないでしょうか。

ではカルボマーにカチオン界面活性剤を使用した場合はどうでしょうか?

おそらく、カルボマーとカチオン界面活性剤の関係は強アルカリほど強くないのではないかと思います。

つまり、ポロポロが発生するメカニズムはこんなストーリーかと…

まず、ピーリングジェルを肌にくるくるなじませていくと、徐々に水が蒸発していき、残ったカルボマーとカチオン界面活性剤の濃度が濃くなっていきますよね。

この濃度変化となじませる物理的な動作によって、一度電離したイオンがまた元に戻り、カルボマーの末端が-COOHになります。

そうすると、カルボマーが最初のクシャっと固まっていた状態に戻り、それがポロポロとして出てきているのではないのでしょうか?

これはあくまで私の推測になりますので、正しい答えがあれば教えていただきたいです!

ではなぜ私はこのような推測を立てたのでしょうか?

それはピーリングジェルの試作を失敗した話に繋がります。

〇ピーリングジェル試作時の失敗談〇

実はピーリングジェルってpHがかなり低いのです。

大体pH2~3とかでしょうか?かなり酸性ですよね。

カルボマーは水溶液にすると酸性を示す為、強アルカリで中和することによってpHを中性域に調整しているのですが、

ピーリングジェルはカチオン界面活性剤で中和しているため、pHはカルボマーの酸性がそのまま残っている形になります。

やはり顔に使用しますので、pHが低すぎるのはかなりリスキーですよね。

そこで、完成したピーリングジェルを水酸化ナトリウムでpH調整してみたのです。

そうしたら、一気にこのような状態に…!

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ピーリングジェルの失敗

上には白い塊が浮き、ジェルだったのがサラサラの水のような状態になってしまいました。

そして、この上に浮いている白い塊を触ってみたところ、あのポロポロと同じような質感だったのですね。

ということは、カチオン界面活性剤によって増粘していたカルボマーは、

強アルカリである水酸化ナトリウムが入ってきたことでその電気的な力に影響され、

カルボマーがクシャっとした状態に戻ってしまったのではないでしょうか。

そこで、ポロポロ発生のメカニズムには電離度が関わっているのではないか?と思ったのです。

 

カルボマーなどの水溶性高分子が配合された化粧品はたくさんありますが、

それらも条件が重なった場合は「ポリマーカス」と呼ばれるポロポロとしたものが発生することはあります。

それについては美里先生のブログが非常にわかりやすいです!

「ポリマーカス」が出るコスメのそのワケ | コスメあら!?カルト??

ピーリングジェルは普通のジェルよりもポロポロという名のポリマーカスがあえて出やすいような設計になっているということなのですね。

あのポロポロ自体は角質ではないということでしたが、

あれがスクラブのような働きをして、皮膚表面の汚れやざらつきを少し絡め取り、

後肌をツルツルにしてくれているのではないかと思います。

かと言って、皮膚が薄い方や赤みが出やすい方は刺激になる可能性が高いので、

使いすぎ&力の入れすぎは要注意ですね!

 

最後までお読みいただきありがとうございます! 

いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓

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