新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

一人前のコスメ技術者を目指すいろはね研究員のリアルな日常をお届け

縁の下の力持ち?①

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

新年度が始まりもう一週間が経ちました。早い!

新入生、新社会人の皆さんは、きっと何もかもが新鮮で、めまぐるしい毎日を過ごされていることでしょう。

そういう意味では、春って新しい出会いの季節でもありますよね。

自分の限られた人生で出会えた人って本当に運命を感じます。

なんてったって日本の人口は1億2000万人くらいですからね!

出会いやご縁は大切にしていきたいなと思う今日この頃です。

 

さて、本題に入りましょう!

皆さんは普段化粧品を購入される時、どんなところに重点を置きますか?

自分の肌に合いそうなもの?機能性の高いもの?高価なもの?

パッケージやデザイン、ブランドに惹かれて?など非常に様々ですよね。

他にも美容成分に惹かれて購入した、なんて経験もあるのではないでしょうか?

「希少な○○エキスを豊富に配合し、高いアンチエイジング効果をもたらします」

など…パンフレットや説明文に記載されていること、よくありますよね。

私も美容部員時代は、使用感と美容成分が全てというイメージでした。

機能性の高さや使用感の良さと共に、希少価値の高い美容成分のお話もセットにし、

お客様にピッタリの化粧品を提案していました。

こうして考えると、化粧品の第一印象って決まっていて、

ブランドイメージやパッケージから始まり、次にテクスチャーや美容効果など…

これらに注目しがちですよね。

もちろん化粧品を形作る上で非常に重要なポイントなのですが。

でも実は、化粧品にとって必要不可欠なのに、あまり表舞台には出てこない…

そんな縁の下の力持ち達がいるのをご存じでしょうか?

今回はこの子達にスポットライトを当てたい…!

ということで、早速まとめていきたいと思います。

 

〇縁の下の力持ち達とは?〇

一体どのような面々なのでしょうか?ご紹介いたしましょう。

(※現時点での私の経験則から挙げているので、他にもある場合はぜひ教えていただきたいです!)

防腐剤

酸化防止剤

pH調整剤

pH緩衝剤

増粘剤(乳化安定剤としても機能)

 

でしょうか。

業界の方ならおなじみのラインナップだとは思いますが、

ユーザーの皆さんはいかがでしょうか?

最近は防腐剤フリー、○○フリーという謳い文句の化粧品をよく見かけますので、

それでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。

では、それぞれの機能について簡単にまとめていきたいと思います。

 

防腐剤

これについては、以前こんな記事もアップしておりますので、ぜひ。↓

sawayaka0302.hatenablog.com

sawayaka0302.hatenablog.com

防腐剤は読んで字のごとく、細菌やカビの発生を防止し、

化粧品の腐敗を防ぐ安定剤ですね。

化粧品の品質を維持するために非常に重要な存在です。

もし、化粧品に防腐剤が入っていなかったら、カビが生えたり、変色してしまったり、

危険な菌が増えてそれが肌に付着し、二次汚染へとつながってしまったり…

様々な問題が生じますので、とにかく菌から化粧品を守らなければなりません。

そして、世の中には非常に多くの菌が存在しますよね。

細菌類、カビ、グラム陰性菌グラム陽性菌酵母などなど。

これだけ多いと防腐剤の種類によっては、この菌には対応できるけれど、

この菌には対応できないといった差が生じてきます。

そのため化粧品の処方開発においては、すべての菌に対応できるよう、複数の防腐剤を組み合わせて配合しています。

このノウハウもかなり重要です。

 

酸化防止剤

これは主に油剤が配合されている化粧品には必要不可欠な存在です。

乳液やクリーム、クレンジングオイル、美容オイルなど…

油剤が使われている化粧品も今では多種多様ですよね。

このような化粧品には、植物オイルや界面活性剤、香料など、空気に触れることで酸化しやすい成分が多く配合されています。

まさにこの酸化を防ぐのが酸化防止剤です。

この酸化、酸敗とも言われるそうですが、侮れません。

製品においては、特有の不快なにおいが発生したり、変色の原因となったり、

品質の安定性にかなり影響を及ぼします。

肌においては、この酸化によって生じる過酸化物が刺激物質となるので、

肌を美しくする化粧品が逆に悪影響を与えてしまう代物になってしまうのです。

また、肌の酸化は老化の要因!というのはよく聞く話。

酸化防止剤は化粧品自体の酸化を防ぐだけではなく、肌自体の酸化も防いでくれますので、そういう効果の付与としても使える万能な子なのです。

 

縁の下の力持ちとして、特にこの2つは化粧品に必ず必要な存在です。

残りの3つも大切なのですが、こちらは次回に持ち越します。

それにしても、化粧品の開発をしていると、今まで見えていなかった部分もクリアになってきて、奥が深いなとつくづく感じます。

今回の話題もそうですよね。

微量しか配合されていないけれど、これらがいないと化粧品の品質を維持することはできない。化粧品を完成させることもできない。

決して表舞台には出ないけれど、だからこそ私達化粧品技術者がこの部分をおろそかにしてはならないのだなと切に思う、いろはね研究員なのでした。

 

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クレンジングバームの今

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

今、近所の桜が満開です!週末はカメラを片手に近所を徘徊しておりました。

きっととても怪しかったことでしょう…

カメラのフォルダがピンクでいっぱいになると幸せな気持ちになります。

年度が変わり、心も心機一転!

新たな一年間のスタート、張り切っていきましょう!

 

さて前回は、バームの基礎実験についてまとめさせていただきました。

バームを作る為には、オイルを固形化する必要があり、一般的にはワセリンやミツロウ、シアバターを使います。

しかし、そうではない技術もあると最後の方に書かせていただきました。

今回は、その技術とクレンジングバームを絡めてまとめていきたいと思います。

 

皆さんはクレンジングバーム、使ったことはありますか?

 

私は何度かあるのですが、非常に面白い使用感ですよね!

最初はガチっと固まっているのに、手に取って伸ばすとトロッととろけて肌に馴染んでいく…

最初に使ったとき、これは面白い!と感動したのを覚えています。

また、クレンジングオイル並みにメイク落ちもスピーディーで、とても良いんですよね。

でも、後肌はそこまで突っ張らず、しっとり。

特に美容部員時代はメイクが非常に濃かった為、重宝しておりました。

今はデュオさんに始まり、大手コスメブランドさんのクレンジングバームなど、ドラックストアにまで、色々な種類が出ていますよね。

もはやクレンジングバームは一つのカテゴリーとして、化粧品業界にかなり浸透しているなと感じます。

そんな最近よく見かけるクレンジングバームですが、全成分を見ますと、一つの共通点があるのです。

そこにオイルを固形化させているもう一つの技術が隠されていました。

 

〇今のクレンジングバーム〇

全成分表示の共通点は、ズバリポリエチレンです。

これがオイルを固形化するために必要不可欠な成分となっています。

皆さんもぜひ、クレンジングバームをお手に取った時は全成分を確認してみてください。

ポリエチレンは、プラスチックの中の一つを指します。

ナフサと呼ばれる原油から作られ、加工しやすい特長を持っている為、日本の全プラスチック生産量のうち約25%を占めているのだそうです。

これが化粧品に…?と驚きますよね。

このポリエチレンはオイルに溶解すると、冷却される過程で架橋構造を形成し、

オイルを固形化します。

自分でイメージ図を作ってみました。拙いイラストですが…

f:id:sawayaka0302:20210327095920p:plain

オイル固形化イメージ図

このイラストを踏まえてもう一度整理しますと…

※このイラストはあくまでイメージです。

ポリエチレンが配合されたタイプのクレンジングバームは、

単純に温度の下降によってオイルを固形化させるワセリンやミツロウなどとは異なり、溶解されて一度バラバラになったポリエチレンのポリマー同士が冷却の過程で連結され、架橋構造を形成することによって、オイルを固形化するということだったのですね。

この特殊な構造をしているからこそ、スパチュラで取った時のあのサクサクッとした独特の感触が生まれるのですね。

つまり、一般的なワセリンやミツロウタイプのバームは温度によって溶けて肌に伸びていきますが、ポリエチレンタイプは塗布時の圧力によって架橋構造が崩れて伸びていくというメカニズムなのです。

 

ちなみにこれ、よーく考えますと、ポリエチレンタイプは温度によって固まっているわけではないので、高温耐性も高いということに気が付いたでしょうか?

ワセリンやミツロウタイプは、バームの温度がこれらの融点に達してしまうとドロッと溶けて柔らかくなってしまう欠点があります。

しかし、ポリエチレンタイプはそうではなく、過酷な温度にも耐えられる設計になっているのですね。

さすがにあまりにもポリエチレンの配合量が少なければ、架橋構造がうまく形成できずにゆるゆるの状態になってしまいますが。

このバーム技術については、歴史も交えて専門的にまとめられている、美里さんのブログが非常に参考になりますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください!

 

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今回話題にしたポリエチレンは、

環境に悪いということも一部界隈では言われていますが、

こうして見ると、バーム界においては革新的な存在となっているのではないでしょうか?

色々な意見や情報が世の中飛び交っていますが、機能性重視なユーザーさんもいれば、

ナチュラル志向なユーザーさんもいます。

それぞれのニーズにどう当てはめて化粧品開発をしていくのかというのも非常に重要ですよね。

ユーザーさんが化粧品に求めるニーズは、今非常に高く、多様化しているように思います。

クレンジングバームはそういう意味でも今のユーザーさんのニーズにグッと刺さる、

画期的なアイテムだったからこそ、一つのカテゴリーとして確立されるほどにまで存在が大きくなったのかなと思いました!

化粧品開発はそういう意味でも奥深いお仕事だなと日々感じている、いろはね研究員なのでした。

 

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バームの基礎実験

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

最近朝晩はまだ少し肌寒い時もありますが、昼間はぽかぽかとした春の陽気に包まれて、晴れている日は気持ちが良いですね。

春の風物詩の一つと言えば、桜!これから次々と咲き始めるでしょう。

もう咲いているところもあるのでしょうか?

とってもとっても待ち遠しいです。

 

さて、皆さんは「バーム」と聞くと何が思い浮かびますか?

最近であればもう、ほとんどの方がクレンジングバームを思い浮かべるかもしれません。

ちなみに、バーム系コスメは他にもありますよね。

唇の乾燥を防ぎ、うるおいから守ってくれるリップバーム

髪のパサつきなどを防ぎ、ツヤとまとまりのある髪へと導くヘアバーム

液体が漏れる心配もなく、柔らかな香り立ちを表現してくれる練り香水

最近はマルチバームと呼ばれる、一つで顔&髪&ボディ&唇など様々な箇所の保湿ができてしまう優れものまで、非常に多くのアイテムがありますよね。

バーム系コスメの市場はこれからもっと賑わっていくのでしょうか?

最近は「バーム」という言葉、だいぶ浸透していますもんね。

そして、なんといってもバームの面白いところは、最初はガチッと固まっているのに、

肌へ塗布すると瞬時にトロッととろけてオイルのように軽く伸びていく、あの独特の感触。

そんな最近人気であるバームの基礎実験を少し前に行いましたので、

一体どのような実験を行ったのか、今回はそれについてまとめていきたいと思います!

 

〇バームとは?〇

毎回おなじみ、まずは基本的な知識から!

バーム、バーム…と口にはしていますが、一体どのようなものなのでしょうか?

バームは、オイルが主成分となり、水分はほとんど含んでいません。

このオイルが固形化され、軟膏のような状態になっている化粧品をバームとしているそうです。

主成分がオイルなので、効果としては皮膚の保護&柔軟、バリア機能を高めたりしてくれます。

上記でもお話しましたが、バームは常温では固形ですが、皮膚温によって瞬時にとろけて、瞬時に保湿&ケアできるところが大きな特徴です。

この独特な感触を叶えるのに最も重要となるのが、オイルを固形化する技術なのです。

 

〇オイルを固形化するには?〇

一般的には、ワセリンやシアバター、ミツロウなどの融点の高い成分を配合し、オイルを固形化しています。

ワセリンは、よく軟膏にも配合されている、石油由来の保湿剤です。

石油由来と言っても、石油から様々な不純物を取り除き、しっかりと精製された保湿剤なので、肌に悪影響を与える心配はありません。

特に、精製度が非常に高い白色ワセリンは薬局などに売っているほど、安全と言われています。

アバターは、西アフリカから中央アフリカに生息するシアの木の実から採取される植物性油脂です。

ミツロウは、ミツバチが巣を構成する材料として、働きバチの腹部にある分泌腺から分泌させるロウを精製したものを言います。

ワセリンは、融点が36~60℃

アバターは、融点が36~39℃

ミツロウは、融点が62~65℃

とされているので、どちらも常温では半固形~固形の状態で存在していることになります。

そのため、これらをある程度配合することによって、常温でサラサラな状態のオイルを固形化することができるのですね!

 

〇バームの基礎実験〇

ということで、本題に入ります。

上記で挙げた、一般的にオイルを固形化させる3種類の成分。

これらを実際どのくらい配合すればオイルが固まるのか、それは実験しなければわかりません。

あまりにも柔らかすぎてはバームとして意味がありませんし、硬すぎても上手くとろけていかず品質としてよろしくありません。

そしてなにより、温度で溶けるタイプのバームは温度耐性が命。

夏場の高温な環境下でも固形を維持できる状態に整えて最終製品にしなければなりません。

これらを見越して私たちは基礎実験を行います。

私が今回の実験に使用したのは「ミツロウ」でした。

実験方法は…

①オイルの中にミツロウを2%添加する。

②オイルを加熱し、ミツロウを溶かす。

③それを室温下に静置し、冷却。様子を見る。

④①~③をオイルがある程度固まる状態になるまで繰り返す。

⑤オイルがある程度固まるようになったら、さらに高温耐性試験も同時に進める。

⑥冷却して固めたものを、40℃の環境下へ数時間静置させる。

⑦取り出して観察する。

この時点で溶けていたり、柔らかくなっているようであれば、高温耐性が不足しているということなので、またミツロウを2%添加していく。

40℃の環境下でも溶けずにしっかりと硬さが維持できるようになれば、そこで試験終了。

この工程を踏むことによって、オイルを固形化させるために必要となるミツロウの配合量を導き出すことができ、これが安定的な処方開発へと繋がります。

今回の基礎実験では、最初サラサラだったオイルが固形化していく過程をしっかり観察することができました。

そして、オイルを固形化させることはそんなに容易ではない。

バームを作るだけでも様々なことを考え、実験を行っていく必要があることを知りました。

実験の裏側では、高温耐性試験の際に、おっ!今回は固まってる!

これなら大丈夫か?とビーカーを傾けるとドロッ…ととたんに固まっていたのが崩れておっとっと…

なんて危ないシーンもありました(笑)

 

今回は取り上げませんでしたが、最近はオイルを固形化させる技術として、もっと安定的なものが存在します。

ワセリンやシアバター、ミツロウなどを使用したバームは、温度によって溶ける仕組みですが、もう一つの技術はそうではないのです!

一体どんな技術なのでしょうか?

それはまた、他の記事でまとめたいと思っています。

 

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pHの謎②

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

前回はpHの謎と題しまして、温泉水には酸性やアルカリ性があるけれど、触れても肌が火傷してしまったりしないよね?これはなぜなのだろう?

という話題から、まずはpHについて復習をするため、基本的なことについてまとめさせていただきました。

詳細はこちらをぜひご覧になってください。↓

sawayaka0302.hatenablog.com

そしてついに今回は、本題であるpHの謎に迫ります。

前回も最後の方に書かせていただきましたが、温泉水以外にも日常生活でお世話になっている酸性やアルカリ性のアイテムがありましたね。

酸性・・・レモン、お酢など

アルカリ性・・・石けん水、洗剤など

これらのpHも、

レモンは約2.0お酢約2.7

石けん水は約9~11台所用洗剤は約6.0~8.0衣類用洗剤は約8.0~11.0

というように、数値的に見ればけっこう酸性、アルカリ性ですよね。

普段口にしたり、肌に触れたりしますが、特に影響はありませんよね。

では逆に、肌に触れてしまっては危険だと言われているのは、

酸性・・・塩酸、硫酸など

アルカリ性・・・水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど

これらは濃い溶液であれば、

極端に酸性はpH1アルカリ性はpH12くらいになります。

おや…?

これ、pH1.2の酸性温泉やpH11以上のアルカリ性温泉とそんなに差がないような…

ということはつまり、pHの数値が高い低いだけで肌に影響が出るわけではないということなのでしょうか?

そうなんです!

皆さんは、強酸」「弱酸」「強アルカリ」「弱アルカリという言葉をどこかで耳にされたことはありませんか?

これらが実は、pHの謎を解く大きなキーワードとなっているのです。

一体どういう意味なのでしょうか?

それではここからまた、化学的なお話に入っていきます。

(恥ずかしながら、私はこの辺りもよく混乱してしまうので、この場をお借りして、改めてお勉強です)

〇強酸・弱酸&強アルカリ・弱アルカリの違いとは?〇

これには電離度というものが大きく関わっています。

まず、水に溶けるとプラスのイオン(陽イオン)、マイナスのイオン(陰イオン)に分かれ、電気を流す物質のこと電解質と呼びます。

そしてこの電解質が、水溶液中で電離する割合のことを電離度としています。

※電離・・・電解質がプラスのイオン(陽イオン)とマイナスのイオン(陰イオン)に分かれること

※電離度は、水溶液の濃度や温度によって変わります。

f:id:sawayaka0302:20210313092916p:plain

電離度を導き出す式

そして、この電離度が濃度によらずほぼ1に近い値になる酸のことを強酸と言います。

例として塩酸(HCL)を挙げましょう。

塩酸の化学反応式は下記のようになります。

f:id:sawayaka0302:20210313093930p:plain

塩酸の化学反応式

塩酸のような強酸は、ほぼ完全に電離しイオンに変化します。

そのため、反応式は→の表記になります。

逆に、水溶液中でごく一部しか電離せず、電離度が1より極めて小さい酸のことを弱酸と言います。

例としてお酢の主成分である酢酸(CH3COOH)を挙げましょう。

酢酸の化学反応式は下記のようになります。

f:id:sawayaka0302:20210313095340p:plain

酢酸の化学反応式

弱酸は、電離度がかなり小さいので、イオンになりにくく、別れたイオンが再びくっつくことがあります。

そのため弱酸の反応式は⇄の表記になります。

ということで、電離度の大きさによって強酸と弱酸に分けられるということだったのですね。

これは強アルカリ・弱アルカリも同様です。

 

ちなみに、pHは溶液中の水素イオン濃度のことでしたよね。

つまり、上記で示した化学反応が実際に水溶液中で起こり、水素イオン(H⁺)が発生し、その濃度がpH値として出ているということだったのですね。

さらに理解が深まりました!

 

そして、電離度についてはこんな一覧表を見つけました。

f:id:sawayaka0302:20210313101051p:plain

電離度

この表を見ますと、上記で説明した電離度の違いが一目でわかります。

やはり、強酸と強アルカリは電離度が1に近く

弱酸と弱アルカリは電離度がかなり小さい数値となっています。

こうして比較すると、強と弱で10倍、100倍も電離度に差がありますよね。

たとえpH(水素イオン濃度)が同じだったとしても、この電離度が10倍、100倍も異なることで、刺激が出るor出ないが決まってくるということなのですね。

さらに強酸・強アルカリは、水溶液中で完全にイオン化するわけですから、反応性が高いということが言えます。

この反応性の高さが、肌へ影響を与える要因なのではないかと考えられます。

つまり、肌に害のない酸性やアルカリ性のものは、すべて弱酸や弱アルカリの部類に入るということですね!

あれ…?温泉水は?

と思った方!温泉水は少し見方が違います。

温泉水は長い時間をかけて鉱石から溶け出したマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分を豊富に含んでいます。

これらに反応して、pHが極端な数値となるのです。

なので、温泉水もpHがどんなに高くても低くても、肌への刺激は少ないということになりますよね。

 

〇pHの謎…その答えとは?〇

化学的で難しいことばかりでしたので、最後に結論をまとめたいと思います。

pHの高い・低いが肌へ刺激を与えるわけではない。

③電離度の違いが、強酸・弱酸、強アルカリ・弱アルカリを分ける。

④強酸・強アルカリは水溶液中で完全にイオン化し、電離度はだいたい1。

⑤弱酸・弱アルカリは水溶液中で完全にイオン化はせず、電離度は極めて低い。(強酸・強アルカリの約1/10~約1/100)

⑤電離度の高い強酸、強アルカリは水溶液中で完全にイオン化するため、反応性が高く、肌へ大きな刺激を与える。

⑥日常生活で害のない酸性やアルカリ性のアイテムは、弱酸や弱アルカリの部類であるため、肌への刺激は少ない。

⑦温泉水のpHは、豊富に含まれるミネラル物質に反応して出ていた為、肌への刺激は少ない。

よって、危険な酸性&アルカリ性物質は含まれているわけではない。

以上です!

pHは化粧品の品質を維持するためにも必要不可欠な項目です。

その根幹に触れ、謎も解決することができ、すっきりしたいろはね研究員なのでした。

 

参考HP:

 強酸と弱酸まとめ・見分け方 | 理系ラボ (rikeilabo.com)

5分でわかる!「強酸」と「 弱酸」の違いを元家庭教師が解説 - Study-Z ドラゴン桜と学ぶWebマガジン (study-z.net)

 

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pHの謎①

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

3月に入り、春の陽気に移り変わりつつありますね。

早くぽかぽかとした毎日を過ごしたいものです!

しかし、強風が吹き荒れる春先はホコリや花粉、PM2.5などが飛び交うので、

肌荒れに注意したい今日この頃です。

そういう点ではマスク生活もあながち悪くないのかもしれません。

 

さて、今回は題名の通り「pH」について、化学的なお話をしていきたいと思います。

私はお恥ずかしながら、この手の話になるとよく混乱してしまうのですが…

化粧品技術者として一人前になるためにはこの分野も知っていて当たり前!

この場をお借りして、しっかりと頭にインプットしたいと思います。

では、なぜこのような話題にしたのかと言いますと、

前回のブログで私は温泉水についてまとめさせていただきました。

日本にはアルカリ性や酸性の温泉が数多く存在し、肌や身体に様々な良い効果をもたらしてくれると。

温泉水もアルカリ性であれば平均7.5~10以上酸性であれば平均2未満~6未満でしたね。

アルカリ性、酸性と言えば、皆さんも過去に化学の授業で、

水酸化ナトリウムは触ると肌が溶けるから危ないよ!

硫酸は肌が火傷するから危ないよ!と言われてきませんでしたか?

そう、pHが高いもの(アルカリ性)、低いもの(酸性)は危険だと教わったはず。

温泉水もそこだけ見れば、pH10以上や2未満なんてかなり極端な数値ですし、

今までの概念であれば、肌が溶けたり大やけどしてしまう危険な数値ですよね!?

でも、温泉水は大丈夫なんだよなぁ。

今までは何気なく入っていた温泉ですが、

温泉水コスメの開発において色々経験したことで、この謎が非常に引っかかりました。

この部分とリンクさせてまとめたいなと思い、今回このような話題になりました。

それでは早速参りましょう。

 

〇pHとは?〇

まずはしっかりと頭にインプットするため、復習も兼ねて基本的なことから色々と調べました。

pHのことは皆さん「ピーエイチ」?それとも「ペーハー」?どちらで読まれますか?

これを答えると年齢とかがだいたいわかってしまいそうですね…(笑)

…すみません。それはさておき。

pHとは、溶液中の水素イオン濃度の量を表してくれています。

一般的に数値は1~14までで、真ん中の7が中性とされています。

つまり、pHが7より小さいと酸性」、7より大きいとアルカリ性となります。

そして、水素イオンとはH̟⁺のことです。

これは、純粋な水H2Oが下記の式のようにイオンに分かれた際に発生するのだそうです。

f:id:sawayaka0302:20210306084736p:plain

水素イオン濃度の発生

参考URL:pHはなぜ測定するの? | 鈴研株式会社 (suzuken-ltd.co.jp)

このように、純粋な水の中には水素イオン「H⁺」と水酸化物イオン「OH̠⁻」が同じ量存在していて、この二つのバランスが等しい状態であればpH7の中性を示します。

だから水は中性なのですね。

つまり、水素イオン「H⁺」と水酸化物イオン「OH⁻」のどちらかが多くなったり少なくなったりすることで、酸性なのか、アルカリ性なのかがわかのですね。

イメージとしては…

f:id:sawayaka0302:20210306090246p:plain

酸性とアルカリ性のイメージ

上の図のように、

水素イオン「H⁺」が多ければ、pHは低くなり、酸性

水酸化物イオン「OH⁻」が多ければ、pHは高くなり、アルカリ性

ということになります。

参考URL:pHとは | 日本水処理工業株式会社 (mizu-shori.com)

よし、pHについてまとまってきたぞ…!

そして、ここからさらに化学的なお話に入ります。

一つ目のイラストに、10000000分の1モル/Lという表記があると思いますが、

これも非常に重要です。

この「モル」については、説明すると私が混乱しかねないので、ここでは割愛させていただきます…ご了承ください。

「モル」は濃度を表す単位とだけ、ここでは言わせていただきます。

10000000分の1モル/Lについてですが、

正確には、純粋な水1Lの中には、1atm(大気圧)・25℃の時、

水素イオンが10000000分の1モル存在しているということなのだそうです。

でも、この10000000ってものすごく読みづらいですよね。

なので、この数字を107」(10を7回掛ける、10の7乗という意味)と書き換え、107分の1モル/Lとし、この7を使ってpH7と表現するのです。

ということは、pH1であれば水素イオン濃度は101分の1モルということになりますよね。

つまり、pHの水素イオン濃度は10の乗数によって数値が算出されているということになりますね。

pH〇の、〇の部分はただの数字なのに、そこにこんな深い意味があったんですね。

非常に良い復習になりました。

ここまでまとめればpHは大丈夫でしょう!

 

〇pHの謎〇

pHの基本的な知識を得たところで、本題であるpHの謎に迫りましょう。

温泉水以外にも酸性とアルカリ性の一般的な物といえば…

酸性・・・レモン、お酢など

アルカリ性・・・石けん水、洗剤など

でしょうか?

これらのpHも確か…

レモンはpHが約2.0お酢約2.7

石けん水は約9~11台所用洗剤は約6.0~8.0衣類用洗剤は約8.0~11.0

このように、温泉水だけではなく、私達が普段口にしたり、触れているものでさえ、

pHが両極端なものは存在します。

でも、私達には特になーんにも害はありませんよね?

ましてや非常にお世話になっているアイテムばかりです。

ここがやっぱり不思議なところ。

どうやらphの数値だけで肌に影響があると決めつけてしまうのは間違いということですね。その答えとは一体…?

これについては次回にしたいと思います。

今週もお読みいただきありがとうございました!

 

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温泉水からの挑戦状③

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

最近は暖かくなったり、寒くなったり気温差が激しく、

体調を崩される方も多いのではないでしょうか…?

私もダウンしてしまった日がありました。

また、花粉も飛び始めましたので油断できませんよね…。

季節の変わり目は気候に体調が左右されやすいですが、皆様もどうかご自愛くださいませ。

 

それでは本題へ参りましょう。

前回はまさに温泉水からの挑戦状…

化粧品開発におけるpHや塩の影響についてお話をしました。

その続きとしまして、今回は、どのようにしてその試練に立ち向かったのかをまとめていきたいと思います。

 

まず、前回の内容を簡単にまとめますと…

①温泉水を使ったフェイスマスクを作りたい。

②一般的なフェイスマスクには、カルボマーと呼ばれる中和反応によりジェル状に変化する成分が配合されている。

温泉水には、アルカリ性や酸性の泉質があり、カルボマーの中和反応に影響を与えてしまう。

温泉水には、塩分が豊富に含まれていることがあり、ジェル状になったカルボマーはその塩分に反応し、シャバシャバになってしまう。

⑤温泉水配合のフェイスマスクにはカルボマーが使えない…。

※カルボマーには様々な種類があり、塩に強いタイプもあるのですが、それを使用しても温泉水のパワーに勝てず断念したという次第です。

ということでカルボマーが使えなくなった今、他の増粘剤を用いてとろみを付与するしかありません。

つまり、温泉水のpHに影響されず、塩にも強い増粘剤を探す必要がありました。

そこでまず最初に登場するのが…セルロース系のポリマーです。

特にヒドロキシエチルセルロース(通称:HEC)」と呼ばれる成分は、

植物の細胞膜の主成分である「セルロース」から作られ、そこに酸化エチレン(エチレンオキシド)を結合して水溶性にした、イオン性を持たないノニオン性多糖類です。

そのため、塩や金属イオンなどの影響を受けにくく、温泉水に対抗できるのではないかということで、選出されました。

これは希望が持てますね!

まずはこれを温泉水フェイスマスクに配合してみました。

結果は、ダメでした…。

原料資料より、〇%配合で粘度はこのくらいというデータがありましたので、フェイスマスクには〇%配合し、粘度はだいたいこのくらいになるはずだ!と予測をし、実験を行いました。

しかし、粘度は予測していた数値よりも低くなり、ヒドロキシエチルセルロースも温泉水の影響を受けてしまうということがわかりました。

つ、強すぎる…温泉水…

ここであきらめてはいけません!他にもまだ希望はあります。

それが「天然系のポリマー」です。

天然系ポリマーと言えば…

〇キサンタンガム:でんぷんや糖類を微生物発酵させて得られる

タマリンドガム:インドや東南アジアに生育するタマリンドの種子を分離精製して得られる

〇グアーガム:マメ科のグァーという植物の種子の胚乳部から得られる

などですね。

これらはカルボマーのように化学反応は必要なく、とろみを付与することができます。

この時点でpHの問題はクリアできそうですよね。

後は塩に強いかどうかですが…これは一から基礎実験が必要です。

これらの天然ポリマーを一つ一つ温泉水に配合し、粘度に影響が出るかどうか実験を行いました。

このように肝となる成分同士のみをシンプルに組み合わせて様子を観察するのが

基礎実験の大切なポイントですよね。

これ以下はノウハウになってしまうので、詳しいことは割愛させていただきますが…

この基礎実験を行った結果、温泉水にも影響されず、しっかりと粘度を保つことのできた天然ポリマーがありました!

早速それを配合し、フェイスマスクの試作を行います。

一般的なカルボマーではなく、天然ポリマーを配合するということですから、配合量や使用感の調節にも苦戦しました。

天然ポリマーは食品にも使用されていますので、とろみ以前に、ゼリーのようなブルブルとした粘度になってしまったり、配合量が多すぎてポリマーカスが発生してしまったり、ぬるぬる感が強くなってしまったり…

そんな課題もコツコツクリアしながら、フェイスマスクの開発は進んでいきました。

まさにドタバタ奮闘記です(笑)

あとは、とろみなど安定性の維持ができるかどうか経過観察をしつつ、

試作品としてお客様に提出します。

数々の実験を経た結果、見事温泉水からの挑戦状に打ち勝つことができました!

こういう地道な実験が、結果につながる瞬間は化粧品開発における醍醐味の一つだと思います!

 

温泉水コスメって、響きが良く、効果もありそうですし、

ある程度流通していてもおかしくない商材なのですが、有名なのは化粧水ミストなどの水ベース商品がほとんどですよね。

一般的にカルボマーが配合されているクリームや乳液、フェイスマスク、ジェル製品はあまり見たことがありません。

その謎が今回色々と実験を行ってみて解けた気がします。

そしてこのような色々な壁が立ちはだかれば、その分私の経験値にも繋がります。

温泉水からの挑戦状はなかなかハードでしたが、この挑戦によって新たな発見ができたのでは!?とワクワクもした、いろはね研究員なのでした。

 

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温泉水からの挑戦状②

 

皆さんこんにちは!いろはねです!

2月も後半に入り、少しずつ春の陽気がやってきていますね!

桜の開花が待ち遠しいです。

 

さて、前回は温泉水が肌に与えてくれる効果を簡単にまとめました。

ミネラルが豊富に含まれていることと、pHの違いによって肌効果は異なりましたね。

温泉水はとても素晴らしい効果を私たちにもたらしてくれます。

この力を化粧品にも取り入れたい…!

しかし、温泉水はとある試練を私達に与えてきました。

果たしてそれはどのような試練だったのでしょうか?

それについて今回はまとめていきたいと思います。

 

〇温泉水からの試練①〇

それはズバリ、温泉水のpH値ですね。

前回のブログで温泉水は酸性・中性・アルカリ性に分けられると書きました。

私達が今回の化粧品開発に使用したのはpH値が9以上のアルカリ性温泉水で、これをベースとしたスキンケアシリーズを作りたいというお話でした。

温泉水の力をふんだんに使ったスキンケア…しかもシリーズ。

これは私達も気合いが入ります!

そして、試作を色々と進めていく中で最も苦戦をしたのがフェイスマスクでした。

 

なぜかと言いますと…

一般的なフェイスマスクは、とろみを付与し、不織布に均一に美容液を浸しておく必要があります。

それには「カルボキシビニルポリマー」略して「カルボマー」と呼ばれる水溶性高分子が必要不可欠です。

この成分は、アルカリ剤との中和反応によって粘度が高くなり、ジェル状に変化する性質を持ちます。

(変化のメカニズムは以前まとめておりますのでご参考までに!↓)

sawayaka0302.hatenablog.com

普段カルボマーを使用する時は、まず精製水で溶解し、そこへアルカリ剤として水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)などを添加し、ジェル状にしているのですが…

もうお気づきでしょうか?

今回使用している温泉水ってアルカリ性でしたよね…?

つまり、ベースが精製水ではなくアルカリ性の温泉水であるため、NaOHやKOHを添加する前に温泉水と中和してしまうのです。

私はこの現象を実際に経験することができました。

いつも精製水でカルボマーを溶解する時は、まだサラサラな状態なのですが、

温泉水でカルボマーを溶解すると、そこですでに中和され、アルカリ剤を入れなくても本当にジェル状になってしまい、驚きました。

しかし、温泉水は不純物のないアルカリ剤とは異なり、他にもミネラルや非常に様々な成分を含んでいます。

その為、一見カルボマーがジェル状に変化したとしても、純粋な化学反応(中和反応)が起きているわけではないので、後に一部分のpHが乱れ、ゲル化して塊が生じてしまったりと、安定的ではなくなってしまうみたいなのです。(これも実際の経験)

これでは品質に影響が出てしまいますね。

ということで、温泉水のpHにより、カルボマーでとろみを付与するという道は閉ざされてしまったのです。

最初に一般的なフェイスマスクにはとろみの付与にカルボマーが必須だということをお伝えしました。

カルボマーを使用せず、どのようにしてとろみの付与をすればよいか?

これが温泉水から与えられた一つ目の試練でした。

 

〇温泉水からの試練②〇

次に、温泉水に含まれる塩ですね。

こちらも前回のブログで温泉水には、泉質という種類があると書きました。

中でも塩化物泉」は塩分が豊富に含まれており、それが肌に付着することによって、肌表面に薄い膜を張り、水分の蒸発を防ぎ、肌のうるおいを保ってくれるという効果がありましたね。

この塩分が実はカルボマーの天敵となってしまうのです。

カルボマーのジェルは、塩分によってジェル状になった構造が崩され、とたんにシャバシャバの粘度になってしまうという欠点を持っています。

面白いのは、ただのカルボマージェルを汗をかいた皮膚に塗布すると、汗の塩分に反応し、タラーっと水のように溶けて垂れていってしまいます。

つまり、温泉水にも塩分が含まれているため、一般的なカルボマーの配合量では粘度が出ず、とろみを付与をすることが難しいのです。

それに気づかず、粘度が出ないとカルボマーの量を増やしてしまうと、ポリマー量が多量となり、それが肌に蓄積し、なじませる過程で白くなったり、ポリマーカスがぽろぽろと出てきてしまいます。

それでは品質にかなりの影響が出てしまいますね。

ということで、温泉水の塩分に反応してしまうカルボマーは使えず、逆にそれに影響されない増粘剤はどれなのか?

一から実験を行い、探さなければなりません。

これが温泉水から与えられた二つ目の試練でした。

 

さて、このように温泉水から数々の試練を与えられた私達ですが、もちろん完全に道が閉ざされてしまったわけではありません!

解決策はもちろんあります。

では果たしてどのような解決策を用いて、温泉水からの試練に立ち向かったのでしょうか?

これについては次回とさせていただきます。

それではまた!

 

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